成蹊学園インフォメーション

日本経済新聞シリーズ企画 教育鼎談 第3回 教育のグローバル化と日本の大学のこれから

佐藤 禎一: 国際医療福祉大学大学院教授 成蹊学園アドバイザリーボード

Part3 教育のグローバル化に関する講演会

教育のグローバル化は必然

グローバリゼーションの時代を迎え、世界も日本も大きな変化の渦中にあります。モノの貿易だけでなく、サービスの貿易を自由化する時代へと移り、サービスのなかには教育も含まれています。
2000年頃から、各国が教育の輸出に積極的になり、同時期にユネスコで国をまたぐ高等教育の提供に関するガイドラインが作られ、日本では文部科学省の大学審議会や中央教育審議会で、大学のグローバル化に関する提言をまとめています。

日本の教育は、グローバル化に加えて、人口動態の変化からも大きな影響を受けています。
大学へ入学する18歳人口がピーク時の205万人から、現在は120万人を割り込みました。「教育は国家百年の計」と言われますが、将来の日本の人口は現在の1億2000万人から、2060年に9000万人、2110年には4000万人強になると推計されています。
グローバル化と人口動態の大きな変化の中、今後、日本が国際的な貢献を果たしていくには、日本に多くの外国人を受け入れ、日本人も当然のように海外で活躍していくことが求められます。こうしたことから、教育のグローバル化は必然のものと言えるのです。

政策面では1980年代の留学生10万人計画は、現在では30万人計画へと拡大されました。政府の日本再興戦略、教育再生実行会議の第3次提言では、2020年に日本から海外へ出る留学生を倍増させる目標が設定され、日本の発展に資する人材の育成と日本の経済発展を結びつけた考え方が強く打ち出されています。

世界と日本の教育改革の大きな違い

2006年にG8サミットで教育問題が取り上げられ、8カ国の首脳が教育に関する3つの事項で合意しています。

  1. 1. 職業能力の改善を図る
  2. 2. 教育に関するODAを充実する
  3. 3. 統合教育を推進する

特に「1.職業能力の改善を図る」には、日本の教育改革とは大きく異なる側面があります。世界では職業能力の改善に重きがありますが、日本の教育改革では、それに加えて、確かな教養と豊かな人間性を兼ね備えた人材の育成を重視します。

例えば生涯学習も、日本では「人生を豊かにする」という意味がありますが、世界では「新たな職業能力を開発する」という意味のほうが強いということです。
したがって、日本と世界では教育改革の議論に対する前提が異なっていることを意識しておく必要があります。

3つめの「統合教育」とは、多くの国で悩みとなっている、国のアイデンティティを保つ取り組みとしての教育です。これは、自国内に移民が増え、異なる文化や言語が行き交う場となった時に教育でどのように対応するかということです。今後、日本でも大きな課題になっていきます。

国際標準への対応を迫られる日本の教育

教育のグローバル化が進んでいくなかには、2つの留意点があります。

1つは、教育の質を担保する国際標準を決める動きで、ユネスコ総会で条約を作る提案が出されています。
EU、米国、ASEANで評価機構が作られ、学位の相互認証、単位互換の仕組みができつつあります。そのなかでは、学習内容の達成度の国際的な比較が大きな役割を担い、圧力になってきています。

国際的な比較を主導するのはOECDによる取り組みで、2つの学習達成度調査があります。
1つめは、PISA(ピサ:Programme for International Student Assessment)です。これは15歳児の学習達成度を国際的に比較する事業で、2000年から3年ごとに行われています。
PISAは学力を「問題を見つけ解決をする能力」と定義しました。定義に基づき学力到達比較をするため、各国はこの評価基準に対応する必要が出てきています。日本も「生きる力」という名前で問題解決能力を養うように、学習指導要領を見直しています。
2つめは、AHELO(アヘロ:Assessment of Higher Education Learning Outcomes)です。これは大学の学部教育の達成度を比較するものです。
AHELOでは、専門教科を共通尺度ではかることに加えて、「ジェネリック・アビリティ(一般的汎用能力)」を比較対象します。
このジェネリック・アビリティの定義として、国際的な共通理解とされているのが、次の3点です。

  1. 1. 問題解決能力
  2. 2. 批判的思考力
  3. 3. コミュニケーション能力

この3点でジェネリック・アビリティが比較されることになるため、日本の大学もこれを意識した教育が必要になっています。
しかし、この基準はアングロサクソン的な能力観であります。人と人との関係を和やかに、ウイン・ウインの関係を築いていく「調和力」など東洋的な価値観も取り入れるべきです。日本の国情を踏まえた国際標準を世界に発信していける人材の育成が求められます。

ヨーロッパではボローニャ・プロセスとして、2010年にEUを超える47カ国、約5億人の人口を擁するヨーロッパ高等教育エリアを設け、また、教育の質の保証を行うプログラムが、エラスムス(ERASMUS)という計画で進められています。
もちろん米国は巨大な高等教育先進国であり、こうしたなか、日本やアジアの対応が迫られており、ASEANのなかで教育の質を保証できるシステムを共有する提案がなされています。

成蹊学園、これから100年への取り組みに期待

成蹊学園は創立当初から、少人数教育、英語教育を中心に、国際的な活動をしていく人材を育成することが伝統となっており、100年の歴史を積み重ねてきています。
成蹊学園が創立された100年前、日本の人口は5000万人、世界の人口は20億ぐらいでした。しかし、現在では世界の人口は72億、100年後には、150億人とも言われています。成蹊学園も、大きく様変わりし続ける世界のなかで、国際標準が形作られていくことを十分に意識しながらグローバル化を進めなければいけません。
成蹊学園には、学園の伝統を活かし、しっかりとしたリベラルアーツ教育、そして専門教育へとつなげる教育課程が確立されることを望んでいます。これからの100年を見据えて、成蹊学園がさらに発展をしていくような新しいモデルを作るべき時期に来ており、期待すると共に、提案を一緒にしていきたいと考えています。

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