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第2回 応用錯体化学研究
錯体と発光〜その可能性を探る〜
成蹊大学理工学部教授 坪村 太郎(つぼむら・たろう)  「2007年度 教職員表彰( 学術研究功績表彰)受賞」
プロフィール
成蹊大学理工学部物質生命理工学科教授。工学博士。 1986年 東京大学大学院工学研究科応用化学専攻博 士課程修了。1986年 成蹊大学工学部助手 森田 眞教 授の下で錯体の光物性を研究、1990年 成蹊大学工学部講師などを経て2000年より現職。専門は金属を含 む化合物の光化学。
錯体とはなんだろう?
 「錯体」とはなんでしょうか。錯体は金属のまわりにさまざまな分子が結合したものを指し、例えば私たちの血液の中にあるヘモグロビンも錯体の一種です(詳しくはwebで検索してみてくださ い)。ヘモグロビンは鉄を含む複雑な構造の物質ですが、この鉄が酸素を体の隅々まで運ぶ役割を担っているので、鉄が不足すると私たちは貧血になるのです。この例だけでなく、自然界には金属の性質を巧みに使った物質がさまざまに活躍しています(誰が設計したのでしょうか?)。無機物、とかく重金属類は公害等の負のイメージが強いのですが、赤ちゃん用の粉ミルクには硫酸銅が配合され ているように、私たちをはじめ、すべての生物が生きていく上で金属元素は必要不可欠なのです。
森田先生との出会い
 私は、約二十年前に森田眞先生(現在本学名誉 教授)の研究室に助手として着任し、先生から光に関する研究方法を教わり、それ以来発光する錯体の研究を続けています。普通の錯体は光らないのですが、ごく一部の錯体は目に見えない紫外線を当てると鮮やかに発光します。数年前、次世代用のディスプレイとして注目されているEL素子用の発光材料には錯体が有利であることをアメリカの科学者が実証しました。それまで錯体は実用発光材料としては見向きもされていなかったのですが、錯体の研究者は我も我もと自分の錯体が発光 するかを調べるようになったのです。二十一世紀は光の時代と言われますが、先生は大変な先見の明をお持ちだったと言えるでしょう。
研究の目標
図1:発光する錯体
 二〇〇四年にタイミングよく工学研究科の大学院が文部科学省のハイテク・リサーチ・センタープロジェクトに採択され、研究をさらに進めることができるようになりました。その結果、銅やパラジウムといった金属を含む錯体が従来思われているよりはずっと強く光ることを発見することができ ました(図1)。その 中の一つの錯体は、英国化学会の論文誌の表紙を飾ることとなりました(図2)。私たちがめざしているのは、既知の物質の特性の向上ではなく新しい 種類の発光するよう な化合物を提案し、発光の性質を左右する因子を明らかにすることです。化学者は百種近い元素を使うことができます。これらを駆使すれば、きっと(発光性物質に限らず)これまでにないすばらしい物質ができると信じて研究を行っています。
教育を職にして

図2:英国王立化学会 無機化学専門誌の表紙に錯 研究室一同(学生と) 体の図が掲載される.。
 真にオリジナリティのあるものの開発は大変難しいことですが、このことの重要性を学生にぜひ身をもって体験してもらいたいと願っています。国内外の著名な先生方を見ても、 優れた研究をされている方は概して教育者としても大変立派な方が多いように私は感じており、私自身もそのように慕われるべく努力していきたいと思っています。ここにご紹介した例をはじめ多 くの結果は、歴代の研究室の助手・ポストドクター、そして大学院生や卒業研究としての学生諸君自身の研究成果から生まれてきたものです。皆さん に感謝するとともに、全員が達成感を得て卒業式に臨んでもらうようにしなければと思っています。 
研究室一同(学生と)


 
 
 技術立国としての日本を支えていく若者を育てていくことが私たちの使命ですが、そのためには理工学部内の教育以外にもすべきことがあるように感 じています。他の学部の学生に何を教えられるかを秘かに考えています。

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