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成蹊教育のいま
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第2回 地質学・鉱床学
伝統を活かす
21世紀の理科教育

成蹊中学・高等学校教諭 宮下 敦(みやした・あつし)  
プロフィール
成蹊中学・高等学校理科教諭。1960年生まれ。早 稲田大学資源工学科修士課程修了。専門は地質学お よび鉱床学。関東山地三波川日本の変成岩分布地域 の調査のほか、近年はアパラチア山脈の調査も行っ ている。また、自然科学の教育普及活動やデジタル 教材の開発などにも携わっている。著書に「ゼミ ナール地球科学」(日本評論社)がある。 写真は和歌山での野外観察会中の筆者。
時代の先端をいく、成蹊の理科教育

2007年地球惑星合同学会で、小惑星イトカワの地形形成実験に ついてポスター発表する天文気象部員。質問をしているのは、日本 の惑星科学のトップ研究者の方たち。
 現在の教育政策の一つに「スーパー・サイエンス・ハイスクール」(SSH)という制度があり ます。これは、大学や研究機関と連携し、本物の科学機器を使って、時代の先端を行く理科教育をするというもので、その特徴からすると、成蹊の理科教育は常にSSH的であったということができます。授業は大正時代に吉祥寺に移転してきて以来、専用の理科教室棟で行われ、これは現在の中学・高等学校でも受け継がれています。ここでは、本物の科学機器を使った実験や、実物の標本を用いた観察をする教育が行われてきたため、教育機材や標本類が豊富に蓄積されています。
研究室一同(学生と)


 例えば中学校の地学領域の授業では、これらの岩石標本や化石標本は、現在でも授業で使われています。一方で、地球史をテーマとした授業やコンピューターを利用した学習なども積極的に取り 入れ、「二十一世紀 型の理科教育」の創造をめざしています。
気象観測実習の成果を発信

百葉箱を利用し、気象観測実習。中学生はほぼ 全員観測体験がある。
 実際の科学的な活動を教育として行う、ということの象徴的なものが気象観測です。これは、旧制高等学校で加藤藤吉先生が始められ、昭和初年から八十二年間観測が継続されています。観測開始から戦後すぐまでは、実際に高校生が主体となった観測が行われましたが、昭和三十年代から生徒による観測は途切れてしまっていました。しかし、一九九五年の自動気象観測装置の導入を期に、生徒による観測実習が復活しています。学校における気象観測は、単にお天気のデータを集めることだけでなく、身近な現象を精密に測定し、その時系列変動から自然の規則性や法則性を読み 取ることができるため、科学の基礎として重要な 教材です。さらに観測方法を気象庁が定めた正式 なものに準拠させ、社会に公開できる形でデータをとったことは、意味のあるデータ解析を行うことができるばかり でなく、研究や予報に役に立つという点で、社会に貢献することができます。このため、観測データは年報という冊子の形で配布しているほか、インターネット上でも公開して、研究機関などで活用していただいています。
本物の科学に参加する活動
 同様の活動は、天文分野でも行われていました。 一九五七年にソビエト連邦が人類初の人工衛星ス プートニクの打ち上げに成功すると、国立天文台を中心に日本の各地で観測班が作られました。成蹊高等学校観測班は「武蔵野班」とよばれ、高校生が主体となって観測に成功しました。成蹊高等学校天文気象部はこの伝統を受け継ぎ、ここ十年 ほどの間に、しし座流星群観測、月面の元素分布図の作成、トランジット法による系外惑星探査への参加などに挑戦し、ハワイ観測所すばる望遠鏡での観測や小柴科学教育賞奨励賞受賞など高い評価を受けています。 このように、成蹊における本物の機材を使った理科教育は、単に学校の中だけのものではなく、その活動を通じて科学の進歩や社会に貢献できるものを持っていることが特徴です。現在の教育学では、このような活動は「正統的周辺参加」と呼ばれて再評価されています。加藤藤吉先生は、実に八十年以上前に、その重要性を認識されていたということになります。

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