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第4回 アメリカ外交史
アメリカの外交史
〜その根源的な問題〜
成蹊大学法学部教授 西崎 文子(にしざき・ふみこ)  
プロフィール
東京大学教養学部卒業。一橋大学法学研究科修士 号取得。イェール大学歴史学部博士課程終了、博士号 (Ph.D)取得。フルブライト奨学生、国際交流基金安 倍フェロー。ハーバード大学、ラトガーズ大学、ケンブ リッジ大学客員研究員など。1998 年より現職。著書 に『アメリカ冷戦政策と国連 1945 − 1950』(東京大 学出版会)、『アメリカ外交とは何か』(岩波新書)など。
アメリカとはどのような国か

大阪 国立民族学博物館でのシンポジウムで
 アメリカには本当にいらいらさせられる―― アメリカを外から見て、そう思う人は少なくない のではないでしょうか。素晴らしい物品を生産し、 知識や技能にも優れ、多彩な音楽や映画で人々を 魅了する力をもっているアメリカ。しかし、同時 にアメリカは尊大で、自己中心的で、自国の経済 的利益を強引に追 求して世界を混乱 させ、果ては戦争 で各地に荒廃をも たらしながら自分 たちは世界で一番 の国と公言しては ばかりません。私 のアメリカ外交史 研究の根底には、 このような矛盾 がなぜ、どのよ うに生じるのか を理解したいと いう欲求があり ます。言い換え るならば、アメ リカとはどのよ うな国なのかと いう大きな問いを背景に、アメリカの対外行動の 特徴を分析するというのが私の問題関心です。 

その場合、アメリカ外交に見られる矛盾や逆 説を解明するための一つの方法として、私が進め ているのが、アメリカと国際秩序との関係に関す る研究です。周知のとおり、ウィルソン大統領は、 第一次世界大戦のときに国際連盟の創設を提唱し、 これを実現に導きますが、肝心のアメリカはこの 国際組織に加盟しませんでした。そのときの自国 の行動を反省したアメリカは、第二次大戦中に新 たな国際組織の結成を推進し、国際連合を創設し ます。国連本部がニューヨークに置かれたことは、 国際社会の組織化こそが平和の礎であり、アメリ カの国益にも寄与するという当時の新しい認識を 象徴していました。
アメリカと国連との関係
 しかし、それから六十年あまりたって、アメ リカと国連との関係は、良く言っても不安定であ り、時としては敵対的ですらあります。日本政府 が、たとえ建前だとしても、国連や国際世論を枕 詞として日本の外交政策を説明しようとするのと は対照的に、アメリカでは、国連の意向や各国の 世論の動向を重視する指導者はごく限られていま す。アメリカの政策と国連の決議とが対立する場 合には、間違っているのは国連であり、アメリカ は独自の判断で正しい政策を追求するのだと主張 することすら珍しくありません。
アメリカの自負、そして優越性

ニューヨーク大学M.ヤング教授を囲んで津田塾大学の藤田文子教授と
 アメリカは、なぜ一方では自分たちが世界の利 益を実現する使命を担うのだと主張しながら、他 方では世界各地の多様な意見に積極的に耳を傾け ようとしないのでしょうか。その背後には、自分 たちこそが、近代民主主義の理念を掲げて誕生し た「普遍性」を持つ国家であるという自負が、ア メリカの優越性を裏付ける根拠としてとらえられ、 アメリカのナショナリズムを煽ることにつながっ ているという「逆説」が存在するというのが私の 見方です。
 
  日本における「アメリカ体験」は、世代によっ て大きく異なります。戦争と占領を経験した世代、 安保闘争の世代、ヴェトナム戦争世代、ポスト冷 戦世代、そして今、私が教えているのはポスト 9・ 11 世代といえ るでしょうか。そ のようなさまざま な「アメリカ体験」 によりそいながら、 アメリカ外交史か ら見えてくる根源 的な問題とは何か を考えていくのが、 私の研究課題であ り、また教育の課 題でもあります。

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