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成蹊教育のいま
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第6回 演劇部顧問
生徒たちとわかち合う喜び
成蹊中学・高等学校教諭 宮本 浩司(みやもと・こうじ) 
プロフィール

1964年生まれ。1990年より成蹊中高在職(国語科)。「マリア」(校演劇Selection’97所収)、「ガーデン」、「月下−花の段−」(季刊高校演劇所収)。

【主な受賞作品】

「マリア」

’94演劇研究会長賞・舞台美術賞
’95全国高校総合文化祭優秀校公演特別出演校

「十二夜」

’02米本一夫賞(中高私学大会最優秀)

「マクベス入門」

’05高校演劇研究会賞

「美波」

’06内木文英賞(中学私学大会最優秀)

「月下−雪の段−」

’09米本一夫賞

25×さまざまな物語
 25。これは自分が脚本の制作に携わった作品の数。細かな改訂版を加えればさらに多くなる。一九九五年に中学・高等学校両方の顧問となってからは、一つ終わると、次の作品へ、中学校が終わると、次は高等学校の舞台へ。そんなことをくり返して、気がついたら十七年になる。どの作品も、実際の芝居の中身以上の、芝居作りに没頭する生徒たちのさまざまなドラマがあった。
 
 「成蹊教育のいま」という重たいタイトルと、すでに登場された方々の立派なプロフィールを読むにつけ
ても、気後れしてなかなか原稿に手をつけられなかった。「演劇教育」などと大上段に構えて顧問をして
いる自覚はまったくなく、大学時代に見始めた小劇場系の芝居のおもしろさから、非常勤講師として勤
めていた前任校の演劇部の手伝いをした経験で演劇部の顧問となった。最初は野球部の顧問と兼任であ
る。観客としての経験しかない、単なる芝居好きが生徒たちと時には戦いながら、一緒に芝居作りに励むうちに、自分自身が多くを学んだ。また、長い長い練習を経て舞台に立つ生徒たちが何かを得て大きく成長した姿を見るにつけ、これは授業では得られない学び、教育なんだと実感するに至った。
大人と接する経験

 演劇部は、プロでもなかなか立てないすばらしい舞台での公演の機会に恵まれてきた。東京芸術劇場、国立大劇場、俳優座劇場、世田谷パブリックシアターなど。歴史や伝統、世界に誇れる有数の舞台機構を備えた舞台のすばらしさだけでなく、その舞台を支えている、優れたプロのスタッフの方々と、まったくの素人である顧問含めた生徒たちが、自分たちの芝居作りにプランニングから真剣に向き合い、叱られながら教えられてゆく経験は得難いものだ。大人といえば親や教師ぐらいしか接することのない生徒たち。職人気質のスタッフさんの前で緊張しながら、挨拶の仕方から礼儀を含めて教えられる。学外での大会や演劇祭に参加することは大変だが、貴重な修行の場だと思っている。初めての俳優座劇場出演、危険の多い舞台で、わけもわからず右往左往する演劇部員たち。なぜ叱られるのかもわからず、その理不尽さに悔しくて、涙ながらに本番直前、僕に訴えかけてきた生徒の目が今も忘れられない。

 
自分を知る―『マリア』から『隆』へ―

国立劇場で上演された『マリア』
 顧問になって三年目。ビギナーズラックで、初めて脚本らしきものを書いた作品『マリア』は数々の賞をいただいた。池袋の東京芸術劇場で開催された都大会、出場できず裏方だった当時の部長から、来年高三の最後のチャンスに、どうしてもこの舞台に立ちたいと涙ながらに言われた。その熱意から「マリア」は生まれた。どの作品も、必ず、まず部員の顔があり、生徒たちが輝いて見える登場人物、舞台に描かれた絵を思い浮かべて物語が生み出される。個性豊かで、がんばり屋の、魅力ある生徒たちがあってこその脚本だ。自分の書いた拙いセリフもストーリーも作品に向けた生徒の愛情で美しく生まれ変わる。作者としてこんな幸せなことはない。

『五億の鈴 星の贈り物
〜星の王子様へのオマージュ〜』
私学大会協会長賞(準優勝)受賞


 演技をすれば、おのずと、自分の話し方・動きの癖を知り、自分の役を理解しようとすればするほど、自分自身と向き合うことになる。「マリア」は、誰もが抱える、生まれながらにして逃れられないしがらみにもがく十八歳の女の子。今の作品の主人公「隆」は受験に行き詰まった高二の少年。作品を通して生徒たちに考えてもらいたいと思うことが多くなった。今回は、顔の見えないインターネットのコミュニケーションと、普遍のテーマ、近すぎてわかっていない家族の存在について考えてもらおうと思った。
ものづくりを通して
 部員は性別を越えてさまざまな役を演じるだけでなく、男子でも、糸と針を持ち、女子でも金槌を使いこなす。蚊に刺されながら、全員で道具づくり。肉体労働も多い、文化系運動部だ。演劇人を育てるために部活をやったことはない。それよりも、人と一緒にものをつくり上げることの大変さと、喜びをその後の生徒たちの長い人生に、かけがえのない経験として身につけてほしいと思うばかり。今も、中学・高等学校三十三人のドラマは文化祭に向けて進行中である。
 

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