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成蹊教育のいま
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第12回 高等生物教育学・環境生態学
実物主義の生物教育ー自然から学ばせてもらう精神を―
成蹊中学・高等学校教諭 佐藤 尚衛(さとう・なおえ)
プロフィール
1973年生まれ。千葉大学教育学部卒業、東京農工大学大学院農学研究科環境資源学専攻修了。専門は環境微生物学・微生物生態学。現在、ニホンヤマビルの地理的変異と形態分類を行い、ヒル類の新しい分類手法を模索中。日本微生物生態学会・日本生態学会・日本生物教育学会会員。日本自然保護協会観察指導員。
著書に「Comparative Evaluation of Environmental Toxicants」(NIRS:共著)がある。
観察・実験重視の生物教育
 成蹊中学・高等学校の生物教育は旧制中学時代より実体験・実物重視の教育を実践してきています。それは生物の標本展示コーナーや充実した実験室、二名体制の生物実験助手などのハード面にもみてとれますが、個性豊かな教員による観察・実験の豊富さが何といっても特徴です。とくに高校二年生全員が行うキイロショウジョウバエの遺伝実験は五十年以上も継続され、卒業生からは「成蹊の思い出は一に凝念、二にショウジョウバエ」と言われるほど印象深いものとなっています。また、高校三年生の選択授業では、少人数教育を生かし、野外実習や博物館実習を積極的に取り入れています。昨年の野外実習では、「林苑におけるベートトラップによる歩行性昆虫の採集」や「武蔵関公園の水中微生物の観察」などを行い、博物館実習では国立科学博 物館や目黒寄生虫館などを訪問しました。机上の学習にはとらわれない自然体験・観察体験重視の教育活動を推進し、自然から学ぶ精神を大切にしています。

武蔵関公園での水中微生物の採集

顕微鏡による水中微生物の観察

生物教育と生物部の活動
 高校には生物科教諭が顧問を務める生物部があり、現在部員は一・二年生を含め十四名で、活発な活動を展開しています。成蹊高等学校生物部の歴史は古く、一九二八年に生物研究会として発足し、八十年以上の歴史があります。一九三八年には生物研究会会報第一号がまとめられ、その冒頭には「専門は何に向かうともこの好機を利用して自然界の機微に触れることは我々文化人に不可欠の教養の一つでもあると信ずる」との言葉が書き記されています。これは成蹊の生物教育の根底にある実物主義の考えを踏襲しており、野外観察の重要性を余すところなく伝える名文です。また、生物部はOB・OGの方々の結束も強く、蹊祭ではOB・OG会が開催され、現役生との交流も行われていますし、桜祭ではOB・OGの方々による研究発表会も行われています。
野外活動をベースにした生物部の活動
現在、生物部では生物研究会からの流れを汲み、基本精神に三つの事項を掲げ、生徒に取り組みをさせています。

@自然と親しみ、多くの生物とかかわりをもつことで確かな自然観を養う。
月に一度、野外活動を行い、個々の研究テーマとは関係なくフィッシング・ 昆虫採集・バードウオッチングなど、さまざまなアプローチで自然との接点を持たせています。合宿は島とうしよ嶼を中心に行い、昨年は夏合宿に八丈島、春合宿に沖縄本島へ赴き活動を行いました。本土と異なる自然を間近に見ることは、自然観の育成に効果的で、身近な自然の重要さを気づかせてくれます。

沖縄・瀬底島での海岸生物採集

高尾山ムササビ観察会

A地球共生の概念を認識し、多くの生物とともに生きる楽しさを実感する。

採集してきた生物を飼育、観察し、生物の命の大切さや、ともに生きていく喜びを感じさせています。また、生物飼育は研究への一歩と考えており、生命現象の制御系実験への移行を担う上で重要な要素であると考えています。生物第二実験室は生物部の部員たちが採集してきたさまざまな生物が展示されており、ミニ水族館と化しています。水族館などでしかお目にかかれない生物も多数おり、小学生には大人気で、蹊祭では人気のスポットとなっています。

B研究テーマをもち、学問としての生物的素養を養う。

各自研究テーマを決め、日々調査・研究を行い、学会発表を行わせています。日本生物教育学会 第八十八回全国大会 高校生ポスター発表では二人の生徒が優秀賞をもらいました。発表に向けて顧問とのディスカッションはもちろんのこと、部員たちの前での発表や蹊祭・六月展・一月展での展示発表など、多くの発表練習の機会が与えられています。したがって、自身の研究の問題点などを客観的にとらえる力が自然と身につき、このような力は大学へ進学しても研究に対する前向きな姿勢へと繋がるはずです。

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