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第15回 民事手続法
新たな一歩を踏み出すための倒産というシステム
成蹊大学法学部准教授 村田 典子(むらた・のりこ)
プロフィール
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程中途退学、國學院大学法学部准教授を経て、2010年4月より現職。最近の業績として、@「当事者主導型倒産処理手続の機能の変容(1)(2・完)―アメリカ合衆国連邦倒産法第11章手続における債権者の手続支配―」民商法雑誌138巻6号59頁・同139巻1号37頁、A「民事再生手続における監督委員の意義」事業再生研究機構編『民事再生の実務と理論』357頁。@により、財団法人民事紛争処理研究基金平成21年度倒産・再生法制研究奨励金(トリプルアイ・高木賞)選考委員会奨励賞受賞。
実は前向きな倒産の世界
 「倒産法の研究をしています」というと、一瞬「えっ」という顔をされることがよくあります。どうも、学生や一般の方々にとって倒産とはできるだけ避けたい事態であって、そこまで行ったらもう終わりという後ろ向きのイメージが強いようです。しかし、倒産という現象あるいは倒産法の世界を覗いてみると、決してそんなことはありません。倒産は私たちの経済社会にとって必要不可欠なシステムであり、また新たな一歩を踏み出す機会を与えるという前向きかつ生き生きとした場面でもあります。
社会に必要な倒産システム

自由な経済活動が認められている現在の社会においては、景気の変動や経営者の経営能力の不足、産業構造の変化といった原因によって、企業の収益が低下することは避けられません。その状態が続くと、企業は金融機関から借りたお金や取引相手に対する代金などを支払えなくなってしまいます。この他人に対する債務を支払えなくなった状態を倒産といいます。このどうにも行き詰まった感じが、倒産という言葉の印象を悪くしているのかもしれません。でも、本当に注目すべきは倒産「後」です。
経済社会全体との関係で倒産という現象を眺めてみましょう。企業の倒産は、不採算企業を清算し、その企業が有していた財産を解体して、別のより有益な事業でそれらを有効活用することを意味します。また、最近は、その企業の財務状況を改善したり、経営組織を新しくしたりすることにより、企業の再生を図るということも積極的に行われています。例えば、日本航空の会社更生事件などを見ていただければおわかりでしょう。倒産は、企業活動の新陳代謝を図り、経済社会を活性化する、社会に欠かすことのできないシステムなのです。

倒産法とは何か

その「倒産」にどのように対処するかを定めているのが、私が研究対象としている倒産法です。
倒産法の世界はとても複雑です。そもそも登場する主体が非常に多い。少し考えただけでも、倒産した企業、その経営者、従業員、金融機関、複数の取引相手等々、本当に多くの関係者を思い浮かべることができます。それぞれが自己の権利を強く主張しており、それを一所で処理しようというのですから、一筋縄ではいかないのがむしろ当然と言えましょう。最近は、倒産を契機としてその企業あるいは事業を再生することも広く行われています。倒産法の世界でも、裁判所で行われる適正・公正な手続の下、倒産から始まる再スタートに向け、倒産事件を処理する弁護士や関係人たちのダイナミックかつ生き生きとした活動が繰り広げられることになります。倒産法の世界は、さまざまな権利関係が錯綜す る緊張感漂うドラマティックな世界でもあります。
私は、倒産法における各種法律関係をどのように処理するか、倒産処理手続は経済社会とどのように向き合うべきか等を常日頃考えているわけですが、それはもちろん簡単に答えの出るようなものではなく、ああでもないこうでもないと行きつ戻りつ考えるの繰り返しです。


3年生ゼミにて。
判例研究を行っているところ。

1年生ゼミにて。
自分で考えること

世の中の多くのことは非常に複雑であり、どれが正答なのかはっきりとは分からないことが多いのではないでしょうか。そもそも正解なんてないのかもしれません。それでもどうにか考え、最適な解決策を導き出すしかないのです。法学も同じです。正しい答えなどというものはなく、自分で考え抜くしかありません。考えるという作業はとても楽しいものですが、その楽しさは、残念ながら自分で汗水たらさなければ味わうことができないものです。教員はそこに至る道筋を手助けすることはできると思います。ゼミの仲間と共に、時に厳しく時に楽しく、考える術を学んでいただければと思っています。

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