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第21回 美術科教諭
石像の制作過程に込めるイメージと思い
成蹊小学校教諭 新美 正樹(にいみ まさき)
プロフィール
1968 年生まれ。2008年より現職、現美術専科担任。これまでの実績として、2007年第3回現代彫刻美術館野外彫刻選抜6人展、2010年新制作展新作家賞受賞、2011年彫刻部受賞作品展 新制作展会員推挙。2010年成蹊学園箱根寮に「風のなか」、2012年学園構内の本館前庭に「凝念」を設置。
「石の彫刻」
 2010年に箱根寮に「風のなか」、2012年には学園内に「凝念」像の作品を設置させていただきました。これで子ども達にも「先生がつくった石の彫刻」を見せることができました。唯一残念なのは完成作品を見ただけではその制作過程が伝わりづらいことです。
 岩盤から切り出した一トン近い石の塊から作品が生まれていく様子を少しでも伝えられればと思い、今回は「凝念」像制作のための段取りと、「風のなか」制作中の様子について書かせていただきます。
風のなか
「風のなか」
疑念
「疑念」
「凝念」像
 授業の空き時間に工作室で作業はスタートしました。制作過程の一部でも子ども達に見せたいと思ったからです。彫刻の題材を「等身大の子どもの座像」に決めてデッサンを描き、それをもとに粘土で実物の五分の一のサイズの模型をつくります。彫刻の構成(頭と手足の関係、台座との関係など)を考えたり細かい部分の意匠を決めたりしながら作業を進めます。拡大する時に計算しやすい大きさ(今回は五倍に拡大)になるように気をつけました。模型つくりは考える時間も合わせると石の加工より長く時間がかかることもあります。
 制作準備の最終段階として、模型の実物サイズの図面(正面図と側面図)を描いてから、それを五倍に拡大してベニヤ板に写して切り抜き、型紙をつくりました。これでやっと石の加工に移れます。このように石を彫る前にもたくさんの作業があるのです。
「風のなか」
 搬入が近づいている八月某日、磨き作業に入る直前まで仕上がった作品の写真を撮って家に帰り、息子に見せると「首が長すぎだよ、これじゃあ人間じゃないよ、キリンさんだよ。」と言われてしまいました。自分でも、デフォルメしていたとはいえ首がちょっと長いかなと思っていたので、この一言で方針を決めました。
 翌日、アトリエに行き、作品の首に矢穴をあけクサビを使って彫刻の頭部を割って落としてしまいました。首の長さや頭部の角度を変えるためですが我ながら思い切ったことをしたものです。取り付け作業が完了するまで不安でしたが、結果として彫刻と台座の石との関係も決めやすくなり、つま先も頭部も空に向かっていく構成で台座に乗せることができました。「風のなか」という題名もこのときに思いついたのです。もしも、この工程がなかったらずいぶんと間延びした重たいイメージの作品になっていたことでしょう。そして、タイトルも「風のなか」にならなかったと思います。ほんの数時間の作業が作品を大きく変えた一日でした。
最後に
 石は風化していく素材です。ただ、そのスピードは非常にゆるやかで何十年、何百年という時間をかけて進行していきます。箱根寮と本館前庭に設置させていただいた二つの作品も徐々に長い時間をかけながら風化していきます。この変化にマイナスのイメージを持たれるかもしれませんが、時に風化は作品の味としてプラスに作用するのです。二つの作品が、時間をかけた変化も併せて末永く皆さまに大切にされることを願っています。
原石
新作用の原石。この状態でアトリエに来ました。重さは約5トン、ビールケースと大きさを比べてください。この石で作品を制作中です。
石割
原石に削岩機で穴をあけ、セリ矢を使ってななめに割りました。三角に割れた部分の重さは200kg以上あります。
制作途中
アトリエでの制作風景。磨くための下地ができあがっています。
完成
「響」2011年制作

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