流星塵の電子顕微鏡観察


                   成蹊中学校・自然科学部
                   渡邊 真澄,趙 麻美,松川 愛未


≪目的≫

 まず、流星には普段から少しずつ流れているものと、しし座流星群のように特定の時期に多くの流星が現れるものとがあります。
この実験の目的は、長期間にわたって集めた流星塵と、一ヶ月ごとに採集した流星塵を比べる事により、一ヶ月間に降った流星塵の中から、その時期に現れた流星群の流星塵を特定できるかどうかを調べる事です。時期により特に多く発見できる種類の流星塵があれば、それがその流星群によるものである可能性が高いといえます。
 しし座流星群は、約33年に一度、数が増える性質を持っている流星群です。昨年11月17日に、ヨーロッパではしし座流星群が大出現をして話題になりましたが、予報の日には日本では雲がかかっていて、あまり見ることができませんでした。しかし、電波による観測によって、11月18日の日中に、多くの流星が出現していることが分かっています。
 そこで、今回は、しし座流星群に起源を持つ流星塵が増加しているのではないかと考え、1999年のしし座流星群の流星塵の特徴を、大きさや表面の様子、成分の違いによりわけて、調べる事にしました。


≪流星塵とは≫

 流星塵とは、文字の通り、流星の塵の事です。
 大気に突入する時に、流星はまず摩擦により高温になります。その熱で、流星の構成物質の大部分は蒸発してしまうのですが、一部は残ります。溶けた状態で残った物質は、急冷されて丸くかたまり、とても小さな球形の“流星塵”になるのです。


≪採集方法≫

 流星塵はしばらく大気中を漂っていますが、一ヶ月ぐらいすると雨に混ざって降ってきます。私達は、降ってくる流星塵のうち、金属製の物を、磁石を使って採集しました。校舎の屋上の一部分に降った雨の水が、集められて流れ落ちるようにしたパイプの部分に、ネオジウム磁石を仕掛けておきます。これを一ヶ月ごとに回収します。獅子座流星群の出現した直後の11月18日〜12月18日に仕掛けておいた磁石は、カラスに盗まれてしまったので、この間のデータがないのはそのためです。 まず、採集する前の1999年11月17日に屋上を掃除し、その際にも磁石を取り付けておきました。ここで回収したものは、長い間に屋上に積もったものなので、特定の流星群のものだけでなく、いろいろな種類の流星塵が含まれていることになります。これを使って、一ヶ月ごとに採集した流星塵との比較をします。
 回収した物のなかには、砂鉄など、風によって飛ばされた埃も含まれているので、その中から双眼実体顕微鏡を使って、丸い物だけを取り出します。


≪観察方法≫

 集めた流星塵はとても小さいので、双眼実体顕微鏡では、拾い出す事は出来ても、観察は出来ません。そこで、観察には走査型電子顕微鏡(日本電子5400)を使って観察を行いました。
 この装置には、エネルギー分散型X線分析装置がついていて、観察をする物の成分も、同時に調べる事が出来ます。


表面の模様による分類  獅子座流星群前≫

 定期的な回収の前、つまり獅子座流星群が現れる前に採集したものは、表面の模様から三種類に分けられます。この三種類を私たちは、タイプ1・タイプ2・タイプ3と呼んでいます。
 
 タイプ1は、球の表面で結晶の模様がよく見えるものです。この時採集したものの中では、このタイプが一番多く発見できました。

 タイプ2は、球の表面に網目模様がよく見えるもので、深海底の泥の中から見つかったものに、よく似たものもあります。この網目模様も、結晶の模様です。中が空洞になっているものもありました。

 タイプ3は、表面にジグソーパズルの様な模様が見えるもので、所々穴が空いているものも観察されます。参考文献などでは、同じ模様のものを発見する事はできませんでした


表面の模様による分類  獅子座流星群後≫

獅子座流星が現れたあとの一ヶ月ごとの回収では、現れる前と同じ三種類がみられました。更にタイプ1〜3に分類できない表面模様の、タイプ4がありました。タイプ4には規則的な模様が見られません。また、大きさにもばらつきがあったので、表面模様とその模様の数を、大きさ別のグラフにしました。


流星塵の粒径分布≫

 流星塵の直径の頻度分布を示します。

 このグラフで
・獅子群前には大きいものばかりで小さいものは無かったけれど、獅子群後には大きいものは無く、小さいものばかりだったと言う事。
・ タイプ1が獅子群後にはほとんど見られないと言う事
・タイプ4は獅子群後にしか見られない
と言う事が解ります。


わかったこと≫

 以上の結果よりわかったことは
・磁石につく流星塵は鉄が主成分
・粒径は獅子群後の方が小さく、大きいものはみられない
・表面の様子から四つのタイプに分類できる
・タイプ1は獅子群後にはほとんどみられない
・タイプ4は獅子群後しか見られない
と言う事です。
 主成分が鉄である流星塵は、参考文献にも出ていました。粒径の小さい流星塵が獅子群前に無かったのは、小さいものは流れてしまい、屋上に残っていたのは粒径の大きいものだけだった可能性もあります。
 タイプ4が獅子群後にしか見られないので、このタイプ4が獅子群によるものである可性もありますが、獅子群に直接関係あると言い切れる流星塵の特定はできませんでした。
 その他の点については、原因はわかりません。また、獅子群からちょうど一ヶ月後である12/18〜1/18日の間に採集した流星塵よりも、その後の1/18〜2/18日に採集した流星塵の方が数が多い理由も、解りませんでした。



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