イチョウの葉脈について

2000年度日本学生科学賞・東京都研究奨励賞受賞
                        成蹊中学3年 松川 愛未


back

動機

 生きた化石といわれるイチョウの葉は芽生えたときから扇形をしている。このイチョウの葉脈には二股に葉脈が分かれていくというおもしろい特徴がある。
 何故二股に葉脈が分かれているのか?葉は成長過程において二股に分かれる回数が増えていくことで、大きくなるのか?それとも。分かれ目と分かれ目の間が伸びて大きくなるのか?
 そんなことに疑問を持った私はこのイチョウの葉脈について調べてみることにした。

イチョウについて

イチョウは裸子植物の中のイチョウ綱に単独で属する植物である。裸子植物は胚珠が子房に包まれず、裸出しているのが特徴であり、イチョウ綱のほかに、球果植物綱(マツやスギが属する)、ソテツ綱などが属する。又私たちが普段よく目にする被子植物は、白亜紀以降に登場したのに比べ、裸子植物は、古生代末のペルム紀に登場した。その為、現生する裸子植物は、古代植物の特徴をよく示し、「生きた化石」といわれる。

[観察]

目的

葉の成長過程における葉脈の変化を調べる。

観察方法

※もっともイチョウの葉が急激に成長する、4月中旬〜5月中旬・下旬頃に葉を少しずつ採集して観察した。 1、採集したイチョウの葉を、押し葉にし、ラミネートカバーする。 2、双眼実態顕微鏡を使って、葉の両脇、中心の左右の葉脈を、定規を使って、ランダムに選んで計る。また、二股に分かれる回数も調べる。 3、集めたデータを集計して整理し、表や、グラフにまとめる。 ここで結果などを説明する為、次のことを確認し決めておきたい。
  • 「分かれ目間」とは、「分かれ目と分かれ目の間」のことである。
  • 端の葉脈をA,中央の葉脈をBとする。
  • 葉の茎のほうを「葉の内側」、葉の縁のほうを「葉の外側」とする。
  • 分かれ目間を葉の内側から順に@・A・B・・・Eとしめす。

    結果

  • 二股に分かれる回数は、葉が大きくても小さくても変わらない。
  • 二股に分かれる回数は、Aが4〜6回(平均4,3回),Bが4〜5回(平均3,9回)である。
  • イチョウの若葉は、ややきのこ型をしている。
  • イチョウの葉には、葉の扇の角度が0°以上90°以下のもの、90°以上180°以下のもの、180°以上のものがある。

    結論 〜イチョウの葉脈の特徴〜

    T 二股に分かれる回数は成長過程で変化しない。(4〜6回)。従ってその分かれ目間が、成長するに連れて長くなる。
    <根拠1>
    4月中旬に採集したイチョウと5月中旬に採集したイチョウで、枝別れ回数が変化せず、分かれ目間が長くなっているため

    U A/@,B/A,C/Bの割合は、1,0以上2,0以下である。(平均1,6) 表2

    結論〜中央の葉脈と端の葉脈について〜

    グラフ1 グラフ2 グラフ5

    V Aの分かれ目間は、Bの分かれ目間よりも、全体的に長い。
    <根拠1>
    グラフ4で、BがAを上回るため
    <根拠2>
    グラフ2で、BがAよりも長さが長い所に数が集中するため

    W 二股に分かれる回数は、Aの方がBよりも値が大きかったため。
    <根拠1>
    二股に分かれる回数の平均が、Aの方がBよりも値が大きかったため。

    X A・Bとも、分かれ目間の長さは、葉の内側から外側に向かうに連れ、長くなる。
    <根拠1>
    グラフ1で、ほとんどの線が、@から上がっているため
    <根拠2>
    グラフ3でパターン『ア』〜『オ』のいずれの場合においても、上がる線が見られるため。
    <根拠3>
    グラフ4で、A・Bともに線が上がるため
    しかし、時々最終の分かれ目間が、その前の分かれ目間よりも短くなることがある。
    <根拠4>
    グラフ1で、最後に下がる線が見られるため

    Y 一枚の葉の中で、AのパターンとBのパターンに関連性はない。
    <根拠1>
    葉ごとに、A・Bのパターンを書き並べても、全く関連性がなかったため。表1
    Z Aは、B[C]で分かれ目間が、@・A[@・A・B]より急激に長くなるのに比べ、BはA[B]で分かれ目間が@[@・A]より急激に長くなる。つまり、Aの方がBよりも内側の分かれ目間から長くなる。
    <根拠1>
    グラフ1で、線がAはB〜C、BはA〜Bで急激に上がるため
    <根拠2>
    グラフ2で、分布範囲がAはB〜Cで、BはA〜Bで広くなるため
    <根拠3>
    表2で、AはB/A、C/Bの値が大きく、BはA/@、B/Aの値が大きいため

    [実験]

    動機

    中央の葉脈と、端の葉脈にはいろいろな違いがあることを知った私は、その理由を考えた。
  • それらの違いは、扇という特殊な葉の形に関係があるのではないか
  • また、そのような葉であるからこそ、その違いは葉の強度にも、関係するのではないか
    そう考えた私は、模型を作って違いの理由を調べることにした。

    目的

    中央の葉脈と端の葉脈の違いは、葉の形や強度に関係しているのかを調べることにした

    実験方法

    結論V・Wより、私は次のような2種類の模型を、たこ糸とストローと紙を使用して作った。
  • 分かれ目に見立て、ストローを2種類(長・短)の長さに切り揃えた。
  • それをたこ糸に通し、一本の葉脈とし、それら4本を一枚の扇形の紙に等間隔に張りつけて一枚のイチョウの葉とした。
  • 出来上がった模型は、自然の状態に近づけるため、その付け根の部分をスタンドに挟んで、違いを観察した。

    結果

     模型aよりも、模型bの方が、葉脈の支えがしっかりしている。 なぜならば、中央の分かれ目間が長く、二股に分かれる回数が少ないと、葉を適度に水平に保ち、支えることができる。


    back

    Copyright@Ms. Manami Matsukawa. All rights reserved.