1.はじめに
成蹊気象観測所では,1927年から校内の桜の木を使って開花日の観測をしてきました.気象庁の観測では,複数の桜標準木に数輪開花した日を開花日としています.しかし,同じ種類の桜でも,木によって開花の早い遅いがあるため,標準木を決定するのは難しい点があります.そこで,本観測所では,特定の木が二分咲になる日を開花日として決めています.二分咲の状態を目視で決定するにも不確実なところはありますが,全体的な開花の傾向をつかむのには都合がよいからです.
観測の結果は,気象庁天気相談所や武蔵野市役所の統計に利用されている他,成蹊学園の桜祭りで公表されています.
1946年の標準木と観測の様子 | 2000年の標準木 |
2.開花日の経年変化
こうして観測された開花日には経年変化が見られます.
1927年以降,次第に開花が早くなっていることがわかります.1927-1935年間の平均開花日が4月6日であったのに対し,1986-1995年間の平均では,3月29日が平均開花日になっています.この原因としては,木が年を経て老化することなども考えられますが,ヒートアイランド現象の項でも見たように,武蔵野市の気温が次第に高くなってきていることと関係があるようです.
試みに3月の平均気温との相関をとってみましょう.
開花日は,3月の平均気温とよい負の相関があります.3月の平均気温が高くなれば,開花日は早くなるわけです.
この図は,3月の平均気温から開花日を予測することができることを示しています.しかし,3月の平均気温は4月1日にならないと算出できないため,3月中に開花してしまうと予測をすることはできません.また,開花日を決める要素は3月の平均気温だけではないので,気象庁では複数の気象要素を組み合わせて多変量解析をし,開花日を計算しているようです.
3.つぼみの重さと開花日
気象庁では,以前は桜のつぼみの重さを測定して,開花日の予測をしていたようです.そこで,成蹊中学自然科学部では,桜のつぼみがふくらんでいく様子を観察しました.
桜のつぼみを,無作為に5つとってきて,すぐに精密な天秤で重さを測定します.たくさんとれば,より無作為になりますが,あまりとると桜がかわいそうになので最低限平均がとれる数にしています.
上の図は,その変化の様子を示したものです.開花日に向かって,規則正しく重さが増えていくことがわかります.この方法でも,開花日の予測ができます.開花前40日くらいのところから重さが増加し始めるので,重さが増え始める日をとらえることができれば,開花日が計算できる仕組みです.
95/3/5 0.2916 g まだ硬いつぼみ |
95/3/14 0.3132 g ふくらんできました. |
95/3/20 0.6386 g |
95/3/23 0.7972 g つぼみの先が桃色に |
95/3/23 1.0225 g |
95/3/31 1.9975 g 開花3日前 |
つぼみの真ん中をカミソリで2つにきって断面を観察すると,つぼみのつくりが変化することに重さが増えることがわかります.
2001年3月27日 ほぼ満開の状態