
法律学の勉強は外国語の習得に似ている、とよく言われる。奇妙きてれつな法律用語や概念を
大量にしかも(少なくとも初学者の段階では)理屈抜きで覚えなければならない、という皮肉の
ニュアンスを込めてそう言われることが多いようだが、必ずしもそれだけの意味ではない。
日本の法制度は、明治時代以降に西洋諸国(とりわけドイツとフランス)の法制度を参照して
つくられたものであるし、日本の法律学が前提としている様々な理論も基本的にはヨーロッパの
法律学の伝統を受け継いでいる。そのヨーロッパ法律学の伝統を遡れば、紀元前のローマにまで
行きつく。要するに、皆さんがこれから学ぶ「法」ないし「法律学」は、良くも悪しくも西洋の
文化に深く根ざしているのである。そのうえ法律学は、物事の捉え方・考え方を直接に扱う学問
であるため、いわゆる「和魂洋才」の芸当が通用しない。勉強するには覚悟が必要である。
法律家でない人々の多くは、法律学特有の思考様式や判断枠組みに違和感を覚える。とりわけ
西洋人でない非法律家(すなわち皆さんの大部分)にとって、法律学の敷居はとくに高いはずで
ある。自分の価値観や常識をいったん相対化して問題を考える柔軟さ・謙虚さと、頭の中に根気
よく新しい思考回路を作っていく努力とが要求される。その意味で、法律学の勉強は語学に近い。
とはいえ、法律学を縁遠く感じる必要はまったくない。皆さんの身近にも法や法律に関係する
興味深い問題が数多くあるはずである。この演習は、グループごとの研究・発表(テーマは、法
または法律に関する問題であれば何でもよい)を中心に進められる。自分がどのような問題意識
をもって法学部に進学したのかを確認してもらうこと、法律家らしく考えるための第一歩である
法的な「嗅覚」を磨いてもらうこと、資料を分析し研究する際の作法を身につけてもらうこと、
そして法律学と切っても切れない関係にある「議論する力」を鍛えること、等々を目的とする。
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