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スウェーデンの高齢者福祉と私 大久保洋子【現代社会学科】

私が福祉に大きな関心を持ち、老年学、老人福祉論、地域福祉実践研究、地域福祉論、社会福祉事業史や社会福祉概論を受け持つようになったことの始まりは、今から30年ほど前のスウェーデンにおける海外研究でした。1970年代のスウェーデンは、高齢化率が15%を越える高齢社会となり、国民のコンセンサスを得る方式を導入して、21世紀の新しい高齢者像や福祉の原則を議論していた頃だったのです。国会や地方自治体の議会を始めとして、国民があちこちのコムーン(自治体)の集会所や老人ホーム、教会のホールなどで会合を開き、福祉の理念に関する意思の疎通をはかっていた時代に、私の福祉との出会いがあったのです。当時の福祉法は「社会扶助法」、高齢者や障害者などの全生活の支援や介助・介護を社会の責任とする法律でした。

まず興味を持ったのは、高校を卒業した子供たちと同居することが殆どない、子離れ親離れの早いスウェーデンの人々の生活です。スウェーデンの高齢者福祉は、その国の長い歴史の上に構築された「自立」という社会通念を可能にしていく要件を加え、改革することによって「高福祉国家」を形成していったのです。私の研究は、福祉のルーツから現状までの歴史をたどり、支援や介護という言葉で表現されがちな福祉が、なぜ介護されても「自立」している意識を有することが可能なのかを探ることでした。古い資料を集め、18世紀後半に慈善の精神に基づく「救貧法」に始まった福祉は、地方自治制の施行、大恐慌による北米への移民、産業革命による工業化など、19世紀から20世紀の半ばにかけての大変身によって、年金、住宅や環境の整備、必要な福祉サービスの提供など、量的な福祉を拡大し多様化させていったのです。

私は、その充実度に驚きもしましたが、この次にスウェーデンが実行しようとしているものはなんだろう、自分のライフワークとしてその行方をみていこう、法律や国・自治体の制度の変遷はもちろんですが、実際に暮らしている高齢者や障害者を含む国民の生きるという理念や規範、現実の生活に法・制度がどのように反映されているかを継続的に追っていくことに意欲を燃やしたのでした。そして、自分自身の研究として継続していくと同時に、いつの日か授業やゼミで学生に伝え、わが国の貧しい福祉の理念を変えていくために、また様々な福祉法や福祉制度の功罪を見抜く目を養ってもらうために活用できると信じて研究を続けてきたのです。

1970年から国民のコンセンサスを得た福祉の原則、ノーマライゼーション、総合的人間観、自己決定、影響と参加、適切な管理に基づく活動の5原則は、 1982年に施行された「社会サービス法」に活かされ、スウェーデンの福祉は、どのような状況・状態にある人々にとっても「自立」している、あるいは「自立」している感覚を有していけるように社会全体のシステムを構築していくことになっていきました。それを現実に知ろうとすることは、かなり困難を極めたものです。その一例をあげてみると、障害があるにもかかわらず90歳をこえてひとり暮らしをしている高齢者と同居して、経済、日常生活、社会参加などを調査する、介護・医療などの機能のある集合住宅(わが国の高齢者介護施設)に2週間から3週間ほど通って、そこに暮らす高齢者の生活状況と職員や地域住民の考え方や実践活動を知る、などを現実にこなしていかなければならないのです。そのためには、言葉、態度、表情、行動などで相手に情報を送らなければなりません。その国の言葉(この場合はスウェーデン語)、自分の意思をはっきりと伝え相手の言い分もよく聞いて一緒に判断すること、相手が話してみようかと思えるような口調や笑顔、相手の目を見ながら語り相手の表情も読み取ること、相手の気持ちを確かめることなく介助や支援をしないこと、数えればきりがないほどです。そのためには、スウェーデンという国を知ること、人々のものの考え方を理解することが大切です。

滞在期間の長短はありましたが、毎年のようにスウェーデンに出かけて町を歩き、季節を感じ、いつの間にか親しくなった高齢者を訪れ、新しい高齢者と出会い、亡くなったひとの墓に花を供える、研究にいく度に私のすることが増えていきました。私の研究を支えてくれたのは、これら市井の人たちだったのでしょう。

 
スウェーデンの高齢者
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