進行中のプロジェクト

プロジェクト中間報告会は、当センターの研究プロジェクトが毎年進捗状況と成果を報告するもので、概要は以下のとおりです。

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開催日時:2005年10月20日【CAPS会議室】

ジャズと文学ー日米の戦後文化比較ー

宮脇プロジェクト

本プロジェクトは、『戦後日本のジャズ文化』の著者マイケル・モラスキー氏との共同研究から出発している。ジャズを文化表象として捉え、ジャズが表象する文化を読み取る(reading Jazz)ことを目的とする。ジャズには、多様な人間が集まってできた、アメリカの歩んできた歴史が集約されている。そしてそこではその多様な人間達による“negotiations”という言葉が、キーワードとなる。ニューオーリンズの黒人は、フランスやスペインの混血であり、ヨーロッパの音楽教育を受けていた。そのため、ジャズは、新大陸でしか発生し得ない様々な要素を含むこととなった。
ジャズ研究は、ジャズジャイアントの伝記的なものや音楽評論、ジャズ史の入門書に加えて、理論的、方法的枠組みを意識したものまで、多様な研究が見られる。音楽学や歴史学、アメリカ文化史、社会史、映画史、文学研究などが、ジャズの研究を行っている。日本では、1920年代にはjazzという言葉はモダンと同じ意味で使われていた。戦後は進駐軍の音楽であり、日本の歌謡曲にも影響を与えた。当時カントリーやハワイアンまで含めたアメリカ音楽すべてがJazzと捉えられていた。
プロジェクト出版物では、文学、映画、音楽の観点からジャズを文化表象として捉えている。欧米と日本の視点からの研究も行い、ジャズの受容がその国とアメリカとの関係を反映している点に注目する。ジャズ研究はイギリスでも盛んであり、当プロジェクトでは海外の学会への参加を目標として、イギリス、リーズ大学のジャズカンファレンスやフィッツジェラルド国際会議に参加し発表を行った。国内でも、日本英文学会の全国大会において、シンポジウムを開催した。

アジア太平洋の安全保障と地域秩序ー周辺からの視点ー

遠藤プロジェクト

本プロジェクトのテーマは、アジア太平洋地域の安全保障を考え直すことである。これまで、安全保障とは国家を武力で守ることであり、それが国民を守ることと同一に考えられてきた。しかし、この国家中心の安全保障に対して、国連機関や開発に携わる人々から疑問の声があがり、90年代後半国連を中心に、国家安全保障から人間の安全保障へ、安全保障に関する問題設定の変化が見られた。生活の基礎的な条件を整えていくことに重点が置かれ、これまでは安全保障に含まれなかったものが、含まれるようになった。
当プロジェクトでは、地理的な周辺(首都ではない、周辺化された地域)や機能的周辺(国家運営の中核に入れない人々)の視点から見出される、国家の安全とは異なる安全保障を取り上げ、 物理的問題のみならず、アイデンティティ確保の問題も視野に入れる。プロジェクトメンバーの専門分野は、文化人類学、文化交流、東アジア史、地方政治、パレスチナ問題、アセアン経済と多岐にわたるが、学際的研究を行うのは難しいため、他の分野からわかりやすく語りかける手法をとる。
初年度は、概念的な問題設定をおこない、またラオスとベトナムで視察を行った。ラオスでは、文化保存活動を視察し、ベトナムではインタビューを行った。第二年度は、タイで北部のビルマとの国境地帯の山地民の、焼畑をめぐる政府との攻防を視察した。中国では上海市政府の人々へのインタビューを行い、急激な経済成長と都市化のなかで、観光で食いつなぐ人々を取材した。今後は、研究会において、中核的な概念設定に関する確認と、各メンバーの論文の概要に関する報告と調整を行う。また年度内に各論文の内容に関する報告と相互批判を行う機会を設ける予定である。出版物の正確な書名は未定だが、「国家安全保障を脱構築する」をテーマとして掲げる予定である。

教育選択と教育財政の経済分析:日韓を事例として

中神プロジェクト

本プロジェクトは、韓国・日本の教育財政をテーマとしている。これまでプロジェクトでは、集団で議論を戦わせるというよりは、日本と韓国それぞれの研究者に研究を依頼し、各自に取り組んでもらってきた。プロジェクトメンバーは、教育、経済、財政の専門家で構成されている。全体的に、データ分析やモデル形成など実践的な研究が中心となっている。出版物のタイトルは”Political Economy of Education in Japan and Korea”であり、韓国人5人、日本人研究者8人 の共著になる。韓国の研究者に関しては、プロジェクト参加時に論文が完成済みである。
出版物は日韓の初等中等教育を中心に、教育政策過程の分析、教育財政の分析、少子高齢化時代の教育支出について日本の都市における3年間の調査を基にした実践的研究があり、このテーマにはアメリカでも関心が高まっている。またロースクールや小中の私立学校を対象とした研究や、税制改革と福祉の関係についての研究などもある。
出版については、12月に論文がそろった所で出版社との相談を予定している。

グローバル化するメディアと国家、その未来ー豪・韓・タイ各国との比較研究に於いてー

鈴木プロジェクト

本プロジェクトの目的は、国家とメディアの変容の相関関係の有無を探ることである。メディアと国家の関係については、国家がどのような規制をかけるのかが問題となるだけではない。両者の関係からは、場所感やコミュニティの崩壊、国家の解体や、メディアと国家の間の脱国家化と再国家化のせめぎあい等も見受けられる。
これまでの主な活動は、研究会を月1回開催し、そこではプロジェクトメンバーに加え、学外や海外からも報告者を招いた。さらにプロジェクトのもう一つの目標として、当センターの提携国と共同研究をすることも含まれている。韓国、タイ、オーストラリアの研究者に、プロジェクト参加を依頼し、研究会発表のために当センターへ招聘した。国内のプロジェクトメンバーも各自、海外で調査を行い、研究会で報告を行っている。プロジェクトメンバーは、この発表に基づき、論文を執筆する予定である。
出版物の概要は、メディアと国家の変容の相関性を述べた序論に加え、3部構成とする予定である。そこでは、メディアの変容を3つの方向から捉えている。まず第1部では、横からの力として、タイ・ラオス間のテレビの越境の問題、EU拡大化のなかのメディア、オーストラリアにおける番組輸入規制を取り上げる。第2部では、上からの力としてマードックによるメディアの寡占の問題、タクシンのメディアの独占化、米メディアの集中化、グローバル化はアメリカ化かといった問題を取り上げる。第3部では、下からの力として、日韓の新しいメディアであるネット新聞、中国の言論統制と新しいメディア、タイの山地民と政府両者のメディアでのイメージ戦略について取り上げる。出版物は英文での出版を予定している。

差別禁止法

森戸プロジェクト

差別はなぜいけないのか。この理由がはっきりしないにもかかわらず、労働法など差別禁止の法律が数多く成立している。日米を比較すると、米国では、差別禁止法が重要な社会的ルールになっており、差別禁止法という形にしてしまうことが便利な土壌があることがわかる。米国に年齢や障害者差別禁止法があるのはこの問題にセンシティブだからである。日本には、年齢差別禁止法が無いにもかかわらず、高齢者雇用は守られている。本プロジェクトでは、日米の差別禁止法の比較から、なぜ差別はいけないのかを考えていく。
初年度(2004年度)は、研究会を開催し各自の問題意識を示して議論を行った。またプロジェクト内外の専門家による報告も行われた。さらに3月にはプロジェクトメンバーにより米国でヒアリングを行い、弁護士や研究者、企業、労働組合、NPO団体、行政などに対してインタビューを行った。第二年度前半(2005年度)は、日本の現状について、専門家や企業の関係者を研究会に招き報告を行った。また10月には熱海にてプロジェクト合宿を行い、出版物の執筆など全体の方向性について議論を行った。今後2005年度後半は、メンバーによる海外調査や研究会での講演を行い、第3年度(2006年度)には、毎月1回メンバーの中間報告会を開催する予定である。出版物は序論と総論(差別の問題の整理と新しいアプローチ)、各論(日米比較を中心に)、企業の最先端の実例からなる。日本との比較を意識し、一般読者や企業の現場や大学生にもわかりやすい叙述を行うものにする予定である。

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成蹊大学アジア太平洋研究センター

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