成蹊LIFE vol.9

「本物に触れる」ことから
すべてが始まる、高度な理科教育

成蹊LIFE第9回で取り上げるテーマは、「理科教育」です。成蹊中高の理科教育は、「本物に触れる」ことをもっとも大切にしています。五感を使って本物に触れ磨いた「観察力」は、自然界にある目に見えない法則を見る力へと発展します。本格的な観察や実験を多く取り入れ、体験に基づいた知恵をはぐくむ、成蹊の理科教育をご紹介します。

成蹊中高の理科教育の特徴

成蹊中高の「理科館」は、「物理」「化学」「生物」「地学」それぞれの講義室と実験室を完備。ここには、生徒たちの理科に対する興味を芽生えさせ、「理科的なものの見方」を育てる、ハードとソフトがそろっています。各科に実験実習助手(計7名)を配置。教材は、各科の教員が作成したオリジナル教材。既存の教科書だけに頼らない授業展開のため、中学段階から理科への興味と理解が一層深まり、高度な学習内容にも対応できるベースが作られます。単なる先取り授業より、深め発展させる授業。成蹊ならではの充実した学習環境だからこそできる授業です。

物理

中学では2年生で物理を学習します。身の回りの素朴な自然現象を中心に、実験を交えた授業が展開されます。
高校では1年生に必修の授業として学びます。ここで本格的な物理の学習が始まり、2・3年生では選択した生徒が対象となり、一見複雑な現象が単純な法則で説明できることを学びます。
授業では多彩な実験を交え、豊富な問題演習をこなしながら、理解を深めていきます。

生徒の躓きやすいところを踏まえて説明します。
斜面上を転がる物体の加速度の大きさは、重力加速度の大きさの何倍になるか?最新の装置を用いた実験です。
フィギアスケートの選手はなぜあんなに速く回転できるのか?角運動量が保存することを確かめる実験です。
室内で音波の速さが測れます。気柱の共鳴を起こす実験です。
板書だけでなく、口頭での説明も含めてノートを取ります。
黒板をじっと見つめながら説明を聞くことが理解への近道です。

化学

中2から授業が始まり、オリジナルの教材を通して、実際の薬品や模型を使って実験・観察・測定する経験を積みます。高1まで、化学は全員必修の科目です。
その間にだんだんと原子・分子を始めとした目に見えない世界へと学習が進んでいきます。
高校2・3年生では、受験対応した授業が特に意識され、入試問題演習の量が増えていきます。

階段教室があり、実験で得た知識の確認、系統的な学習や演習を行います。
多種多様な模型。ミクロの世界の理解を助けます。
高2の実験「中和滴定」。
生徒実験用に小分けにされた薬品。5学年分の実験に対応します。
多くの種類の薬品は、消防法で規定された薬品庫に収められています。
安全に配慮して、白衣を着用して実験に臨みます。

生物

生物では最大限に五感を使って様々な実験や観察を行っています。
中1では、植物・動物のからだのつくりや特徴を詳細に学び、多様な生物世界を体感します。構内の樹木観察や実験室で飼育している沢山の動物の観察を行い、イカ・ハマグリ・ホヤ・ニジマスといった多くの動物解剖実習も行います。
中3では主にヒトのからだのつくりを勉強します。細胞の観察から始まり、組織・器官のつくりを体系的に学習していきます。サメの解剖は中3最後の実習として行っています。
高2※1 では長い歴史を誇るショウジョウバエの遺伝実験を行います。全員がショウジョウバエを飼育し、親・子・孫と三世代飼育して遺伝現象の仕組みを交配により確かめます。
高3※2 では受験を意識し、オリジナルテキストを使ったハイレベルな授業を展開しています。もちろん実験や観察も重視し、マウスの解剖は高3の最後のまとめとして必ず行う実習となっています。
また、生物科では理科野外観察会や特別講座なども積極的に行い、幅広い視点で生物学を学べる機会を沢山つくっています。
※1 (必修3単位)
※2 (選択5単位)

セピア眼・白眼・痕跡翅などのショウジョウバエの品種判別をマスターします。
海藻や緑葉を使って含まれる光合成色素の違いを確認します。
ブタの内臓一式を用いて、内臓の繋がりを学習します。
深海性のサメを用いて、内部構造を観察し、スケッチを行います。
図鑑を使って植物の和名や特徴を調べ、植物全体をスケッチします。
図鑑を使って植物の和名や特徴を調べ、植物全体をスケッチします。

地学

中1の理科では、最初に原子概念を導入し、大気・宇宙・地球のそれぞれについて宇宙史と地球史をベースに学習します。授業は、実物の観察や実験、豊富な映像教材、PCによる調べ学習などを駆使して行います。また、成蹊気象観測所の設備を使用して、当番制で全員が気象観測実習を行っています。
高2では文系選択・地学基礎で、宇宙地球科学を通じて科学史や科学哲学などのメタ科学的な初歩について学びます。成蹊気象観測所のデータを使ったオリジナル教材をはじめとし、実習を多く取り入れているほか、センター入試にも対応しています。
理科館屋上の天文台は、授業や野外観察会のほか、高校天文気象部の宿泊観測会などで利用します。
天文気象部では、月面分光観測、トランジット法による系外惑星観測、変光星や超新星観測など、最先端の天文学の観測も行っています。

孔雀石を還元して銅を作ります。
3種類の望遠鏡で太陽を観察します。
クリノメーターによる簡易測量で校内の地図を作ります。
クリノメーターによる簡易測量で校内の地図を作ります。
天文台は、15cm屈折望遠鏡と20cm反射望遠鏡をコンピュータコントロールしています。授業や観望会での利用のほかに、最先端の天体観測も行います。
百葉箱を使った気象観測
気象観測の練習
パーソナルコンピュータを用いて、水分子の分子動力学シミュレーション動画を3D観察し、分子の運動を可視化してイメージをつかみます。

Pick Up

昭和28年から進化し続けるオリジナルの教科書

成蹊中高には、親子2代で同じ教科書を使っている生徒もいます。初版は昭和28年。でも、教員が毎年検討を重ねて更新し、内容は時代に合わせてどんどん進化しています。既存の教科書の一歩先にある知識を探求するために、独自の教科書を使ったり、さまざまなプリントや模型などの教材を作成したり。他にも、磯採集や、化石採集に行ったり、天体観測をおこなったり、卒業生の研究者からお話を聞く機会を設けたりと、成蹊の教材はオリジナリティにあふれています。

受験指導について

受験勉強では、問題演習に取り組んで、アウトプットする力を磨くことも大切です。実験・実習とのバランスをうまく取りながら、着実にレベルアップできる授業を展開していきます。生徒たちは、休み時間などを使ってどんどん質問にやってきます。生徒の志望先や興味によって、質問の内容やレベルもさまざま。一人一人の能力に合わせて個別で指導しています。時には、専門書などを見せて大学の講義レベルの話をすることも。もちろん、補習や質問の時間を設け、一斉指導も行います。

理科担当・梅田先生からのメッセージ

「理科的なものの見方」を獲得し、自然界の現象に潜む法則を探究しよう。

理科を学ぶ原動力は、「なぜ?」「どうなるの?」という疑問が探究心へと進化した時に生まれます。疑問に対して、付け焼刃的な知識だけで答えがわかったと満足して欲しくありません。成蹊中高では、実際にものをじっくり観察し、答えを探究します。生物や岩石、天体、そして事象を観察し、自然界にある目に見えない法則に思いをはせるよう、導いていきます。体験に基づいた知恵は大きな力となり、自然界の法則性がだんだんと見えるようになってくるのです。
中学時代にこのプロセスをていねいに重ねていくと、高校になって一気に思考的な大躍進の瞬間が訪れます。突然、「あっ、わかった」と、それまでのハードルを跳び越える時が来るのです。私たち教員は、その瞬間が来る前に、うまく「理科的なものの見方」を育て、想像力を養っておいてあげたいと思っています。高校では、原子や分子など実際に目視することのできない抽象概念の学習へと進みます。「理科的なものの見方」と想像力を磨いておくと、その抽象概念の世界へとスムーズに入っていけるのです。入試問題も、その場で実験をすることはできませんが、ハイレベルな大学では通常のものの見方では解けない問題が出題されています。世間で難問奇問と言われるこのような問題でも、成蹊高校の生徒は実際に模型で学習している場合や、想像力が養われているので、解けたというケースが多くあります。学習内容の先取りに走らず、一つ一つ深める授業をやってきたからこその成果です。
皆さんも、成蹊中高の理科の授業を通して「理科的なものの見方」を獲得し、自然界の現象に潜む法則を探究する旅へと出発して欲しいと思います。

理科担当 梅田 礼敬先生

学校説明会・学校見学を実施しています。

成蹊の取り組みや充実の施設、設備を実際にご覧いただける絶好の機会です。是非お気軽にお越しください。
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