01 ぐんま天文台で観測した太陽と星の動き

北天・改

 
東京工業大学工学部附属工業高等学校 天文班
竹本 孝輔(高1)
成蹊高等学校 天文気象部
巣瀬 蔵人(高2)
高木 聡 (高2)



□■はじめに■□
 この「共同プロジェクト 北天・改」は2000年夏に行われた同プロジェクト内で、新たに見つかっ た問題点を改善し、再び観測し直したものデータを取り扱う。正確であると予想される値に近づけるため に、私たちが取り決めた共同観測の定義の例外として2校が同じ日時に同じ場所で2回に分けて行った。

□■目的■□
 地球に住む私たちにとって天体が北極星を中心に動いているように見えることは皆さんご存じだと思う。 しかし知識にある移動量、移動方向が本当に正しいのだろうかと疑問に思い、私たちは「星は北極星を 中心に動く」というよく知られている現象を実際に観測を行い検証した。

□■観測方法■□
 星の動きが北極星を中心とした円運動として撮影でき、移動量が測りやすい北の空を撮影の対象とする。
 撮影方法は固定撮影で、カメラを三脚にのせ長時間露光させて星の軌跡を撮影した。統一性を期すため 夏の段階では撮影ポイント、三脚の高さ、露出時間を統一、冬はそれに加え、カメラレンズ、撮影ポイン トの2つを加え、計5つの項目において厳密に統一した。
写真内にはそのぐんま天文台の屋外に建ててある18世紀インドの日時計建造物を模したモニュメント の「サムラート・ヤントラ」を前景に入れた。(写真-1)この建物の特徴は正確を向いて建ててあることで ある。階段部の下から上へ眺めてみると北極星を真上に見ることができる。この建物を前景に入れること により時期をずらした画像がそれぞれ地面に対しての水平を保証するという効果があると考えた。
 そして時期が異なった2枚北天の写真を重ね合わせ、私たちのデータから移動量を測る。
写真1 サムラート・ヤントラ写真1

□■夏の理論値計算■□
 また、その測った移動量が正しい値かどうかを確かめるために事前に理論値を計算しておく。理論値の 移動量と写真から測った移動量が一致してはじめてこのプロジェクトが成功したと言えるためだ。
 理論値の算出方法は、北天の星の位置のずれを引き起こす原因である地球の自転と公転を考える。
 夏の撮影では成蹊高校が7月30日21:54、東工大附属高校が9月2日22:06。日時が34日、 時間が12分ずれている。
まず、年周運動分の移動量を求める。360度÷365日×34日=33.53度…(1)
次に、日周運動分の移動量が求める。360度÷24時÷60分×12分=3度…(2)
(1)式と(2)式を合計した移動量約36.5度が私たちの求めようとする値である。

□■夏の観測結果■□
 測量にはおおぐま座の北斗七星を利用した。写真-2が7月30日、写真-3が9月2日である。そして2枚 の写真を合成したものが写真-4である。角度を求めてみると20度であった。理論値の36.5度と実測値 の値の20度がだいぶ離れてしまった。
写真2 7月30日の北天 写真3 9月2日の北天 写真4 写真2、3の合成
写真2 写真3 写真4

□■冬の理論値計算■□
そこで、より正確な移動量を求めようと再び観測をした。撮影時期は11月18日19:00と12月 23日19:40。日時が35日、時間が40分ずれている。理論値の算出方法は夏のと同じように行う。
まず、年周運動分の移動量を求める。360度÷365日×35日=34.52度…(3) 次に、日周運動分の移動量が求める。360度÷24時÷60分×40分=10度…(4) (3)式と(4)式を合計した移動量約44.5度が私たちの求めようとする値である。

□■冬の観測結果■□
測量にはカシオペア座を利用した。写真-5が11月18日、写真-6が12月23日撮影である。
 二枚の写真について、地面に水平になるように補正し、写真を合成したものが写真-7である。写真-7より まず移動方向が北極星を中心として反時計方向だということがわかる。
 次に角度を求める。写真-7より実際角度を求めてみると44度であった。
写真5 11月18日の北天 写真6 12月23日の北天 写真7 写真6、7の合成
写真5 写真6 写真7

□■結論■□ 
 実測値は44度のずれがあるという結論に達したことで、理論値の44.5度とほぼ等しいことが示さ れた。つまり合成した写真より「星は北極星を中心に反時計方向に動く事がわかり、一か月分に換算して みると30度動く」ということがわかった。

□■考察■□ 
 今回の「北天・改」は、夏に二校が共同で行ったプロジェクトの失敗を生かして行った。このときは、 レンズの違いや撮影地点の微妙なずれが原因で、いい値が得られなかった。
 そこで、今回、以下のような工夫を施した結果、このような良好な結果が得られたのだと思う。
・写真の水平面を揃えるために「サムラート・ヤントラ」を活用した。
・レンズや撮影地点を厳密に統一した。



日の出

東京工業大学工学部附属工業高等学校 天文班
草野麗子(高2)
宮川明子(高2)
梅澤陽明(高2)
成蹊高等学校 天文気象部
川元真依(高2)
松本理那子(高2)



□■目的■□
 日の出の位置が時期によって変化することを確認する。

□■方法■□
 日の出位置の移動を確認する基準として、ぐんま天文台にあったストーンサークルを利用した。
 ストーンサークルの内部から、7月31日、8月28・29日に日の出の撮影をし、それぞれ比較をするという方法を取った。

□■結果■□
 結果として、次のような日の出の写真が撮影できた。
(成蹊高校:写真1、東工大附属:写真2)
 成蹊高校が撮影をした際、日の出がストーンサークルの柱の影に隠れて見えなかったため、ストーンサークルの中心より1m南に移動した地点から日の出の撮影を行った。
 日の出の位置は写真にある通り、およそ柱2本分移動したことがわかった。
写真1 成蹊高校が撮影した日の出 写真2 東工大附属工校が撮影した日の出
写真1 写真2

□■考察■□
 写真をもとにストーンサークルの東側半分を上から見た図を作成した(図1)。
 この図にある 印は”中心から見た”日の出の位置を示している。
 これは、図2のような方法で補正した。
 また、図1の通りストーンサークルは二十四節気に基づいて作られている。
 観測した写真から、一ヶ月の差で約柱2本分移動していることがわかった。
 これは、ストーンサークルの柱が、全部で14本。そのため、柱の間の数が13できる。このことにより、夏至と冬至を加えて、一ヶ月で柱を2本分日の出が移動することが分かる。
 よって、この観測結果は二十四節気と一致していると言える。
図1 図2
図1 図2


ミーティング風景両校のミーティング風景