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社会を動かした裁判

対象学年
4年次
担当教員名
渕 史彦 准教授
Fumihiko Fuchi
学びのキーワード
  • 訴訟
  • 社会
  • 立法

研究の内容

法学部法律学科のゼミには、裁判(訴訟事件)を研究するものが少なくありません。本ゼミもそのうちの一つですが、しかし、裁判を研究する際の視点が、ふつうの法律学科のゼミとは大きく異なっています。
これまで日本でおこなわれた訴訟のなかには、単に、その事件に含まれる法的争点に対し裁判所が新たな判断や理論を示したものとして法律家の視点から重要(このような意味で重要な事件は「判例」と呼ばれます)なだけでなく、訴訟当時に一般社会からも注目を集め、その訴訟の結果が当事者間の紛争解決を超えて何らかの形で社会に影響を与えたといえるような有名な事件が、いくつも存在します。
それらについて、本ゼミでは、一般的な法律学科のゼミでおこなわれる「判例学習」「判例評釈」のように、もっぱら法律学の視点から法的争点のみに目を向けて検討するのではなく、むしろ「その事件と社会とのかかわり」(その事件をきっかけに社会はどのように変わったか、その事件はどのような社会変化の文脈の中でおこったものか、等々)という巨視的な観点に注目し、判決文以外の資料(新聞記事、当事者の著書、各種統計など)も駆使して多角的に調査・研究した成果を、卒業レポート(卒業論文)にまとめます。
ひとことで言えば、伝統的な法律学の手法に縛られずに、より広く、より自由な視野で訴訟事件の意義を考えてみよう、というのが、本ゼミのコンセプトです。

研究の進め方

本ゼミは通年で実施されます。
前期(4~7月)は班に分かれて、日本社会に大きな影響を与えた訴訟事件(原則として民事訴訟)を各班一つ選び、紛争の事実関係と訴訟経過の概要(報告1巡目)、法的争点の所在と裁判所の判断(報告2巡目)、および事実関係の補遺と紛争を取り巻く当時の社会状況(報告3巡目)について、詳細な調査(3巡目については当時の新聞記事など判決文以外の資料を調べることも必要)に基づきプレゼンテーションをしてもらいます。授業時間外にも情報共有や意見交換ができるよう、Microsoft Teams上にゼミの会議スペースを開設します。報告レジュメも事前にTeams上で共有されるので、報告班以外の参加者もWeb上の情報や参考文献で予習してくる必要があります。 
後期(9~1月)には、各履修者が前期に扱われた事件の中から一つを選んで、さらに詳しく調査しながら、学術論文としての形式を備えた卒業レポート(卒業論文)を執筆します。後期の授業は、卒業レポートの中間報告と、それについての討論を中心に進められます。

未来のゼミ生へ

法律学の伝統的な研究手法にのっとった「判例研究」や「判例評釈」の形で卒業レポート(卒業論文)を書くのであれば、学部学生が、その道のプロである専門の学者に勝てるレベルの成果を出すことはほぼ不可能であり、結局、有名な学者の書いた論文の内容を要約して卒業レポートの形にまとめ上げるようなつまらないことになってしまいがちです。
しかし、本ゼミのように「裁判と社会との関わり」に着目して、判決文以外の資料も駆使して情報を集め、事件の細部を調べてレポートにまとめるという作業ならば、学部学生でも、自分独自の視点を大切にしながら時間と労力をかけて本気で取り組めば、プロの学者に負けない優れた研究成果をあげることが十分に可能です。学生生活の総仕上げとして、一生の記念になるような卒業研究に取り組みたいと考える人には、本ゼミが最適です。

ゼミ・研究室の魅力

  • ⽂献を読み解く力が身につく
  • プレゼンテーション⼒が⾝につく
  • 論理的な思考力が鍛えられる

卒業論文のテーマ

  • JR東海認知症事故訴訟と日本社会
  • 大津いじめ事件と日本社会
  • 代理母出産と日本社会
  • 大川小学校津波訴訟と日本社会
  • NHK受信契約締結承諾等請求事件と日本社会
  • ハンセン病家族訴訟と日本社会
  • 桶川ストーカー殺人事件と日本社会
  • 東海大学安楽死事件と日本社会

教員のプロフィール

渕 史彦 准教授

Fumihiko Fuchi

1996年東京大学法学部卒業。現在,成蹊大学法学部法律学科准教授。著書として『新・判例ハンドブック債権法Ⅱ』(共著,日本評論社)など。

研究分野
不当利得法、原状回復法、信託法、ローマ法、認知科学と法学理論
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