研究の内容
国際紛争に関する報道を読むときに、国際法に係わる論点を探し出し、その紛争の悪化を防止したり解決したりする政策を考察し、政策のコスト・ベネフィットを計算しつつ、国際法を用いてみずからの意見を説得的に展開するという、法的思考力の修得を目標とするゼミです。国際法の基本的な概念や解釈の技法などを確認しながら、現在進行中の国際紛争を中心に、国際政治の観点も意識しながら、検討しています。法的思考を身に付けるという一般的な目的を持つ学生はもちろん、渉外弁護士を志す学生や、外国と取引のある商社や外国の姉妹都市と交流する自治体などへの就職を志す学生も参加してきました。
研究の進め方
課題を発見することがその後の学びの前提であると考えてることから、前期は新聞記事(とりわけ、特集記事などではない小さな事実報道)などに注目し、報道されている事実がどのように法的論点と関連しているかを考えるところからはじめます。その際には、条約集(国際法の「六法」のようなもの)と教科書を傍らに置いて、細かい論点というよりも国際法のどの分野を調べるべきかという感覚を養います。後期は、2・3件の紛争を、その経緯・過程を丁寧に追いながら、細かい論点と法的主張の構成まで、両当事者の立場に身を置いて(役割分担します)、自分たちでおこなってみます。学ぶ対象から使いこなすものへと、法に向き合う意識を変えられれば1つの達成だと考えます。
社会との関わり
司法制度が確立している国内法の場合とは異なり、国際法は力のせめぎ合う社会でその役割を見出す必要があります。それゆえ、国際法の役割には大きな限界があると同時に、政治の渦中で果たすべき役割には大きな可能性もあります。サイバー空間の役割の増大とともに、サイバー攻撃への脆弱性と社会全体の不確実性が増す現代にあって、安全を確保し、自由を享受するために国際法を使いこなすことはいわば我々(私・家族・住民・国民・人類)のサバイバルに関わる問題です。そこまで大げさに考えなくても、論理を使って力を制御する(『権力と闘う良心』を実践する)ためにも、法的思考を身に付けることは一生の財産になります。学生時代に一度、国際法に取り組んで頂ければ幸いです。
ゼミ・研究室の魅力
- ⽂献を読み解く力が身につく
- プレゼンテーション⼒が⾝につく
- 論理的な思考力が鍛えられる
卒業論文のテーマ
- サイバー攻撃が武力攻撃に該当する場合と国際法上各国がとりうる対応
- より効果的な経済制裁の実施に向けて:北朝鮮制裁を考える
- 竹島領有問題:解決できた可能性のあるタイミングの研究
- 台湾問題の解決のために
- パリ協定における有効性の確保
- ヘイト・スピーチ問題と法規制の適否
- 日本と国際各国における女性議員の比較から見るクオーター制の有用性
- 日本における同性婚制度の可否について
- 文化財はどのような場合に返還されるべきか:大英博物館は「泥棒博物館」なのか
- 国際スポーツ大会と政治:政治的活動は排除されるべきか
教員のプロフィール

佐藤 義明
Yoshiaki Sato
東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科修了(博士(法学))。成蹊大学教授、同Society 5.0研究所長。日本学術会議連携会員。主著、共著『ここからはじめる国際法』(有斐閣、2022年)、共編著『グローバル化する正義の人類学』(昭和堂、2019年)など。元ハーバード大学国際問題研究所研究員。
- 研究分野
- 国際法、国際安全保障、国際人権法