研究活動紹介

RESEARCH ACTIVITIES
生命科学と医療を拓く有機分子戦略

糖鎖〜健やかに生きるために〜

「糖鎖(とうさ)」というのは色々な糖の分子が鎖状に繋がったもので、私たちの体を形成しているタンパク質や細胞の表面に産毛のようにして存在しています
この存在が受精や感染・炎症、ガンの転移、アルツハイマー、パーキンソン病、糖尿病といった形で生命体そのものに深く関係しています。
今、マスメディアなどを通して良く耳にする「健康寿命」にも大きく関与していて、病気を理解する、診断する、治療するという中でこの「糖鎖」の研究をしています。

生体分子化学研究室
戸谷希一郎准教授

▶ Profile

[Profile]
2002年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.2002年理化学研究所 基礎科学特別研究員.2005年科学技術振興機構CREST研究員.2008年成蹊大学理工学部 専任講師.2009年成蹊大学理工学部 准教授(現職)2008年東京糖鎖研究会奨励賞、2009年日本糖質学会奨励賞、2011年慶應義塾大学理工学部同窓生表彰矢上賞など受賞多数.日本糖質学会評議員、東京糖鎖研究会幹事会員、日本化学会•有機合成化学協会•日本ケミカルバイオロジー学会会員.博士(工学).

戸谷研究室 WEBサイト
http://www.ml.seikei.ac.jp/totanilab/
Totani_Lab/Home.html


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糖鎖は生命分子の個性派

タンパク質は細胞の中で形成され、細胞の機能はほとんどタンパク質がコントロールしています。
つまり、細胞とタンパク質の共同作業で生命体はかたち作られていきます。「糖鎖」はその細胞やタンパク質の表面に存在し、それぞれに個性(顔)を与えて生命体の舵取り役をしているのです。この顔つきが変わってしまったり、舵取りを間違えてしまうと、治せる傷が治せなかったり、病気に感染したり、本当は必要であるはずの細胞が作れなかったりと、様々な形で生命体に影響が出てしまうのです。私たちの体は細胞が寄り集まって出来ているのですから、それぞれの人の個性は、細胞表面の「糖鎖」にも現れているのかもしれませんね。

タンパク質の一生と糖鎖〜不良品タンパク質は病気の素〜

体内のタンパク質の30%は不良品です。タンパク質表面の「糖鎖」は、産まれたばかりのタンパク質の赤ちゃんに寄り添い、一人前に成熟する手助けをします。しかし、いくら「糖鎖」が頑張っても完成品にならないものは捨てなければいけません。捨てずにため込んでいるとこれが病気の原因になります。アルツハイマーは、こうしたことが脳の細胞で起こる病気なのです。面白いことに不良品がたまる場所が違うと、別の病気になります。パーキンソン病や、糖尿病、骨粗しょう症なども、同じように不良品タンパク質を正しく捨てられない病気です。まったく症状の違う病気の原因が同じなんて面白いですね。

不良品タンパク質を何とかしたい!戸谷研の挑戦

戸谷研では、不良品タンパク質の生成/分解機構の解明を目指して、その鍵を握るタンパク質表面の「糖鎖機能」を化学者の視点で研究しています。
具体的には、生体内糖鎖構造をモデルにして多様な分子ツールを化学合成し、これらを駆使することで生物学的なアプローチでは分からなかったタンパク質の運命を明らかにしつつあります。
私たちが関わった研究は、”Journal of the American Chemical Society”, “Angewandte Chemie”, “The Journal of Biological Chemistry”, “Biochemistry”, “RSC Advances”, “ChemBioChem”, “Glycobiology”など、各分野のハイ•インパクトジャーナルやコア•ジャーナルに掲載され、50回以上の被引用回数に達するものも多くあります。

糖鎖分子戦略で生命/医療に貢献したい

捨てなければいけない不良品タンパク質をどう排出するのか?これは多くの病気に関係する根源的な問題です。世界中の研究者が、長年、解決できないこの問題に対して、私たちは、糖鎖分子ツールを基盤として、最近、ふたつの重要な成果を得ました。第一は「不良品タンパク質と完成品タンパク質を交通整理する仕組みを解明」したこと、第二は「不良品タンパク質の排出を促進する新しい酵素を発見」したことです。これらの研究をさらに進め、不良品タンパク質をきちんと捨てられるようにすれば、様々な病気の改善につながり、世界の生命科学や医療に貢献できるものと考えています。