成蹊学園 中村春二没後100年 特別対談|“共創”の時代にこそ求められる、中村春二の教育理念

成蹊学園の創立者である中村春二。没後100年を迎えた現在でも、その教育哲学は古びることなく、むしろ「人間の在り方」が問われる今日において、より重要な意味を持つようになってきている。本企画では、成蹊学園の卒業生であり、企業人として社会に貢献されてきた上原明氏をゲストに迎え、成蹊教育の本質を紐解くと共に、これからの社会に求められる人材と教育の在り方について考える。

話者プロフィール
  • 上原 明(うえはら・あきら)

    成蹊小学校、成蹊中学・高等学校、慶應義塾大学卒。日本電気株式会社(NEC)での勤務を経て、1977年に大正製薬株式会社に入社。社長・会長を歴任し、2011年に大正製薬ホールディングス株式会社 代表取締役社長に就任(現任)。

  • 江川 雅子(えがわ・まさこ)

    東京大学卒。ハーバード大学経営大学院(MBA)。一橋大学大学院(商学博士)。外資系投資銀行勤務ののち、東京大学理事、一橋大学大学院教授等を経て、2022年4月学校法人成蹊学園 学園長に就任。その間、三井物産、三菱電機、東京海上ホールディングス等の社外取締役を兼任。

  • 上田 祥士(うえだ・しょうじ)

    成蹊小学校、成蹊中学・高等学校、東京歯科大学卒。東京歯科大学大学院修了。学校法人成蹊学園理事。創立者中村春二の教育について研究し、「成蹊学園100年史」、映画「たしかなあしぶみ なかむらはるじ」等の出版物や映像の監修を手掛ける。

現代に息づく成蹊教育

上田理事(以下、上田):

本日は成蹊学園ご出身の上原明大正製薬ホールディングス代表取締役社長、江川雅子成蹊学園 学園長とご一緒に、私、上田の司会進行のもと、「現代社会にこそ求められる大正自由教育の旗手・中村春二が生んだ成蹊教育」というテーマで、お話を進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

上原社長(以下、上原)・江川学園長(以下、江川):

よろしくお願いします。

上田:

まずは、長年に亘って企業人として社会に貢献されている上原様にお伺いしたいと思います。ご自身が成蹊教育をお受けになって、どのような影響を受け、どのようなことが実社会で役立ったのでしょうか。

上原 明

上原:

振り返ってみると、小学校からずっとお世話になった成蹊の教育が身に沁みこんでいるんですね。私の今の価値観や生き方は、成蹊の教育の賜物だと思っています。発想を大きく、幅広く物事を見るということを強く教わりました。

小学生の頃、週一回か二回だったと思いますが、本館の屋上に登って富士山をしばらく黙って見つめるという時間がありました。これは「富士山のようにどっしりとした大きな心を持ちなさい」という、先生からの教育だったわけですね。

また学園裏の武蔵野の畑の中を散策したり、授業の一環で芋をつくる畑仕事をしたりしたものです。目の前の自然をよく観察し、味わうという貴重な体験でした。教室で学ぶだけでなく、身をもって体験する、感じるということが自分の肥やしになったなと感じますね。

それから高校生の頃なんかは、すごく迷ったこともありました。

例えば大学受験を考えたときに、定員の枠というものがありますよね。勉強をして、自分が合格できなかったらそれは実力不足だから仕方がない。しかし、自分が定員枠のひとつに入ったために、定員枠から漏れる人というのが必ず出てきます。社会に出てからも同じです。あるひとつのポストが空いたとして、そこに自分が入ると、他の人が入ることはできません。

このように、人を蹴落としてまで自分が、そのポジションを得るということに対して、自分は納得できなかったのです。当時これをどう考えれば良いのかということを、高校の松田満夫先生に聞いてみました。

そこで言われたのは、「目先の合格やポジションを得るのは目的ではない。何をしたいのか、どんな志を持って、どのように社会に貢献したいのかということが重要だ」ということでした。自分なりに合点が行きましたよね。

とはいえ、それでは自分は具体的に何をするか?ということへの結論はすぐには出ませんでした。それこそ最近になって、来た道を振り返ってみてようやく掴めてきたところです。

私は製薬会社の人間ですから、この道でやはりすべての人の健康に貢献したいと思います。お年寄りに限らず、さまざまな人が栄養や運動、休養を享受できるようなお手伝いをすること。それこそが自分の世の中に対するお返しであり、感謝の気持ちの表現ではないかと思うようになりました。

成蹊教育では、中村春二先生の言われた「真我」の開発が重視されています。「真我」とは、人間の奥底に眠る「尊い心」のこと。自分の志がたとえいつ結実するかわからなくても、絶えず追い求める姿勢。自分中心の考え方を捨てて、社会のお役に立とうとする精神。そんな尊い気持ちが、成蹊での学びを通して自然と培われてきたように思います。

また、成蹊学園の名前の由来である「桃李もの言わざれども下自ずから蹊を成す」という故事成語にも、近しい意味合いが感じられます。社会の役に立ちたいと思う一心で仕事に打ち込むことが重要。周りの人はそれをちゃんと見ていてくれる、という考え方です。

不言実行という言葉もありますが、そういうことではないかと最近になってようやく、恥ずかしながらわかってきました。昔から考えていたつもりですが、経験を積むことによって理解がより深まってきた感覚です。

上田:

本当に大切なのは、広い視野を持ったうえで、「自分が何をしたいか、どう社会に貢献したいか」を考えることなのですね。それを絶えず追い求め続ける尊い姿勢こそが、中村春二先生の言われた「真我」の開発であり、成蹊教育を通して育まれるものなのだと。

私も小学校から成蹊教育を受けましたので、お話を聞いて改めて身に染みて感じるところです。やはり成蹊で受けた教育が、その後の人生に大きく影響を与えているわけですね。何か問題が起きた時に、その精神に立ち戻って判断をしていく、一生の羅針盤のようなものではないかと思います。

江川:

成蹊教育には誇れる点がたくさんありますが、まさに上原さんが冒頭におっしゃった「体験」やそれにより養われる幅広い視野、自発的に考える力の在り方は、現在の成蹊学園にも色濃く受け継がれているところです。

これを成蹊学園では「本物に触れる」教育として重要視し、小学校から大学まで一貫していろいろなことを実践しています。

例えば小学校では、開設当初から100年にも及ぶ園芸・作業というものを実践していますし、敷地内で実った桃の実を使ったジャムづくりを行う授業などもあり、五感を使って楽しみながら学習しています。私自身は都心の学校に通っていたので、すごく羨ましいなと思っています。

また、中学・高等学校では、同じく100年の歴史を持つ成蹊気象観測所において、今でもずっと観測を続けている他、ショウジョウバエの飼育と観察も長い伝統があります。

大学でも、人との深いつながりを通して社会の課題に向き合うべく、吉祥寺の街にあるさまざまな問題を地域の方々と一緒に解決したり、北海道・十勝の農家さんへ学生が赴いて酪農の体験をしたり、グリーンツーリズムの可能性を探ったりしています。

また、メディア理解を目的に、学園の近くにあるむさしのFMという放送局のラジオ番組や映像作品を、成蹊の学生が授業の一環として作ることもしています。実は私もインタビューを受けて、2023年の1月に初めてラジオに生出演しました(笑)

その他にも、成蹊大学にはおみくじを研究している日本古典文学が専門の先生がいまして、おみくじのルーツの一つである和歌占いについて研究する傍ら、神社から依頼された「おみくじ制作」を学生たちも巻き込んで一緒に実践したりしています。

このように、成蹊学園では本物に触れる、あるいは実際にやってみるという体験の機会を数多く用意しています。そういったことができるのは、創立以来、少人数教育を徹底しているからです。少人数であるからこそ、生徒一人ひとりと丁寧に向き合うことができるのです。

上田:

さまざまな場面で、「本物に触れる」教育が実践されているのですね。私が通っていたころに経験したものだけではなく、現在ならではの取り組みもあり興味深いです。
ちなみに成蹊においては、「自発的精神」という考え方も、中村春二先生の重視されたポイントでしたね。

江川:

おっしゃる通りです。あらゆる場面で児童・生徒・学生が「なぜ?」を自発的に考えるようにはたらきかけ、率先して学ぶ機会を提供するということを徹底しており、大学のゼミにおいては実際にそうした観点からプロジェクトを始めるケースもあります。高校では探究学習に注力する一環で、修学旅行も学校が行程を決めるのではなく、それぞれの小グループに分かれ自分たちの主体性に基づいて、企画し計画を立てていきます。

そうした「自発的精神」を養う根底にあるのは、「個性の尊重」という建学の精神です。中村春二先生がご自身の教育哲学を示した「教育図解」という12枚の図付きの文書があります。その中にある、「生徒一人ひとりの個性を形の異なるコップで表現し、そこに水を注ぐ」という絵が非常に示唆に富んでいます。

中村春二 教育図解「現今教育の欠陥」
中村春二 教育図解「現今教育の欠陥」より
生徒のことを大きさや形がさまざまなコップとたとえ、大人数の教育では教師が生徒一人ひとりの個性に合わせて教育という水を注ぐのは難しい(=個性尊重の教育を行うには、少人数制が必要)ということを表している。

江川:

近年、文部科学省の新学習指導要領では「個別最適な学び」というキーワードが使われており、個々の児童生徒に応じて異なる方法で学習を進めることを目指すようになりました。それを100年以上前から実践していたというのは、成蹊学園の大きな強みだと思っています。

次代を担える人材とは

上田:

創立以来の精神を受け継ぎながら、時代に合わせて発展していく成蹊教育の在り方をひしひしと感じます。現代は、深刻な気候変動や、国家地域の紛争、AIに象徴される新技術の台頭など、不確実性の高い時代が続いています。そんなこれからの社会に、どのような資質が必要とされるでしょうか。

上原:

今の時代の大きな流れをどう見るかということが、まず重要だと思います。
ひとつは、経営の三資源と言われる「人、カネ、モノ」の存在。そこに「基礎技術、基礎研究、データの共有」という3つ、私は「価値創造の三資源」と呼んでいますが、この重要性が増してきました。この「経営の三資源」と「価値創造の三資源」が絡み合うことで、情報化社会が到来し、イノベーションを起こしていると考えています。

上原:

その結果として世界中が豊かになり、医学の進歩による人口増加や長寿高齢化、また生活者主権の社会の出現をもたらしました。これらが「光」の部分であるとすると、同時に、「影」の部分も表面化しているのが実情です。富、教育、そして健康の格差が見られるようになっただけではなく、人口増加に伴う資源の乱獲乱用、温室効果ガスの排出などの問題が加速しています。

そうした発展という光によって生まれた影を是正していくために、2015年に193カ国が集まって採択されたのがSDGsというわけです。しかし、国際的な協調といっても、最終的に重要となるのは個人レベルのつながりなんですね。

つまり、いかに一人ひとりがグローバルな視点を持っているか。そして世界中の人々がイノベーションを持ち寄って課題を解決していこうとする中にあって、自分の専門を超えた領域のことも柔軟に受け入れ、友好的に物事を進められるか。そうした資質を身につけることが、何よりも大切になってくるのではないかと思います。

また、単に課題解決といっても、そもそもの課題が何なのかという本質を見つけられなければ話は進みません。求められるのは、広い視野で情報を集め、整理をすること。そこで新たに疑問を見つけ、それを解くための情報を更に集めて整理して考えること。この自発的な繰り返しの中で、解決すべき本質的な課題を見定めることが大事なんです。

そして今度は、その課題に対する仮説を立てる。みんなで話し合ってみる。他者の考えも取り入れながら、自分で考えを深め続ける。わからないことだらけの時代には、そんな習慣こそが大学の教育でも身につけられると良いのだと思います。

先ほど江川学園長のお話にもあった、地元・吉祥寺の問題点を見つけたり、修学旅行で自分なりの仮説を立て、自分の足で確かめたりする経験は、今後生きる上での大きな自信につながるのではないでしょうか。

上田:

視野を広く持ち領域を超えることと、自身の考えを深め続けるということ。これは現在の成蹊学園が新たに立てた学園目標である「確かな教養と豊かな人間性を備え、グローバル社会の貢献に発展する桃李の人を育てる」と重なる部分も多いと思いますね。

江川:

この学園目標は、昨年1年間かけて、これから6年間の中期計画として立てました。「確かな教養」というのは、成蹊が旧制高校の時代、100年ほど前から大切にしてきたリベラルアーツ教育で養われるものです。

先ほど、専門領域以外のことも理解する必要があるというお話がありましたが、成蹊大学ではまさにこの部分を重視していて、副専攻制度を導入しています。これは、学生一人ひとりがそれぞれの興味や関心にあわせて、他の学部や学科の科目を受講できるというもので、例えば理工系の学生が同時に経営についても勉強できるというような複眼的な学びを可能にしています。

また「豊かな人間性」というのは、成蹊教育の核である人格教育、心の力というところが基礎にあると思います。上原さんがおっしゃったように、現代社会が直面する課題は、ひとりの人間、ひとつの組織、ひとつの国家だけで解決するのは困難なものばかりです。だからこそ、さまざまなバックグラウンドを持った人が議論を交わし、信頼関係を築きながら共創することで課題解決に向かうことが重要なのだと思います。

相手の立場を尊重できるようになることや、自ら考える「自発的精神」、そして自分を超えた広い社会に対して、何らかの貢献をしたいという強い想いが、社会の問題の解決につながると思います。これがまさに、成蹊の「真我」の開発にほかならないと思いますし、そういったものが既に成蹊教育の中にすべて組み込まれているので、さらにそれを発展させていきたいと思っています。

また私自身、成蹊学園において国際化をさらに推進することを目標としているんですが、実は中村春二先生は1912年に成蹊を創立された頃から国際的な視点を強く持っていたんですね。100年以上前の当時既に、中等教育において在学中に英語でコミュニケーションが出来て、英字新聞や英語の書籍をスラスラ読めるということを標榜していたと言います。帰国子女を受け入れる国際学級についても、戦前から存在しています。

今でも多種多様な留学プログラムが充実していますし、世界11ヵ国から留学生を受け入れるなど、国際理解教育や国際交流に力を入れています。こうした環境でともに学んだのちに、海外で大学教授や弁護士などとして活躍されている卒業生もたくさんいらっしゃいます。

上田:

今までの成蹊教育の在り方を大切にしつつ、そうした能力をより広い世界で発揮できる人物の育成をめざして、グローバルというキーワードを入れた学園目標を掲げたということなんですね。
この学園目標を現代に求められる形として結実させるのが、2026年に設置を構想している大学新学部だとお伺いしました。

新たな学びの場と
これからの生き方

江川:

新しい学部は、「国際共創学部(仮称)」です(注:以下、記載内容は設置構想中のものであり、今後変更になる場合があります)。今私たちは、多様なバックグラウンドや国籍、専門知識を持った人たちの共創なくしては解決できない多くの課題に直面しており、そのために必要とされる人材を育成するのが目的です。

2つの大きな柱を構想中で、まずひとつめが「国際日本学」です。国際共創学部ですからグローバルな視点を持つということは大前提ですが、実際に解決していく問題というのはローカルの具体的なものであることが多いです。そのため、母国である日本についてしっかりと理解した上で、グローバルとローカルという複眼的な視点を持ち合わせて課題の解決に臨める人材を育みたいと考えています。

ふたつめは「環境サステナビリティ学」です。気候変動・地球温暖化などの環境問題は、全世界の人が取り組まなければならない喫緊の課題であり、グローバルな共創において、この問題が大きなテーマとなることは間違いありません。

この2つの柱を軸に、クリティカルシンキングやチームワークだけではなく、実行力、データ分析力、表現力や発信力など、あらゆる能力を養える学修環境を整えるつもりです。

上原:

プレゼンテーション力の重要性は私も感じています。プレゼンテーション力とは、自分の言いたいことを言う力ではなく、言いたいことを相手に理解してもらうために工夫をして発信する力のことです。相手の経験や価値観を知ったうえで、どうすればその人に理解してもらえるかを考えることが大切ですよね。

江川:

そうですね。成蹊では、中学や高校でも発信力を磨くための授業が昔より格段に増えてきていますし、大学のゼミでも一層重視しているところです。

そしてこの新学部開設を通じて、リベラルアーツや本物に触れるためのフィールドワーク、そして社会に貢献する心の育成という、成蹊が建学の時代より大切にしてきた価値を組み合わせながら、次代を担う人材を育てていきたいと思っています。

上田:

成蹊の歴史における大きな一歩ですね。これからの成蹊学園に一層期待が高まります。成蹊の後輩をはじめ、未来を担う若者たちに、どんなことを期待しますか?

上原:

人生100年時代と言われるようになった今、人生は20年で一節、5つの節があると考えるのが良いのではないかと思います。

最初の20年というのは大学卒業頃までの節で、知識や判断力、考える力、加えて感性や体力といった基礎を身につけるためにいろいろと試してみる時期です。こうした基礎というのは、何かを追求したり、仲間と一緒に物事を検証したり、課題解決まで粘り強く取り組んだりといった体験を一生懸命していく中で養われていくものです。

高校や大学で偏差値が高いかどうか、今優秀かどうかなんて関係ありません。その先の人生はあと80年も続くわけで、これから学び続ける姿勢を学んでいけばいいんです。

そして次の20年となる40歳頃までが、本当にやりがいのあることは何かというのを見つける時期。見つけた道に没頭するのがさらに次の20年、第3の節です。

これを終え、第4の節を迎えた60歳以降は、社会に対する恩返しをする時期として、次の時代を担う人々をサポートする役目を担っていきます。

第5の節は、自分の健康も考慮しながら、身の回りでできる仕事を全うするということが重要ではないかと思っています。

だから大学教育は、考えて生きるための基礎を教えるための場であるべきだと思いますし、学生たちにさまざまな経験を提供して、視野を広げてあげることが大切です。親や職場の上司にも同じことが言えますが、やはり教師自身が自分の生き方に真剣に取り組む背中を見せるということも欠かせないですね。

学生のみなさんはそんな背中を見ながら、一生懸命に、正直に、真摯に、品性を持って学ぶことを続ければ、その時代に求められる力が自然と養われていくと思いますよ。

上田:

ありがとうございます。こういったことを言ってくれる先生が、昔から現在までたくさんいてくれる学園だと思いますし、これからもっと増えていくと良いなとつくづく感じている次第です。

教師の熱誠がないと教育は達成できない、とは中村先生もおっしゃっていますよね。単に知識の受け渡しをするだけではなく、先生自身が一生懸命に教育に励む姿を見せてくれると、それを見て周囲が感じ取るものもあるというものです。若い方には、そうした熱心な先生がいる環境の中で志を持ち、たしかな基礎を身につけてもらえたらいいですね。

上原:

昔読んだ書籍にこんなことが書かれていました。「あの人はすごい」と言われるいわゆる成功者には、政治や経済、アカデミック、スポーツ、芸能など、どのジャンルかに関わらず3つの共通点があるそうなんです。

まずはPositive(積極的)。何でも自ら進んでやってみるということです。次にAffirmative(肯定的)。一見失敗とも思える物事の結果を肯定的に捉えて経験から学ぶということです。最後にGoal-minded(目標指向型発想)。決めた目標を達成するために、1年後、5年後、10年後の中間目標を定めてその達成のために毎日努力を積重ねるということです。

これらは広い視野を持って、考え続け、さまざまな人とコミュニケーションを取る中で、役に立つ発想かもしれません。

江川:

それはすべて心の持ちようと言いますか、中村先生がおっしゃった「心の力」なのではないかと感じました。とてもいいお話をお聞かせいただき、身が引き締まる思いです。

上原:

ちょっと張り切りすぎたかもしれません(汗)

上田:

こうしたお話ができるのも、成蹊の良さだと思っています。

中村先生は今から100年前にお亡くなりになっていますが、教育の本質を見る目をお持ちだったというか、まるで今の社会が必要としている「人間の在り方」を見通しておられたように思います。

当時の気持ちが今この瞬間にまで伝わっているのはすばらしいことですから、建学の精神と伝統を受け継ぎ、江川学園長のもと成蹊学園がよりよく発展されることを願っております。本日は本当にありがとうございました。

上原・江川:

ありがとうございました。

※掲載の写真は2023年12月に撮影したものです。※掲載の情報は2023年12月時点のもので今後変更になる場合がございます。

「人間は、
いかに生きるべきか」。

中村春二が問い続けた、
成蹊教育の原点。

中村春二の肖像写真

教育を通じて社会に尽くせる人間を育てることで、より良い社会の実現をめざした成蹊学園の創立者・中村春二(1877~1924年)。その教育の根底にあるものは「人間は、いかに生きるべきか?」という問いでした。教科書の内容を生徒の頭に詰め込むことが教育だと考えられていた時代にあって、中村が重視したのは、生徒一人ひとりの個性を引き出し、自ら進んで学ぼうとする意思を育むことでした。人間は皆、心の奥底に「尊い心」を持っている。それを教育によって呼び覚ますことで、積極的に社会に尽くそうとする人間を育むという中村の哲学は、成蹊教育という形で現代に変わることなく受け継がれています。

中村春二没後100年特設サイトはこちら
https://www.seikei.ac.jp/gakuen/nakamura100/