三浦正志教授/リーディングリサーチャーの筆頭論文が英国科学誌Nature姉妹論文誌『Nature Materials』に掲載されました
理工学部/大学院理工学研究科 三浦正志教授/リーディングリサーチャー(専門分野:電子・電気材料工学、電磁現象学、超伝導工学、結晶成長学、固体物理学)の筆頭論文「飛躍的に向上させた鉄系超伝導材料の対破壊電流密度(Quadrupling the depairing current density in the iron-based superconductor SmFeAsO1-xHx )」と題された研究は、英国科学誌Nature姉妹論文誌『Nature Materials』に掲載されました。
Nature Materials は、材料の科学技術全般に関する最先端研究の集成を目指す学際的ジャーナル誌です。Nature Materialsの論文の影響度を測る指標であるインパクトファクターは44.0であり、Nature誌やScienceと並ぶ世界最高峰の論文です。
三浦正志教授は、科学技術振興機構(JST)の2020年度創発的研究支援事業に採択され、「新材料設計指針により対破壊電流密度に挑む」の研究題目で研究を推進しています。特に、独自の新しい材料設計指針を確立し、臨界電流密度(電気抵抗ゼロで流せる電流密度の限界値)を理論限界である対破壊電流密度に近づけることを目的としています。
今回、三浦正志教授は、東京工業大学 細野秀雄 栄誉教授、平松秀典 教授らの研究グループと共に、新しい材料設計指針であるキャリア密度制御と磁束ピン止め点制御の融合により鉄系超伝導材料SmFeAsO1-xHx薄膜を創製し、鉄系超伝導材料の中でも最も高い世界最高の超伝導臨界電流密度を達成しました。
具体的には、鉄系超伝導材料SmFeAsO1-xHx薄膜における水素量を高濃度ドープすることで高いキャリア密度を実現し、臨界電流密度を飛躍的に向上させることことに成功しました。また、プロトンビームを照射することでSmFeAsO1-xHx薄膜の結晶性・キャリア密度を維持したまま、高密度な磁束ピン止め点を導入することに成功しました。この結果、キャリア密度制御と磁束ピン止め点制御の融合により創製したSmFeAsO1-xHx薄膜は、液体ヘリウム温度下で鉄系超伝導材料の中で最も高い臨界電流密度を達成しました。また、 25テスラの高磁場下においても超伝導材料の中で最も高い銅酸化物高温超伝導材料YBa2Cu3Oy薄膜に匹敵する鉄系超伝導材料の中で最も高い磁場中臨界電流密度を達成しました。更に、本新材料設計指針を用いてSmFeAsO1-xHxと異なるさまざまな超伝導材料においても飛躍的な臨界電流密度の向上が確認されたことから、今後、本新材料設計指針が幅広い超伝導材料の臨界電流密度向上に貢献することが期待されます。
今回の研究成果により、液体ヘリウム(‐269度)を冷媒とした大型ハドロン衝突型加速器, 核融合発電、核磁気共鳴装置、磁気共鳴断層撮影装置やリニアモーターカーなどへの応用が期待されます。また、液体水素(‐253度)を冷媒とする超伝導送電、超伝導電力貯蔵装置、航空機用超伝導モーター、発電機などへの応用が期待されます。
●三浦正志教授の英国科学誌Nature姉妹論文誌"Nature Materials"掲載ウェブサイトはこちら↓
https://doi.org/10.1038/s41563-024-01952-7
●科学技術振興機構(JST)プレスリリースとの共同プレスリリース資料はこちら↓
https://www.seikei.ac.jp/gakuen/news/upload/seikei_20240718_miura.pdf
●科学技術振興機構(JST)プレスリリースウェブサイトはこちら↓
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20240718/index.html