吉祥寺を代表するイラストレーター キン・シオタニさんにインタビュー!!
はじめに
成蹊学園が池袋から吉祥寺に校地を移転して、2024年で100年となります。これを記念して、吉祥寺を代表するイラストレーターであるキン・シオタニさんと成蹊学園のコラボレーション企画が実現しました。柔らかく愛らしい雰囲気の成蹊吉祥寺移転100年記念イラストを描かれたキン・シオタニさんに今回、学生広報委員会がインタビューを行いました!
今回は、制作の裏話やイラストに込められた想いなどについて伺ってきましたので、キンさんの素敵な表情とともにお楽しみください!!

イラストレーター キン・シオタニさん
―はじめに、コラボレーションの話が来た時、どのようなことを感じられましたか?―
成蹊からオファーがあったときは自室を二周するほどうれしかったです。
成蹊大学は僕が通っていた大学ではないけれど、吉祥寺にいると知り合う人が成蹊出身という人が多いし、僕がイラストを仕事にし始めた頃に井の頭公園でハガキを売っていたんですけど、お客さんで成蹊大学生が多くてとてもなじみがあったのでれしかったです。
それと、今年は成蹊大学をはじめ吉祥寺のスーパーの三浦屋が100年、キラリナが100年、ロフトが25年、ユニクロが10年となど、あらゆるところで周年記念に関するオファーが偶然重なって、今年はいろんなところが節目を迎えているんだなと不思議でした。

成蹊大学本館
―今回、コラボレーションをしてみて成蹊大学の学生、卒業生、そして職員にどんな印象を持たれていますか?―
先ほども言ったように僕は、成蹊大学の卒業生などに知り合いが多くいます。
漠然とした言い方になりますが、みんな「良い人」、「真面目」という印象があります。
成蹊学園の広報スタッフの皆様も「これをやってください」という決まったものをオーダーしてくるのではなく、「何の企画を一緒にやりましょうか?」、「イイですね!」というようにとてもウエルカムな姿勢で、快適な環境の中でクリエイティブなお仕事をさせていただきました。
―成蹊吉祥寺移転100年記念の吉祥寺駅前ビジョン、どのような思いを込めて作られたのですか?―
僕、実は成蹊の「蹊」の字をちゃんと書けなかったんですよね(笑)
そこで、その字を書けるようになれる絵描き歌を作りたいと思いついて、成蹊のスタッフさんにそれをお話したら「イイですね!」と言っていただきました。
歌を作るため、私の知り合いであり、NHK Eテレの『ピタゴラスイッチ』テーマ曲でおなじみの「栗コーダーカルテット」の栗原正己さんにその話を持ち掛けたら、「ぜひやりましょう」と即答していただきました。
その絵描き歌のアイディアから始まり、現在は吉祥寺駅北口の駅前や渋谷スクランブル交差点のビジョンで流れている成蹊学園吉祥寺移転100年記念動画が出来上がりました。
SEIKEI 100 YEARS IN 吉祥寺

吉祥寺駅北口前のビジョン
―今回は大学とのコラボレーションでしたが、他の公共の場に描くアートと大学に描くアートでは、制作にあたって何か違いはありましたか?―
今回はいろんなところでイラストをかかせてもらったんですが、デザインを考えるにあたって、登場人物を大学生っぽい感じにしようと考えていました。
その中でも、通学路のフラッグを最初に描いたとき、登場人物がおばさんみたいになってしまって…その時に、もう少し若く描こうと強く感じました。
このように、他のアートとの違いは登場人物に大学生らしさを出すという点でしたね。
成蹊学園に何度も足を運び、学食やトラスコンガーデンでお昼ごはんを食べたりして、学生の格好や髪型を観察していました。それらがイラストに反映されているので、このキャンパスにいる何人かの学生さんはデザインのモデルになっていますよ。


通学路に並ぶフラッグを解説してくださいました
―今回のコラボレーションにあたって成蹊学園のことを調べられたのですか?―
イラストを描くにあたって成蹊学園について知識をつけなきゃいけないと思い、たくさん本や資料をいただいて読みました。その中でも創立者の中村春二先生の生涯を描いた漫画は特にわかりやすかったですね。他にも史料館へ行ってみると知らなかったことがいっぱいありました。
成蹊生の皆さんも、成蹊学園が池袋にあったことを入学してから知った方が多いのではないかと思います。
僕はちょうど成蹊のプロジェクトを進めている時に、豊島区のトークイベント「としま区さんぽライブ」の取材のため、池袋にある地名発祥の地に行ったんですよ。そうしたらその場所に成蹊学園発祥の地の石碑があり、とても不思議な縁を感じましたね。
今回のウォールグラフィックや通学路フラッグのイラストを見て普通に楽しんでもらうというのもありますが、中村春二先生がいたり、その裏面では桃が落ちて少年が持っていたり、成蹊に関わるものを含ませているので、気がつく人はさらに楽しいと思います。

成蹊大学情報図書館とキンさんの階段アート

中村春二先生と桃が描かれているフラッグ
―今回の制作で大変だったものは何ですか?―
今回のプロジェクトで大変だったのは、6号館のカフェテリアのウォールグラフィックだと思っています。
外から見えるガラス張りの絵はバランスを考えるのが難しかったです。これは15回くらい現地に行って窓グラスのグリッドを眺めて考えたんです。今回の企画で、現場にくることの大事さを思い知りました。


絵の見本を用いて解説
1号館は、建物を見ているうちに空と絵が同化したら面白いだろうな、というように自然にアイディアが浮かんだんです。空と同化したように見えるように、iPadで写真を撮って「スポイト」というツールで色を抽出し、絵の空の色に使いました。
今回の企画は、与えられたテーマが特にあるという訳ではなく、基本的に自由で、強いていえばピーチくんを入れることぐらいでした(笑)。だから自由に表現しました。空と同化して飛んでいる絵を描いて、気持ち良さそうだなと、絵を見た人が和んでくれたらいいなという気持ちと同時にここから羽ばたいて欲しいという願いも込めました。この作品は自分の主張を出しすぎないで、風景に和ませることを意識したので印象に残っています。

「スポイト」のツールの説明

空と同化している1号館の作品
あと、関東バスと西武バスのバスラッピングのイラストも描いたんですけど、吉祥寺は自然と街の調和がとてもよく取れていると思っているので、その特性を生かして2つデザインを考えました。
1つ目は人をたくさん描いてみんなに「SEIKEI」の文字を持たせて、2つ目は両面でデザインを変えて片面は池袋時代の成蹊、もう片面は今の吉祥寺の成蹊をそれぞれイメージして描いて歴史を感じられるようにしました。
どちらの案が良いかとスタッフさん達に案を見せたらどちらも好評で両方とも採用していただき、結果的に関東バスと西武バスでそれぞれデザインを変えることになりました。
先ほども言いましたが、こんな感じで本当にスタッフさん達は前向きでノリが良く、楽しく制作に臨めました。
このバスはたくさん走っているわけではないので、見つけたらラッキー!くらいに思って欲しいなと思います。

関東バス

西武バス
―学生に向けて何かメッセージをお願いします!―
僕が皆さんに大事にしていって欲しいことは2つあります。
1つ目は、好きなことをとことんやるっていうことです。これが一番大きいです。
大学生は自分で判断する場面が増えるので、人に合わせることより自分が良いと思ったことがあれば迷わず選択して欲しいですね。自分の意思を持って、自分を見失うようなことをしないで欲しいなと思います。
2つ目は、いろいろなことに想像力を使って遊んで欲しいということです。
今の世の中、インターネットが普及されて便利な世の中になり、想像力があまり使われなくなっていますよね。想像力は生きる上で大切なことだと思います。想像力を磨いて自分を楽しんでクリエイティブに考えられるようになって欲しいと思います。

熱く語ってくださるキン・シオタニさん
取材を終えて
いかがでしたか?今まで何気なく見ていたかもしれませんが、背景や小ネタを知ったことで次見たときには印象が変わるのではないでしょうか。改めてイラストを見るのが楽しみになりますね。
今回のインタビューで、キン・シオタニさんが移転100年という節目に素敵なアートを描いてくださったことはもちろん、その過程でたくさんの苦労や工夫があったことを知り、感動しました。
当サイトの他に、キン・シオタニさんのホームページや成蹊学園吉祥寺移転100年記念特設サイトもあります。ぜひ、ご覧ください。
キン・シオタニさんオフィシャルホームページ
成蹊学園吉祥寺移転100周年記念特設サイト
我々にとって、キン・シオタニさんとお話しできた時間はとても有意義でした。
お忙しい中、インタビューにご協力いただきありがとうございました!

取材メンバーと一緒に(新11号館にて)
キン・シオタニさんのプロフィール
東京生まれのイラストレーター、文筆家。全国の雑貨屋で販売された「長い題名シリーズ」のポストカードで注目され、様々なメディアでイラストを発表するほか、作品集の出版、メディア出演、パフォーマンスやトークイベントの出演や企画を行っている。また長年の旅の経験から日本各地の街を独自の視点で捉え、イベントや講演会などで語り、多くの支持を集めている。
執筆/石井・斉藤・蓮見
インタビュー/蓮見
撮影/斉藤