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<報告>成蹊大学Society 5.0 研究所第15回講演会「お薬の効果はどう調べるの?:医療における統計学・データサイエンスの役割」

■主催
成蹊大学Society 5.0研究所
■開催日
2025年1月11日(土)
■時間
14:00~15:30
■会場
成蹊学園本館大講堂
■参加者数  
119名
■主催者代表
小森 理(成蹊大学Society 5.0研究所所員)

2025年1月11日(土)、年明け早々の時期に日本計量生物学会の前会長であり、現在名古屋大学大学院医学系研究科教授・統計数理研究所医療健康データ科学研究センター長を務める松井茂之先生をお招きし、「お薬の効果はどう調べるの?:医療における統計学・データサイエンスの役割」と題してご講演いただきました。

はじめに、なぜ「統計学・データサイエンス」が医療の場で不可欠なのかについてご解説いただきました。疾患のメカニズムが完全には解明されていなくとも、実際のデータに内在するメカニズムを確率に基づいた統計モデルで捉えることで、合理的な意思決定が可能になるという点が重要とのことでした。

次に、薬の効果を調べるためには「薬を服用しなかった場合」との比較が必要であり、そのための比較相手(コントロール)をどのように選定すればよいかについて、松井先生ご自身の体験談も交えながらわかりやすくお話しいただきました。個人間の比較は、年齢・性別などの背景因子や臨床情報が異なるため、正確な比較が難しくなります。しかし、数理統計学の創始者である R. A. Fisher が示した「ランダム化」のアイデアを用いると、薬の服用以外の要因をほぼ揃えた二つの集団を用意することが可能になります。これにより、データに基づいて薬の効果を客観的に評価することが可能になります。R. A. Fisherのこのランダム化のアイディアはもともとは農業試験場で、土壌の質、日当たり、水の供給量などがどのように作物の成長に影響するかを調べるために用いられました。このように「統計学・データサイエンス」のアイディアはさまざまな状況に応用でき、このことがビックデータ時代において「統計学・データサイエンス」を学ぶ1つの大きな意義となっているかと思います。

後半では、ランダム化が難しい状況において、どのように二つの集団の背景因子を揃えるかを「因果推論」の枠組みで解説していただきました。また、医療分野におけるAI活用事例をご紹介いただき、講演全体を総括していただきました。

講演終了後には多くの参加者から活発なご質問をいただき、大変有意義な会となりました。貴重なお話をくださった松井茂之先生をはじめ、ご参加いただいた地域住民の皆さまや学生、さらに企画を支えてくださった関係各位に、心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

(成蹊大学Society 5.0研究所所員 小森 理)

講演:松井 茂之氏
司会:小森 理 理工学部教授
会場の様子
質疑応答