社会発信




2025年度開催イベント
アフターレポート

成蹊大学Society 5.0研究所主催 第17回講演会(2025年8月9日開催)
「地球沸騰化時代に私たちにできること」


成蹊大学理工学部理工学科データ数理専攻 4年 小倉 諒平 

 

 今回参加した講演会では、地球温暖化を超えて「地球沸騰化」とも呼ばれる気候変動の深刻化に対し、2050年の脱炭素社会の実現に向けて私たちがどのような行動を取るべきかが語られました。二酸化炭素排出を大幅に削減し、再生可能エネルギーに基づいた社会をつくることは国際的な共通目標ですが、日本はその歩みが遅れており、意識や行動の転換が急務であると感じました。特に、講演で強調されていたのは再生可能エネルギーの導入状況、社会の変化のスピード、そして「断熱」という具体的なアクションでした。

 まず世界の現状について、ドイツでは再生可能エネルギーの比率が49.8%に達し、デンマークでは1995年から先進的な取り組みを始め、首都コペンハーゲンではほとんどのエネルギーを再生可能資源でまかなえる状況にあることが紹介されました。一方、日本は依然として化石燃料への依存度が高く、再生可能エネルギーの普及は進んでいません。その背景にはアメリカの影響があり、アメリカ自身が再生可能エネルギー自給率の低さに苦しんでいるため、日本も足並みを揃えてしまっている面があると指摘されました。国際的な比較を聞き、日本の遅れを改めて痛感しました。

 講演ではまた、社会の変化は想像以上に早いスピードで進むという話も印象に残りました。過去の歴史を振り返っても、技術革新や制度の導入は短期間で社会に浸透し、生活を大きく変えてきました。同様に、脱炭素社会への移行も思った以上に早く現実になるだろうと語られました。この視点は非常に示唆的であり、「日本には難しい」と諦めるのではなく、現実的な行動を一人ひとりが積み重ねていくことの大切さを考えさせられました。

 その具体的な行動として強調されたのが「断熱」です。断熱を徹底することで、冷暖房のエネルギー消費を抑えることができ、結果として温室効果ガス排出の削減に直結します。講演では、100円ショップで手に入る断熱シートを窓に貼るといった身近な工夫から、住宅の内窓リフォームのような大規模な改修まで幅広い事例が紹介されました。さらに、市の取り組みとして学校や公共施設に断熱材を導入する事例も取り上げられ、地域レベルの工夫が社会全体の省エネにつながることが強調されました。

 加えて、断熱性能を段階で評価する「断熱ラベル」の存在も紹介されました。すでにデンマークなど海外で導入されており、日本でも普及が進みつつあるとのことです。ラベルによって建物の断熱性能が「見える化」されることで、消費者が意識的に住環境を選び、社会全体の省エネを促す効果が期待できます。私はデータ数理を学ぶ立場として、このような定量的な評価指標に強い関心を持ちました。データによって断熱効果を数値化すれば、政策立案や補助金制度に活かすことができ、合理的に社会の行動を変えていけると思いました。

 このような話を聞きながら、私は自分自身の生活を振り返りました。夏になると西日が強く、どうしてもエアコンに頼りがちです。しかし、窓に断熱シートを貼るだけでも電力消費を抑えられるかもしれないと考えると、身近な工夫で社会に貢献できる可能性を実感しました。これまで気候変動問題を「大きすぎて自分一人では何もできない」と捉えていましたが、今回の講演を通して、家庭レベルの小さな行動が積み重なれば大きな変化になるという現実的な視点を得ることができました。

 最後に今回の学びを整理します。第一に、日本が国際的に大きく遅れていることを認識し、早急な対応が求められていることです。第二に、社会の変化は思った以上に早く訪れるため、先を見据えて今から備える必要があるということです。第三に、断熱のように身近で実現可能な取り組みがエネルギー問題の解決の入口となり得るということです。データ数理を学ぶ者として、これらの取り組みを数値やデータで裏付け、社会全体の行動を後押しする役割を果たしていきたいと感じました。

 「地球沸騰化時代」という厳しい現実に向き合う中で、2050年の脱炭素社会の実現は遠い未来の話ではなく、今すぐに行動を始めるべき課題です。私自身もまずは断熱という小さな工夫から生活を見直し、将来的にはデータの力を活用して社会全体の持続可能性に貢献できる人材になりたいと強く思いました。