社会発信




2022年度開催イベント
アフターレポート

成蹊大学Society 5.0研究所主催 第7回講演会(2022年12月17日開催)
「災害を減らすために使える技術はあるのか ~何のためのSociety 5.0~」


成蹊大学経済学部経済数理学科 3年 池内 泰輝 

 酒井慎一氏は「東日本大震災は想定以上の地震であった」と話していた。間隔をあけて宮城や福島県の近くでは大きい地震が起きていたが、群発的に発生する大きな地震を想定できていなかったという。正確な予知も難しく想定を超えるような地震の脅威に対して、私たちがすべきことはできることをやることであった。

 災害に対して私たちが出来ることは何だろうか。災害の影響や規模を予測し対策をすることが出来る。例えば、大規模な台風が発生し自分の地域に直撃が予測された場合、窓に段ボールを貼ることでガラスの破片の飛散を防止することが出来る。では、地震が起きた場合に私たちが出来ることは何だろうか。その前に、地震とは一体何なのか考え直してみたい。

 地震は地下の岩石に左右から力を加えられることで、変形しさらなる力を加えられることで変形しきれなくなり面上に切れて滑る。これが断層となり揺れるのである。もし、巨大な地震が今発生したらどうなるだろうか。勿論、揺れるだろう。しかし、揺れるだけではなく、建物が倒壊する可能性もある。建物が倒壊したら、自分の家が使えなくなったりライフラインが止まったりするだろう。このように、地震というのは揺れが起きることによって様々な物が壊れ、今まで利用できていたものが使えなくなっていくのである。物流やライフラインが動き出すまでには早くて三日、遅くて一か月となる。その間を耐えきれるような物資の貯蔵や近隣住民との助け合い、そして、マスメディアからではなく生きていくための情報を入手できるシステムを構築することが、私たちが地震に対して出来ることである。

 地震が起きて最も嫌なことは、普段と同じことが出来ないことである。普段、当たり前だと思っていることは、トイレやごみ処理、プライバシーである。建物が倒壊し避難生活を強いられた場合、地震発生から一週間はトイレを使うことが出来なくなる。また、避難所では仕切られているのが段ボールであったり、そもそも敷居が存在しない場所もあったりした。そのため、一日中プライバシーが存在しないこととなり、その精神的なストレスは計り知れないものになる。

 しかし、ここにもできることはあり、できることはやるべきなのである。できることとは、自宅避難である。自宅で避難生活を行うことが出来れば、プライバシーやトイレという問題に関しても対応ができる。自宅避難のために必要なことは「自宅が壊れない」「自宅が燃えない」「自宅で生活し続ける」ことである。「自宅で生活し続ける」に関しては、先ほど述べたように備蓄や情報網が大事である。「住宅が燃えない」というのも、燃えにくい建物や地域に住むことで解消される。「自宅が壊れない」というのに対して一定以上の疑問があるかもしれない。

 「自宅が壊れない」を実現するためには、土地の情報を調べ免震構造の家に住むことが必要である。場所によって揺れの違いが存在する。例えば、海の近くといった場所では地盤がしっかりしていないため大きな揺れを観測する。一方で、台地の様な地盤もしっかりしている場所でも一部分だけ他地域より大きく揺れる場合がある。それは、昔に作られた川や関東ローム層の影響によって揺れが大きくなっているのである。その地盤が実大実物振動台実験において、18階建ての鉄骨造に対して震度7の揺れを与えると、10回目に倒壊することが判明した。どんな建物も揺れを与え続ければいつかは崩れてしまうが、震度7クラスでも9回は耐えうる可能性はあるのだ。また、建築構造の中でも免震構造が最も揺れを小さくし家の中の「使えなくなる」という可能性を下げてくれるのだ。

 私は、本講演の中で最も興味深いと思ったことは、地震計である。講演の中で、酒井慎一氏が手掛けている地震計を手に取って紹介された。コンセントに差し込み設置することで地震が起きた時に、震度を測定し知ることが出来る代物である。自分が住んでいる地震情報と地震計の震度を照らし合わせることで、自分が揺れやすい地域、もしくは、揺れやすい建物に住んでいるのかどうかわかる。それだけではなく、揺れやすいということは建物が倒壊する可能性も含んでいるので、大地震が起きた際に避難するかどうかの指針ともなる。これによって、私は地震計の導入がさらなる地震対策に役立っていくのではないかと感じた。マスメディアの情報だけではなく、自分自身の自宅に地震計を設置していくことで、小さな地震からでも引っ越し等によって対策を行うことが出来、大地震が起きたとしても冷静に判断していくことが出来るのではないだろうか。