社会発信

2022年度開催イベント
アフターレポート

成蹊大学Society 5.0研究所主催 『未来法学』刊行記念シンポジウム(2022年11月26日開催)
「法学者の描く未来予想図――企業の活動・市民の生活」

成蹊大学大学院法学政治学研究科 法律学専攻 博士前期課程1年 山下 真由
 

 本シンポジウムでは多様な議論が行われた。そのなかでも、私は、女性の社会的立場は将来的にどう変革していく必要があるのか、どうあるべきかを考えた。私は、大学院進学を検討する際に、社会に出遅れてしまい、女性としての将来計画に困難が生じてしまうのではないかと不安があった。しかし、それよりも学びたいことを学べるときに学びたいという気持ちが強かったため、進学を決意した。このような自身の経験を踏まえながら、本アフターレポートで考えたところを述べてみたい。

 1つ目は、女性の労働市場での立場である。女性の社会進出の機会が増加し、キャリア形成をしていく一方で、結婚や子育てといった女性が主に直面するライフイベントと社会の認識のずれが生じている現状がある。ハラスメント、とりわけセクシャルハラスメントを受ける女性も少なくなく、会社、職場での人権問題を考え直す必要がある。その際に、湯原教授が述べられた、職場に法律相談が可能になる場を設けることを義務付けることは、従業員の人権を守る手段として示唆に富むと考えた。男女雇用機会均等法を含む各種労働法や会社法などを通して、各会社の労働に関するルールが充実したものになることが期待される。特に、女性は産休・育休をとると職場復帰が困難になり、転職やパートへの転換をしなければならない場合もある。そのためにも法整備をし、従業員と会社との間に良好な関係を築いていくべきだと考える。女性にとって労働がより選択肢が広く、活動の幅が広くなっていくことは、当事者にも社会にも重要であろう。

 2つ目は、社会におけるジェンダー問題についてである。高橋教授は、選択的夫婦別姓を法律で可能にすることは、すべての夫婦に別姓にすることを強制することとは異なると指摘された。夫婦別姓を必要としている人が、法整備されることで生活が豊かになるのであれば、夫婦別姓の法案が成立しても、それを必要としない人にとっては何ら問題はないはずである。変化の目まぐるしい現代社会では、離婚率の上昇や独り親世帯の増加なども見られることから、氏姓の変更の自由を拡大することは個人がプライバシーを自身で保護する手段にもなる。例えば、世間では離婚が負のものであるというイメージが残っているので、離婚によって氏姓を変更すると周囲からの視線が気になったり、多感な時期にある子どもが複雑な感情を持ったりすることも考えられる。「氏」という制度を、より柔軟で人格を尊重できるものであることが、目に見えにくい束縛から解放され、生きやすくなる人々も多くなるのではないかと考えた。

 法律は本来、「自分自身を守るもの」であるはずである。法整備や法改正で、自分自身を守ることができる人が増えることは、社会全体の豊かさにもつながる。それを実現するためには、国民が一人ひとり声を上げる必要もある。マイノリティの声は届きにくい現状ではあるが、マジョリティへの損害や不利益は発生しないことを直視し、上記に関連する法整備が進むことが切望される。勿論、立法機関内でも優先順位があるため、一筋縄ではいかないかもしれないが、数十年後の社会が我々にとってより豊かなものに発展していくためにも、法律は未来志向で変わっていくべきであろう。