学科・大学院

在学生・修了生メッセージ
【博士前期課程】

池田 章光
(英米文学専攻 博士前期課程 研究コース修了 私立中学高校教諭)

大学に入学する前から英語教員になりたいと思っていましたが、私は教育学部を選択しませんでした。それは、「英語」というものを、ただの指導の道具として身に着けるのではなく、文学、言語学、教育学といった多角的な視点で学びたいと思ったからです。学生時代に英語教授法を学ぶだけではなく、多くの文学作品に触れることが出来たために、帰国子女生の指導を行う際に、かつて読み親しんだ作品を課題図書として与えたり、自分の大学生時代のように生徒と一緒に作品についての解釈を議論したりすることも出来ています。大学3年次では、小野尚美教授のゼミを選択しました。小野教授のゼミでは第二言語習得論と英語教育学について学ぶことができ、英語を第二言語として指導する上での方法論や、その研究結果などを知ることができました。

その後、私は色々と悩みましたが大学院への進学を決めます。大学4年生の時に公立学校の教員採用試験や私立学校の採用試験を受けましたが、就職までたどり着けませんでした。今その当時を振り返って思うことは、圧倒的な実務経験と専門的知識が不足していました。特に私は進学校での勤務を希望していたために、周囲の志望者は軒並み大学院卒者か他校での勤務経験のある年長者でした。そこで現実を知り、気持ちを切り替えて、英語科非常勤講師として勤務しつつ、大学院にて研究をするという二足の草鞋を履く生活を始めました。大学生の時に学んだ指導方法を、統計的な分析を経て実用に足るものなのかを検討し、得られたデータを非常勤の勤務先で実践をする。そして得たフィードバックを大学院に持ち帰り、再び研究をするという日々でした。とても忙しかったですが、今まさに新しいデータが得られている喜びや、理論と実践の具体的な差などが如実に感じられ、とても充実していました。この生活が出来たのも、小野教授が「あなたは大学院へ進学する選択肢を視野に入れておきなさい。」とゼミの時に声がけをしてくださり、大学院生時代にも非常勤講師との両立を支援してくださったおかげです。大学院への進学は、決して夢の実現への遠回りではなかったと今では確信しています。あの生活があったからこそ、今の私はいるのです。

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八木橋 悠太
(日本文学専攻 博士前期課程 総合コース修了 私立中学高校専任講師)

大学院で過ごした二年間は、これまでの私の人生で一番充実していた二年間であったと断言できます。必要な知識を得るために大学図書館や国会図書館を奔走し、ゼミでの発表に挑み、時には遅くまで研究室で討論を続けた日々は、私にとって掛け替えのない日々でした。

一年目は単位の取得に励み、二年目は週十四時間非常勤講師として勤務しながら特定課題研究を書くことにしました。両立することは簡単なことではありませんでしたが、何度も躓きながらも特定課題研究を書き終えることができたのは、偏に文学を学ぶことが楽しかったからでした。毎回が真剣勝負なゼミ、驚きと発見に満ちた様々な授業と、大学院には学ぶことの面白さを味わえる環境が整っています。苦しみつつも楽しみながら特定課題研究を書き終えたという経験が今では自分の自信になり、その後の生活の様々な場面で背中を押してくれています。

研究コースでも二年目から非常勤講師として働くことは不可能ではありませんが、一年目に多くの単位を取得しておけば二年目は比較的時間を取れる総合コースは、教員志望の人にとってはメリットの多いコースだと思います。

現在は私立の中高一貫校で専任講師として働いています。生徒たちにも知識を押し付けるのではなく、私が大学院在学中に体感させてもらった「文学の面白さ・学ぶことの面白さ」を味わわせたいと思っています。

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市地 英
(日本文学専攻 博士前期課程 研究コース修了 大学助教)

同じ日本語のはずなのに、何故読めないのか?日本古来のくずし字・変体仮名といった独特な表記に、首を傾げる人は多いかと思います。私もその一人で、些細な疑問を明らかにしたいと思い、成蹊の大学院に進学しました。研究テーマは江戸時代の文学作品における変体仮名の使い方。多くの和本が出版された当時、流行した曲亭馬琴の著作にどう変体仮名が書かれていたのか、研究しました。

大学院での生活は、充実していました。授業では和本など古い資料に触れる機会が多く、様々な表記を観察でき、調査対象だけにとらわれない目が養えました。欅賞に論文を応募し、優秀作に選んで頂けた時は嬉しかった一方、成蹊國文に掲載するために何度も書き直すことになり、自分のツメの甘さに向き合いました。指導教授から研究論文に必要な厳密さを学べたことが、最も大きな収穫だったといえます。文学研究科の環境があったからこそ、これらの経験が得られ、最初の疑問から修士論文に辿り着けました。

大学院で、何か明らかにできたのか?実のところ、自分が明らかにできたことなどホンの少しだけだと思い知りました。研究は底なし沼です。今もそれは変わりありません。現在は大阪大学の助教として研究室運営と授業に奔走しながら、江戸時代の変体仮名について識字という観点から研究を進めています。研究成果によって広く日本語史学やそれを学ぶ人たちへ貢献できるように、研究・勉強を重ねています。

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中田 友香
(社会文化論専攻 博士前期課程 総合コース修了)

私は成蹊大学経済学部から文学研究科社会文化論専攻へ進学しました。学部時代に、留学生のホームステイ受け入れ、国際交流会館への入居、ドイツのボン大学への交換留学をとおし、「社会」「文化」「言語」により興味を持つようになったからです。

大学院の授業は少人数で、自分の意見を発言する機会が多く、幅広い視野で多角的に考える力や柔軟性が身につきました。修士論文の執筆には不安もありましたが、日々の授業で論文執筆に役立つスキルや考え方も習得できました。特に「欧米文化研究」で「文化」という言葉の定義を検討した際は、書き手の意図を読み手に正しく伝えるために、言葉の定義がいかに大切であるかを知りました。ここでの学びは、現在の社会人としてのスキルにもつながっています。放課後には友達と研究室で互いの研究テーマなどについて話しあい、とても良い刺激になりました。

修士論文は、学部時代から教職課程を履修する中で関心をもった「環境教育—ハイデルベルクの事例–」というテーマで執筆しました。資料集めもかね、ドイツのハイデルベルク大学に交換留学もしました。調査対象となる市内の学校を探し出し、インタビューにつなげるまで苦労しましたが、有意義な留学となりました。現地では国際シンポジウムのお手伝いをする機会にも恵まれ、非常に良い経験になりました。

卒業後は教育に関わる仕事、ドイツ語を使う仕事の両方に挑戦してきました。まず語学や国際交流の経験を生かし、外務省派遣員としてドイツの日本総領事館で勤務しました。その後、国立大学の国際課や私立大学の入試課の職員を経て、ドイツ系法律特許事務所にドイツ人コンサルタントの秘書として入社しました。現在は、秘書業務、翻訳、総務など幅広く担当しています。

成蹊大学は、私にとってかけがえのない学びの場です。やりたいことを全力でサポートしてくださった先生方及び職員の皆様に心から御礼申し上げます。

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舛谷 沙織
(社会文化論専攻 博士前期課程 研究コース修了 大学職員)

私は成蹊大学で「グローバル視野を身に付ける」「学術的な鋭い視点を持つ」という二つの目標を達成することができました。学部時代には、留学制度や国際交流活動に参加、留学生アドバイザーとして国際交流会館1年間入居、その後1年間豪州交換留学をしました。これらの経験を通じて、国際的視野を身に付け、積極的に挑戦するチャレンジ精神が鍛えられました。また様々な人々と関わる中で、相手を思いやる気持ちや柔軟性を身に付けることができたと思っています。

もっと専門的な研究活動をしたいと考え大学院進学を決意。調査研究のためにさらに1年間大学院留学をしました。世界中の研究者とのコミュニケーションを通じ、国際的視点を身に付け、学術ネットワークが形成できたことは今でも私の財産です。また研究者として、積極的にシンポジウムやフォーラムに参加できたことも、大変有意義でした。このような研究活動や学術ネットワークをさらに発展させるためにも、研究者を支える立場として活躍したいと思い、現在東京大学へ勤めています。成蹊の大学院は卒業しても帰りたくなる場所、緑に囲まれた穏やかで親しみやすい環境です。心温かい人々に支えられてこそ、自らの可能性を求めてチャレンジし続けることができるのだと私は思います。

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