学科・大学院

日本語学・日本文学を
学ぶ人のために

たいていの大学の文学部には、日本文学科と呼ばれる学科があります。これは、日本の言葉やそれによって創られた文学、文化とはどんなものなのかを考える学科です。しかし、一口に日本の言葉といっても、長い歴史のなかでは大きな相違や変化が生じてきています。たとえば、「うつくし」という古語をとりあげましょう。「美しい」と表記して美的な意味を表す現代語とは異なり、この語が盛んに用いられるようになった平安時代にはかわいいと思って情愛をそそぎたくなるような気持を表す言葉でした。言葉の変化の背後には、私たちの発想や価値観などのダイナミックな展開があります。7世紀末ごろから記載されはじめて今日に及んでいる日本文学の長い歴史は、豊かで多様な文学の形態を生み出してきました。神話や説話のような伝承的な文学、和歌や漢詩や俳句や近代詩のような韻文文学、物語・小説や随筆・評論のような散文文学、あるいは能・狂言や歌舞伎・近代劇のような演劇文学などとじつに多岐にわたっています。

通常、日本文学科は、研究分野がそのように多岐にわたるところから、日本語学(国語学)では歴史的研究、現代語研究、文学研究では上代文学(奈良時代まで)、中古文学(平安時代)、中世文学(鎌倉・室町時代)、近世文学(江戸時代)、近代・現代文学(明治以後)と、ほぼ時代ごとに区分した専門分野から構成されます。成蹊大学の場合、その全領域に、それぞれの学界の第一線で活躍する先生方がいて、やがて特定のテーマの卒業論文を書こうとする皆さんを待ち受けています。 1年生で入ってきた皆さんが、それぞれの学年で何をどのように学ぶか、というイメージは、「4年間の学習」のページに詳しく書かれていますが、まずは外国語その他の一般教養科目をも学びながら、日本語日本文学の基礎的な学び方を身につけ、やがてその領域の巨大な全体像をながめわたすことになります。そして、そのなかで最も関心のひかれた問題に、こんどは自分自身の力で立ち入り、問題の解明にあたるのです。卒業論文とは、大学4年間をどう過ごしたのかの青春の日々の証であるといってもよいでしょう。どんなすばらしい成果が得られるか、さあ、挑戦を始めましょう。

ここで、ひとつクイズをためしてください。次の(1)~(6)は、どんな時代のどんな人の歌かわかりますか。歌人の名前はともかく、時代別に並びかえてみましょう。8世紀の昔から現代にいたるまでの歌です。

  • (1)
    しきしまのやまと心を人問はば朝日ににほふ山桜花
  • (2)
    見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮
  • (3)
    一粒の向日葵(ひまわり)の種まきしのみに荒地をわれの処女地と呼びき
  • (4)
    うらうらに照れる春日に雲雀(ひばり)あがり心かなしも独りし思へば
  • (5)
    あかあかと一本の道通りたりたまきはる我が命なりけり
  • (6)
    花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに

日本の言葉と文学の長い歴史は、このようにすばらしい歌々をもはぐくんできたのです。桜が咲き、雲雀が鳴き、雨がふり、荒野さえ広がる中に、私の命は生きる。その世界の豊かさは、悠久の時をたたえる森にたとえてもよいでしょう。 日本も世界も、私たちの日常も、これから大きく変わるかもしれません。どんな時代がやってくるとしても、私たちには確かに、こんな豊かな世界があるということを、学んで欲しい。それが日本語学・日本文学を学ぶ皆さんへの願いです。

クイズの答えと説明を確認する

(4)(6)(2)(1)(5)(3)が正解。

参考までに、
(1)は江戸時代の本居宣長
(2)は鎌倉時代の藤原定家
(3)は現代の寺山修司
(4)は奈良時代の大伴家持
(5)は大正時代の斎藤茂吉
(6)は平安時代の小野小町

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