卒業生インタビュー|JICA(独立行政法人国際協力機構)職員 小林千晃さん

今回私たちは、成蹊大学のご卒業生であり、現在JICA(独立行政法人国際協力機構)の職員としてご活躍されている小林千晃さんにインタビューする機会をいただきました。
小林さんは現在モザンビークに駐在していらっしゃいますが、10月22日(土)に開催された朝日教育会議2022にご出演のため、一時帰国されていました。

※朝日教育会議2022とは、朝日新聞社と8の大学が開催する連続フォーラムで、各大学が社会課題解決につながるテーマについて考えていく場です。成蹊大学は「地球規模の思考力を育む~サステナビリティを推進するグローバル人材の育成」をテーマに開催しました。
当日の様子はコチラからご覧いただけます。


インタビュー

小林さんはとても気さくな方で私たちも楽しくインタビューさせていただきました。学生の皆さんに有益なお話をたくさんお聞きしましたので、最後までぜひご覧ください!

――文学部国際文化学科ご卒業とのことですが、当時、どのようなことを意識して学習していらっしゃいましたか。

高校生のときにチリに1年間留学をしたことで、もっと世界を見てみたいという気持ちが強くなり、そこから大学で南米の研究をしてみたいと思うようになりました。大学では、自分の興味があることについて教授に質問したり仲間ととことん議論したりするなどして突き詰めるということを意識して行っていました。何もしなければそのまま4年間が終わってしまうので、自分で何かやらないと大学生活において何も残らない、と思ったんです。

――そのような学生時代にどのような活動からJICAへの入構を志すようになられたのでしょうか。

世界の貧困国に対し、かわいそうだと思うだけではなく一歩踏み出して「この国に何ができるか」を考えていました。しかし個人でできることは限られているので、組織の力が必要であると思い、JICAへの入構を決めました。

※撮影時のみマスクを外しています

――JICAでの活動のなかでどんなことを意識されているのでしょうか。

国によって労働環境や文化が違うなか、その国の人々を問題解決に導いていくために自分はどのような対応をしていくべきなのかを、常に考えています。

――1番印象に残っていることはどんなことでしょうか。

アフリカでの人々の生活についてです。電気も水もなく、まるで弥生時代のような生活が営まれている場所があることを知り、貧富の差をこれまでの経験の中で一番強く感じました。このように実際に「体感」するということが重要であると考えています。インターネットの情報だけではこのような貧富の差などは想像ができないと思います。想像ができないと理解も深まりません。

――最近はインターネットの発展によって、世界の実情を知ることが以前よりさらに容易になりましたが、生活についての細かな部分は現地で活動したからこそ体感できるものなのですね。コロナ禍でJICAの活動が以前と変わった部分はあるでしょうか。

あります。世界中のどの場所とでもオンラインで繋がれるようになったことです。一方、人とのフィジカルなコミュニケーションが減ってしまったということもあります。そのため、画面を通して見られる表情だけではわからない感情がうまく伝わらなくなってしまいました。

――やはりオンライン上のコミュニケーションだけでは難しい部分もあったのですね。では、現地の人とコミュニケーションを取るうえで、言語の問題はどのように解決されたのですか。

正直、言語自体はそこまで問題ではなくて、その地域の言語を知らなくても慣れてしまえば自然と語学力は向上するんです。大事なのは言語力よりも相手に分かりやすく伝える力、コミュニケーション能力だなと、この仕事をしていて思います。

JICAが建設したモザンビーク首都マプトに所在する魚市場にて

――私たちも、海外の方にまずは勇気を出して話しかけてみることから始めたいと思います!現在はどのような活動をされているのですか。

端的に言うと、「日本のお金と技術を開発途上国に向けて動かす仕事」をしています。JICAからモザンビークへの支援総額は、年100億円を超えます。この予算を使ってどのような支援を行っていくかについて考える、いわゆるファンドマネージャーですね。モザンビークからは年間100件ぐらい支援の依頼が来るんですけど、その一つひとつの依頼がその国の開発や人々の生活向上にどれだけ貢献できるかどうか、例えば電気の普及率が上がるかとか、給水率が上がるかとか、そこを考えるのが大事になってきますね。

――JICAというと発展途上国で実際にインフラ設備を整える仕事を強くイメージしますが、そのような活動の裏にはこのようなお仕事もあるのですね。今私たちに求められている持続可能な社会を作るための取り組みとして、JICAではどのような活動を行っているのでしょうか。

モザンビークは今、ガスの利益をめぐって現地のテロ組織が紛争をしている状態なんです。テロ自体を減少させ、天然ガスの輸出を円滑に進めていくために、テロの大きな原因である貧困や教育の問題を解決するというのも今の私の仕事のうちの一つです。このような活動を重ねて、国と国との繋がりを安定的にしていくというのが、SDGsの目的の一つなんじゃないかなと思いますね。

JICAがインフラの近代化を支援中のモザンビーク北部最大の港湾ナカラ港にて
背景には導入した日本製の港湾用クレーン

――最後に、私たち学生に向けてメッセージをお願いいたします。

国際ビジネスの業界に興味を持っていただきたいなと考えています。国際協力業界で働いている日本人職員って大体2万人から2万5000人いるんですけど、実はその中で成蹊大学出身の職員はほとんどいないんです!ぜひ学生の皆さんには、世界を知る一歩を踏み出すためにも、自分が今まで見たことのない物事を見るきっかけを作ってみてほしいと思います。

取材をしての感想

・今回のインタビューでは私たちが今まで知らなかった国際関係のお仕事の側面をたくさん知ることができました。小林さんのお話を聞く前は、世界を飛び回る仕事って大変そうだなとか、発展途上国は治安が悪そうで怖いなという偏見先や先入観を抱いていました。「怖い」という感情は、そのものに対して知識がなく未経験だから湧いてくるものだということをどこかで聞いたことがあります。まずはそのような偏見や先入観をなくしてみることから始めようと思いました。(文学部3年 石橋)

・普段の授業だけでは教わることができないお話までたくさんお聞きすることができました。インタビューで質問させていただいた以上のことを教えていただきました。しかし多くのことを学ばせていただいた分、私自身国際文化学科の学生であるのに、まだまだ何も知らないのだなと感じました。残りの学生生活において、自分自身学びの姿勢を変え、世界を知ることができるようにします。(文学部2年 丸山)

・JICAは普段生活している中ではあまり知ることのできない活動で、今回インタビューの機会をいただけて嬉しかったです。小林さんは難しい内容についても私たちの身近な問題に例えて話をしてくださったので、より理解を深めることができました。成蹊大学を卒業された先輩の世界でのご活躍を知り、私もこれから見聞を深めていきたいです。(経営学部1年 泉)

おわりに

※撮影時のみマスクを外しています

今回は成蹊大学の卒業生で、現在JICAでご活躍されている小林千晃さんに大変貴重なお話を伺いました。
記事を読んでJICAを初めて知った、また、今までよりもJICAのことを知ることができた、という人は多いのではないのでしょうか。

JICAの活動や発展途上国への支援活動などに興味を持った方は、さらに詳しく調べてみたり、国際ビジネスの業界を就職先の候補のひとつとして考えてみたりしてはいかがでしょうか?

担当/石橋・丸山・泉