新設・国際共創学部はどんな学部?
成蹊大学では2026年4月より新たに「国際共創学部」が設立されます。
時代の変化とともに、社会が求める人材像も大きく変わりつつある現代で、専門性と実践力を兼ね備えた人材の育成をめざすこの学部は、どのような理念のもとに生まれ、何を学生たちに求めているのでしょうか。
今回は学長、そして新学部の立ち上げに携わる教員方にお話を伺い、その想いや学部の特色、今後の展望について深掘りしました。
(左から、バラニャク平田専任講師、森学長、藤原教授、平山教授)
学長へのインタビュー
まずは学長にお話を伺いました。
Q.新学部を設置することになった経緯について教えてください。
A.2022年に学長に就任した際、方針としてグローバル化の推進を掲げ、その方針を実現するために思い切って新しい国際系の学部を作ろうということになりました。
新しさは日本文化の発信と環境サステナビリティです。これらをグローバルと組み合わせることで大学としての可能性が広がると考えました。国際日本学専攻は文系的、環境サステナビリティ学専攻は理系的で、このような文理両面の性質を併せ持った学部はこれまでの成蹊大学にはありませんでした。
また、成蹊学園は社会への貢献や社会をどう持続させていくか、あるいは現場を見て学ぶ姿勢を大切にしてきました。そのため、これまでの成蹊の教育とも結びつく成蹊らしさのある学部になるであろうと考え、設置することになりました。
Q.新学部に対する思いを教えてください。
A.新たな学問分野ということでチャレンジングな学部です。社会にどう貢献するかを大切にする成蹊らしさを残しながらも、チャレンジしたいという思いを持った活力のある学部として頑張ってほしいです。
もちろん既存学部にも思い入れがありますが、新学部の設置は私が学長に就任してから決定し、設置に向け努力してきたので成功してほしいと思っています。
Q.新学部の魅力、強みを教えてください。
A.フィールドワークを重視した講義があります。座学だけではなく、実社会や現場に出ることで得られるものを自分の学びに生かしてほしいです。
また、国際日本文化学専攻に入ったとしてもデータサイエンスなどをしっかり学ぶことができ、環境サステナビリティ学専攻に入った場合でも文化への知見を深めることができます。そのため、文理の枠を超えた二刀流の強みを身につけられると思います。
さらに、留学生を多く迎える予定なので、同じ講義を受けながら4年間を共に過ごすことで、国際感覚が養われる点も大きな魅力です。
Q.新学部を設置するにあたってどのような苦労がありましたか。
A.一番大変だったことは学部を作るにあたって国の規制があることです。文部科学省から認めてもらうために、多くの条件を満たす必要がありました。何年にも渡って準備を重ね、様々な条件を一つずつクリアして、ようやく認めてもらうことができました。
Q.新学部が成蹊大学にとってどのような学部になることを期待しますか。
A.まず、新しい学問領域を学んでもらうことや様々な学生が入学することで成蹊大学に新しさをもたらしてほしいということです。
そして、既存の学部と国際共創学部がシナジー効果を生み出し、お互いに高め合っていく存在になることも期待しています。
国際共創学部の先生方へのインタビュー
国際共創学部の3人の先生にお話を伺いました。
先生方は皆さん新学部設立にあたってとても情熱を持っていらっしゃり、来年から成蹊大学に新しい風が吹く予感がしました。
先生方のプロフィール
藤原均教授:研究分野は宇宙天気、地球・惑星超高層物理学、宇宙環境、宇宙科学、熱圏・電離圏、オーロラ科学。
平山美樹子教授:2002年から2024年までアメリカのシンシナティ大学にて教鞭を執る。研究分野は日本近代美術史。
バラニャク平田ズザンナ専任講師:日本のポップカルチャーとジェンダーを専門に、ファン研究を通して日本の現代文化の多様な側面を探求。研究分野は文化人類学、ファン研究、ジェンダー論、空間論。
Q.成蹊大学に着任されることになった経緯や理由を教えてください。
A.(平山先生)経緯は2つあります。1つ目は、アメリカに30年居て、そのうち23年ほどアメリカの大学で教員をしていました。大学での講義型の授業に限界を感じていた際に、国際共創学部の公募を偶然見かけ、学生と先生が一体となる「共創」という言葉に共感して応募をしました。2つ目は、専門分野である日本近代美術の研究資料の多くが日本にあり、研究対象に近い場所に身を置きたいと思っていました。そして、日本の学生に自国の美術を教えてみたいという思いがあって、成蹊大学に着任しました。
(バラニャク平田先生)子供の頃から日本のポップカルチャーに関心があり、イギリスの大学で日本研究学を専攻しましたが、日本文化について日本で学び続けたいと決意し、日本の大学院に進学しました。そこで、宝塚歌劇団のような日本のファン文化とポップカルチャーについてジェンダー視点で研究してきました。来日してからもう15年経っていますが、日本の大学で講師をするようになってからは、英語と日本語両方を生かして国内外の視点で日本の学生に日本文化について考えさせることに意義を感じます。このような経緯で成蹊大学に着任しました。
Q.新学部設立にあたっての思いを聞かせてください。
A.(藤原先生)私は新しいものをスタートすることが好きです。研究では、その道のど真ん中を行く人がいると思うのですが、それはそれで大切なことですが、実は様々な分野の境界領域にもすごく面白いこと(宝の山)がいっぱいあります。私自身もずっと気象学と宇宙科学の境界領域を研究してきました。新設する学部でも文理の境界にある面白いテーマを狙っていきたいと思っています。今まであった学部と学部の間にあるような「宝の山」を掘り当てるような研究や教育をやっていきたいと考えています。
(平山先生)「共創」という言葉に魅力を感じています。国際共創学部がある大学は少なく、学生と共に知を創りたいと思っています。そして、国際共創学部の特徴は学際性、文理複眼です。私の専門である美術史は本質的に学際的な学問で、絵のことだけでなく政治や宗教や文学のことも知っておかなくてはなりません。このような国際的な学際性と私の専門分野の親和性が高いと思うので、この新しい学部で何か自分が貢献できることがあるのではと思っています。
(バラニャク平田先生)文理両方の複眼的視点を持った学びをする学部は非常に重要だと思っています。これからの社会では学際的な視点で課題に直面するのが必要だと思っていて、グローバル化する世界では今こそ様々な分野と協力することで、新たな知見を発見できると思っています。私自身の研究でも様々な学問分野から多角的に探る必要があり、学際的な知見がないと一方的な研究になってしまいます。このようなことを踏まえ、学生にも学際的な視野を身につけて欲しいと思っています。
Q.どのような授業スタイルを考えていますか?
A.(平山先生)私の専門である美術史の授業では、できるだけ機会を作って学生を美術館や博物館に連れて行きたいと考えています。また、その他の授業では、常に教壇に立って行うのではなく、学生の目を見て対話しながら教えたいと思っています。対話しながら学びを身につけて欲しいからです。そして、学生にはグループワークやディスカッションでぜひ積極的に発言して欲しいと考えています。たとえ間違えたことを言ったとしても、間違うことから始まる学びもあるので、恐れずに発言してもらいたいです。
(バラニャク平田先生)フィールドワークを取り入れる授業があります。例えば、新学部でファンツーリズムについて教える「スペシャルセミナー」を想像した今年度のEAGLEの授業では、「聖地巡礼」を学ぶために学生を秋葉原に連れて行ったことがあります。授業で学んだ理論を実際に現地に行って、自分の目で様々なものを発見して観察力を身につけ、観光客にインタビューを行った学生もいました。フィールドワークの体験を通して、教室で学んだことを実践的に検証し、集めた情報はどのように分析できるのかなどといった分析力を実践的に身につけます。また、フィールドワークに行かない講義型の授業でも、全ての講義に必ずディスカッションの時間を取り入れ、学生自からの意見を聞かせ、身近な経験で理論を考えさせる機会を頻繁にあげます。学生には受動的に知識を身につけるだけでなく、その知識を身近な例に当てはめてみて能動的に学んで欲しいと強く願っています。
Q.先生方の授業内容について教えてください。
A.(バラニャク平田先生)英語の授業では、身近な文化について比較などをして、再度考えてもらいたいです。例えば、マンガの歴史的発展の経緯について学び、当たり前だと捉えていた「日本マンガとは実際何か、どのように表現しているのか」などを自分の言葉で説明できるようになります。楽しい身近なテーマを英語で一緒に学んで、発言力を身につけてもらいたいです。日本語の授業では、現代文化論という文化学の基礎科目や、日本文化とメディアとの関係を探る選択科目、ジブリのアニメ映画に焦点を当てる日本の映像文化の特性について学ぶ科目もあります。
(平山先生)日本映画で見る日本人の一生を、英語字幕で学んでもらう授業を考えています。日本人の学生には、これは英語ではこのように表現するのか、ということや、日本人の価値観は映画でどのように描かれるのか、を学んでもらいたいと考えています。
また、現代社会とアートという授業では、戦争画をテーマにしようと考えています。戦争画が描かれた背景や、絵画に対する当時の批評を学生に読んでもらい、戦後どのように戦争画が扱われたかについて学んでもらいます。そして、博物館で展示されている戦争画やその資料を、学生に実際に足を運んで見に行ってもらって、展示がどのように扱われているかを見学してもらおうと考えています。
Q.新たに2つの専攻が加わって、副専攻はどのようになりますか?
A.(藤原先生)今ある副専攻で受講できる科目に、新たに国際共創学部の科目が追加され、副専攻を取得する際に選択肢が増えることになると思います。国際共創学部の学生にとっても、他学部の授業を受けて学んでもらうことは有効なのではないかと思っています。
Q.他学部の学生が履修できる授業はありますか?
A.(藤原先生)新学部設立にあたって、英語で学ぶ授業を大幅に増やすことが予定されています。大学全体でも英語で学ぶ授業の履修機会が増えると思います。
他にも、全学共通科目(成蹊教養カリキュラム科目)の文化や環境に関わる授業が、より一層充実したものになると思います。
Q.学生に留学や英語学習について何か期待しているものはありますか?
A.(藤原先生)上手く留学の機会を活用してもらいたいと考えています。現在は情報がたくさん溢れていて、留学に対するハードルも低くなっていると思います。
海外に行かないと分からないことがあるので、短い期間でも良いのでぜひ留学に行ってもらいたいと思っています。
(平山先生)留学に行った学生は、行く前とは表情が全然違います。皆「留学に行って良かった」と言います。海外旅行はいつでもできますが、若いうちに海外に行っておいた方が視野が広がって、日本を相対的に見る目が身に着けられますので、機会があるならばぜひ留学に行って欲しいです。
(バラニャク平田先生)違う国の文化を実際に味わうために、ぜひ留学に挑戦してみて欲しいです。短期間でも、海外旅行とは全く違う経験を留学だからこそ得ることができます。大変な思いもあるかもしれないが、留学をして後悔をしている学生にまだ1人も会ったことがありません。良い経験になると思います。
Q.英語で日本を学ぶことをどのように考えていますか?
A.(平山先生)日本人として日本のことを考えていると、なんとなく分かっている事はたくさんあると思います。ですが英語で日本のことを考えると、言語化など考えることがたくさんあり、自分に問いかけてたくさん頭を使います。そして、違う視点から日本文化を考えるきっかけになります。
また、日本人の学生と留学生が同じ教室で学ぶことは、お互いに学び合うことが多いと思います。だから、英語で日本のことを学ぶのは学生にとって、自分自身への挑戦にもなるので、ぜひチャレンジしてもらいたいです。
(バラニャク平田先生)自国の文化のことは、当たり前すぎて深く考えることが少ないので、説明しようと思った時に難しいと感じることが多いです。例えば、日本のアニメの特徴は何かと聞かれてもその場で断定することはなかなか答えづらいです。ですが、英語で日本文化のことを学ぶと理解が深まると同時に、新鮮な視点で考えることができます。身近な現象を説明し、言語化することによって日本文化について新しい気づき、深い洞察を得ることができますし、英語で日本を学ぶことを通して、身近な「当たり前」を問い直す良いきっかけにもなります。
Q.新学部で学んだ学生にどのようになってもらいたいですか?
A.(藤原先生)学生それぞれが得意なことを活かして、さらには複眼思考なども身につけて卒業していくと思います。ここでの学修成果が私の想定を超えてくれることを期待しています。サステナビリティと文化をともに理解している人は、今後ますます必要とされるでしょう。企業や国・地方自治体、国際機関などで活躍できる人になって欲しいと思っています。
最後に
最後に国際共創学部に興味を持っている高校生の皆さんへメッセージを頂きました!
森学長
とても生き生きとした学部になると思います。1期生としてぜひ入学してほしいです。
藤原先生
2026年度の新入生は、100年の歴史がある成蹊学園で学部の1期生になれるという特別な存在です。卒業して10年、20年後に卒業生だと誇れる学部を我々と一緒につくっていこうというフロンティアスピリットを持った人に是非来てほしいと思っています。
平山先生
この学部で少人数教育に身を置き、これからの国際社会で大切になる日本人としてのアイデンティティを身につけ、日本や世界に貢献できる人になってほしいです。
バラニャク平田先生
文理複合の学部だからこそ、色々な可能性が広がっています。
自分にチャレンジしたい、深い思考を身につけたいと思っている人を待っています!
ご紹介した国際共創学部は英語を活用した講義やフィールドワークを通して文系、理系の枠を超えた学びを実現し、社会課題に挑むための思考を育める学部です。
この記事を読んで国際共創学部、そして成蹊大学に関心を寄せてくれた高校生の皆さんが成蹊大学に入学し、一緒に学べる日がとても楽しみです!
国際共創学部について詳しく知りたい方は公式サイトをご確認ください!
国際共創学部 公式サイト
また、学生広報委員会の活動について知りたいと考えている方はこちらのリンクからどうぞ!
X(旧Twitter):@officialzelkova
Instagram:official_zelkova
担当/田島・松尾
撮影/新名・入澤