■主催
成蹊大学Society 5.0研究所
■開催日
2025年10月11日(土)
■時間
9:00~11:00
■会場
成蹊学園本館大講堂 及びオンラインLIVE配信(Zoomウェビナー)
■参加者数
296名(対面参加131名、オンライン参加165名)
■主催者代表
小森 理(成蹊大学Society 5.0研究所所長)
2025年10月11日(土)に、京都大学大学院理学研究科の齊藤昭則氏と宇宙航空研究開発機構(JAXA宇宙飛行士)の諏訪理氏をお迎えし、成蹊大学Society 5.0研究所開設5周年記念講演会を実施致しました。齊藤先生は宇宙惑星科学の御専門で、2012年のISS-IMAPミッションでは代表研究者を務められました。また諏訪宇宙飛行士はプリンストン大学で気候科学の学位を取得され、国際協力機構青年海外協力隊、世界気象機関、世界銀行で国際協力・開発に従事された経歴をお持ちです。それぞれ「上空100キロメートルの向こう側:地球と宇宙の境目の科学」、「Society 5.0と宇宙:未来を切り拓く技術と人類の挑戦」という題目で御講演して頂きました。
齊藤先生の御講演では地球と宇宙のはざまで起こる様々な現象を、映像や写真を交えてわかりやすくご説明して頂きました。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」に設置された観測装置により、オーロラや地表近くの雲以外にも、大気が光る様子(大気光)や電離圏にあるプラズマが太陽光を散乱した光(プラズマ共鳴散乱光)も鮮やかに観測されていました。この大気光の撮影により超高層大気が海のように波打つ現象(大気重力波)の分布の様子も捉えることができるとのことでした。また通信の障害の要因となるスポラディックE層の予測(宇宙天気予報)が宇宙開発においてますます重要性を増してきており、齊藤先生の研究チームでは今年の7月にもスポラディックE層の形成過程の解明のために新たな観測ロケットを打ち上げられ、今後データ解析を進めるとのことでした。
2つの目の諏訪宇宙飛行士の御講演では、宇宙開発がSociety5.0において担う役割の1つとしてインフラ基盤の整備を挙げられていました。世界銀行で担当されていた西アフリカの食糧安全保障のプロジェクトを例に、そこで問題になっていた様々な情報の収集と維持管理に衛星を活用することで、宇宙開発が国際開発にも大きく貢献できる可能性を示唆されていました。また「昨日のコーヒーは今日のコーヒー」に象徴されるように宇宙空間での生活は限られた資源を最大限活用する必要があり、今日注目されている持続可能な社会を推進するうえで必要不可欠な技術が宇宙開発の現場で正に蓄積されているとのことでした。後半では宇宙飛行士の訓練の話があり、イタリアの洞窟での訓練や航空会社の支援のもとで実施されたCRM(Crew Resource Management)訓練のお話をされ、閉鎖的な空間で、かつストレスの多い過酷な状況下で、いかに正しく状況を認識し、周りとコミュニケーションをとり、個々人がリーダーシップを発揮し直面している問題を解決するか、宇宙飛行士にとって欠かせない能力についてご説明して頂きました。そして御講演の最後には今後の宇宙開発の将来像についても御説明して頂きました。
御講演後にもたくさんの質疑が会場とオンラインからあり、非常に盛況のうちに講演会を終えることができました。御講演して頂いた齊藤氏、諏訪氏、後援にてサポートして頂いた武蔵野市教育委員会の皆様、そして当日御参加してくださった地域住民の方々、学生、成蹊学園の教職員の皆様に改めて厚く御礼申し上げます。
(成蹊大学Society 5.0研究所所長 小森 理)
(米国ヒューストンからオンライン出演)
(米国ヒューストンからオンライン出演)