成蹊学園インフォメーション

日本経済新聞シリーズ企画 教育鼎談 第5回 100年の伝統を礎に新世紀へ—— 成蹊中学校・高等学校のグローバル人材育成

跡部 清
:成蹊中学・高等学校長
黒川 清
:成蹊学園アドバイザリーボード・政策研究大学院大学客員教授
池上 敦子
:成蹊学園常務理事・国際化担当

跡部 清 氏

“主体的に学ぶ”教育により、世界で輝く「心の力」を育む

池上
今日は、成蹊ご出身で国際的にご活躍されている黒川先生、同じく成蹊ご出身で成蹊中学校・高等学校の跡部校長に、「グローバル人材の育成」についてお話を伺いたいと思います。跡部先生はこの4月に新しく校長に就任されました。個性と自発的な問題解決力に重きを置いて、世界に目を向けた教育を実践してきた成蹊中学校・高等学校への周囲からの期待は大きいと思いますが、お感じになっていることや抱負などをお聞かせください。
跡部
まずは教育自体が目を見張るような変化の中にあると認識しています。ITの進展により、どこにいても学ぼうとする気持ちさえあれば学べる時代になりました。国内でも知識習得量を測る試験から、体験をベースに生み出される思考力・判断力・表現力・主体性などを重視する試験に変えていく方向性が示されています。しかし、成蹊はもともと創立者の中村春二先生が知識偏重の教育を憂い、個性尊重の人格教育を実践するために創った学校であり、現在の教育の流れに対応する土壌があります。人格面や学問的追求などバランスのとれた教育をしている自負もあります。今後生徒たちが間違いなくグローバル社会へ出て行く中、世界を舞台に幅広い分野で活躍できるよう、より強くサポートしていきたいと考えています。
黒川
おっしゃるように、教育を取り巻く環境も含め、まさに今日本は岐路に立っています。これからの社会をどうしていくか、教育をどうしていくか。問題は、芯となる思想や理念があるかどうかではないでしょうか。日本は形式的な仕組みを真似することは上手いのですが、そこに宿る精神的な背骨、言い換えれば哲学が欠如してしまっているように思います。諸外国に見られるように、しっかりと精神が宿る仕組みや制度には運用面でも長年の深い知恵が隠れています。流行に合わせた“テクニカル”な対応ではなく、“物事の本質”を捉えたものでなければ、世界では通用しないことは明らかです。

「世界で生きる力」育てる

池上
そのような現状の中、私立学校として成蹊の進むべき道はどのようなものでしょうか。
黒川
私は、“Back to Basics”、つまり建学の精神に立ち返ること、そして伝統に裏打ちされた特色、強みを伸ばすことが重要だと考えます。成蹊に限らず多くの私学の創立者は、激変する時代の中で人生の価値の一番大事なこと、基本的なことを押さえながら中長期的なビジョンを持って学校を築き上げてきました。そうした精神・思想は背骨となり、いかなる時代にも支えとなるのです。成蹊には創立者である中村春二先生の素晴らしい教育理念がある。これはグローバル人材育成を形だけのものにしないという意味でも大きなアドバンテージです。
池上
私は、中村春二先生が目指した「自発的精神の涵養と個性の発見伸長を目指す、真の人間教育」こそ、グローバル人材育成の基盤となるものだと考えています。
跡部
同感です。当然ながら、一流の国際人とは、英語力が優れていれば良いというわけではありません。成蹊教育の特色である個性尊重の教育、いかなる困難にも打ち克つ「心の力」を育む教育は、多様性に満ちた国際社会で貢献して輝くためにも、異文化の中で生きていくためにも、ますますその意義を高めていくように思いますね。また、国際教育の伝統という点においても成蹊は創立当初から力を注いでおり、それは揺るぎないDNAとして今日に受け継がれています。
黒川
アメリカ屈指の有力校であるセントポールズ校、オーストラリアのカウラ高校との交換留学は素晴らしい制度だと思う。その効果が大きいことは、両校への留学を経験された方々の世界レベルでの活躍を見れば一目瞭然です。こうした制度を拡充したり、海外進学への道を開いたりすることが重要です。
跡部
セントポールズ校との交換留学の交流は65周年を迎えるまでになりました。また、カウラ高校との交流も45年、イギリスのケンブリッジ大学とも夏休みを利用した短期研修を実施して10年目になります。その他の制度も利用して、嬉しいことに、今年は現時点で長期留学が21名、短期留学76名と、あわせて約100名の中高生が海外に出て実体験をする予定です。

黒川 清 氏

建学の精神に立ち返り、強みを活かす —— Back to Basics

黒川
経験者は皆分かることですが、その場所に自分で行って、自分の目で見て、初めて気づくことがたくさんあります。外から自分や日本を見ることで、その強み、あるいは足りないものに気づく。そうした自分を発見するチャンス、好きなこと、夢中になれることに出会う機会が、ひとりでも多くの生徒に開かれていてほしい。個人として実体験をすること、多様性の中に飛び込んで他流試合をすること。そこから生まれる力が、今求められていると思います。一方で海外からの留学生も数多く受け入れていく。外国人と一緒に生活を送ることは、視野を広げる上で大いに役立ちます。その人脈が、将来世界を舞台に活躍するにあたって多大なパワーになることは間違いありません。
池上
とにかくまずは海外に出て、実体験を積んでもらう。私たちはその機会をできるだけたくさん提供し、後押しをするということですね。
跡部
実は今年から、J.F.ケネディ元大統領の出身校としても有名なアメリカのチョートローズマリーホール校との協定留学が始まりました。同校のサマースクールに、まさに今、本校から5名の生徒を派遣しています。彼らはテレビ電話でのインタビューやエッセイなどの提出によって審査され、5名とも栄誉ある村田奨学金をいただけることになりました。

先日の同校訪問での協議で、来年から長期留学生の派遣が決定し、また、最近、さらにアメリカの名門校であるフィリップスエクセターアカデミーの訪問を受けるなど、成蹊の国際教育の歴史に、またひとつ新しい1ページが加わりました。これもセントポールズ校との交流の歴史が高く評価されてのことです。

黒川
それは素晴らしいですね。今、初等・中等教育の「世界標準」と話題になっているIB(国際バカロレア)についても導入を検討しているそうですね。
跡部
はい。昨年、法人の企画部門との協働で調査・研究を開始し、認定校訪問もして、様子を見学してきました。今年は校内で研究グループを作って導入に向けた検討をしているところですが、付け焼刃的な知識の習得では対処できない、本格的な全人的教育プログラムだと実感しています。また、教師も含めて全員が生涯学習者であるという考え方も含めて成蹊の理念とも相通じるものが多く、それらの理念を具体化する教授法、評価法には大きな興味を持っています。
黒川
良いと思ったことは積極的に実行することが重要です。不完全であることを恥ずかしいと思わずに、前向きに努力し続けることから教員も生徒もたくさん学ぶところがあると思います。
池上
成蹊には中学校・高等学校だけでなく、ワンキャンパスの中に小学校や大学もあり、そこに集う人々が知的好奇心でつながる活動ができる。これも他にはない成蹊の大きな強みであり、国際教育にも多くの可能性を与えてくれると考えています。
黒川
面白いですね。大学で言えば学部や専門分野の違う教員、学校を跨いだ教員同士などが知的好奇心でつながって、授業やワークショップなどを展開すれば、児童・生徒・学生も「あれは面白い」と盛り上がってくれますよ。教える側も過去の知識にしがみつかないで、教えながら自らも共に学ぶスタイルでいくことが、これからの教育のあり方だと思います。

池上 敦子 氏

池上
そうですね。成蹊でも例えば、小中高大の英語教員が一緒になって成蹊の英語教育のあり方について議論したり、成蹊大生がTA(ティーチング・アシスタント)として成蹊小学校の英語の授業をサポートしたりと、ワンキャンパスならではの人的交流が盛んになってきています。私も学園全体の国際化を推進する立場の者として、これからも学校間の連携を強化していきたいと思います。
それでは、最後にお二人からメッセージをお願いします。
黒川
教育は生徒一人ひとり、それぞれの可能性、意欲を引っぱり出す、生きていく力をつけること。やりたいことを見つければ、生徒は自ら学ぶようになり、自らを一番伸ばしていくことになる。そういう対象を大きな視野で発見できる機会、個人的な実体験を通して気づく機会を、どんどん増やしてほしいと思いますね。教育哲学、伝統、充実した教育環境、またワンキャンパスの一貫校であることなど、成蹊が持つさまざまな強みを活かしながら。
跡部
成蹊には、個性的な仲間たちと一緒に切磋琢磨できる環境があり、さらに多様性を求めて海外に出ようとすれば、それを後押しできるプログラムもたくさん用意されています。そして、これらをもっともっと充実させる新しいプランも検討中です。「伝統に立脚し、未来を考えよ」という中村春二先生の言葉を噛みしめながら、建学の理念を礎に、バランスよく幅広い学びができる学校を目指して頑張っていきます。

成蹊中高の協定・交流のある学校

2015年7月現在

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