法学部の学び 法学事例紹介
法学部の学び 法学事例紹介
著作権法はこんなに身近!!
いつもなにげなく行っていることに、どんな法律の裏付けがあるのかな?
法律学科で学んでいる学生たちは、どんな生活をしていると思いますか? もちろん他の学部の学生たちと同じように、学生生活をエンジョイしています。でもちょっとだけ他と違うところもあります。
それは、日常の小さいことでも、法律の存在を意識することが多いということ。たとえば、ある学生たちは、こんな会話をしていますよ。 まずはどんな話をしているか、見てみましょう。
あ、音楽CDをコンピュータにリッピングしてる。
ねえねえ、それってオッケーなの? 著作権法的に。
知らないけど、オッケーなんじゃない?
だってみんなやってるし。
ってゆうか、みんなやってるかどうかって関係ないでしょ。
とりあえず、条文、見てみよっか。
そうだね。先生はいつも「信じられるのは自分と条文」っておっしゃってるし。
どの条文かなぁ。あった、あった。著作権法30条。
第30条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
なるほど。「私的使用」を目的としていれば、著作権のある著作物を複製していいってことね。
つまり、僕がCDをPCに入れるのが「私的使用を目的とした複製」に該当するなら、オッケーってことになりそうだ。
うん。いまリッピングしようとしているCDに入っているJ-POPは「著作権の目的となっている著作物」だから、ここではその他の要件に該当するかを検討すればよさそうね。
つまり、(1)リッピングの目的が「私的使用」かどうかと、(2)僕の行為が「複製」に該当するか、のふたつだね。
じゃ、まず(2)のほうから考えましょう。
えーっと、「複製」の定義は2条1項15号にあって、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」と規定されているわ。
PCに入れるのは有形的に再製していることになるのかなぁ。
PCに入れるのは、ハードディスクに書き込む、ってこと。
つまり、ハードディスクという有体物にCDの音楽を固定しているわけだから、「有形的に再製」に該当しそうね。
いわゆる「コピー」は、著作権法的にはこんなふうに定義されているんだね。
オッケー。じゃ次に考えるのは「私的使用を目的」としているかどうかよ。
CDをPCにコピーしているのは何のためなの?
うーん、自分の部屋で聴いたり、iPodで聴くためかな。
iPodはどんな風に使うの?
通学の電車の中とか、喫茶店で勉強するときとか。
なるほど。
30条は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を「私的使用」と規定しているわ。
あなたの使い方は、どうやらこれに該当しそうよ。
ならば僕の行為は30条の要件を全部充足するってことだ。
つまりCDをPCに入れるのは著作権法的にもオッケーってことになる。
ただし、私的使用を目的としていれば、という条件付きよ。
よかった。これで気分よく音楽を楽しめる。
いかがですか?
法律学科の学生たちはこんなふうに、生活のさまざまな場面で「これは法的にはどうなっているんだろう」という疑問を持って、条文を開いてみたりしています。
「信じられるのは自分と条文」
法律を学ぶとき、何事も法律の条文から考察が始まります。そしてその意義や答えを見いだすのは自分。
書物やネットに書いてあることに疑問を持ち、人が言っていることに疑問を持って、条文を手がかりに自分で考えて自分で自分の答えを見つける。それが法律学科で学ぶ学生の姿です。
興味を持った人は、ここに出てきた言葉を、GoogleやYahooで検索してみましょう。
「著作権法」「著作権」「リッピング」「私的使用」「有形的に再製」「有体物」「iPod」……。
くれぐれも、そこに書いてあることを真に受けることなく、疑問を持ちながら読むことが大切です。
すべての法律の条文は、日本政府が公開している、法律のデータベースで読めます。
いろんな言葉で検索してみてください。
関係する法律の条文が、たくさん出てきます。
その条文に少しでも疑問や興味を持ったら、あなたはきっと法学部での学生生活をエンジョイできると思います。