成長する成蹊大生の図鑑

学問を横断し融合する学びが
価値観やものの見方の多様性を理解し、
多面的に考える力につながった

法学部 政治学科 4年生(2023年度取材時)

2020年度入学

私立駿台甲府高等学校出身

「人間」と深く関わる「政治」への関心から入学

私には、就職のために大学へ通うのではなく、大学の4年間を「教養を深め、人間的に成長する場にしたい」という思いがありました。法学部政治学科を選んだのは、小学校から高校まで「政治」について詳しく学んだことがなく、社会を生きていく上で、生活と深く関わる「政治」を専門的に学ぶことには意義があると感じたからです。政治学の中でも特に関心を持っているのは、所属ゼミの専門分野でもある「政治思想史」。戦前から戦後に至るまで国民がどのような心境を経て今の民主主義をつくってきたかなど、「人間」にフォーカスするところが多く、入学当初の思いに特にフィットする分野だと感じています。また少人数の授業が多く、そうした普遍的なテーマについて深く議論できる環境も、政治学科の魅力の一つだと思います。

副専攻を活用し、幅広い学問に触れる

成蹊大学には、学科の専門分野以外も学べる副専攻制度があり、私は経営学副専攻と心理学副専攻を修了しました。心理学の観点から人間の政治行動を考えたり、政治学とは異なる経営学の視点で社会の仕組みを学ぶなど、学問を横断して学んだ経験は、視野を広げる上で大きな意義があったと感じています。また副専攻の授業では、他学部の学生とともに学ぶ機会があり、それぞれの専門分野に根ざした多様な考え方に触れられたことも、大きな刺激となりました。たとえば、労働問題について考えた際、私は労働者(=個人)の視点で問題を捉えがちだったのですが、ある経営学部の学生は、会社(=組織)の視点ではこうすべきだといった自説を展開していました。心理学の授業についても、もともと関心がある「人間」の本質を知るための気づきがたくさんありました。

幅広い学問を融合させ、卒業研究に取り組む

現在、平石耕先生のゼミで取り組んでいる卒業研究のテーマは、「孤独を克服し自己意識をもって生きるためにはどうすればいいか」。このテーマを選んだのは、高校時代に自分自身のアイデンティティが揺らいでしまった経験が起因しています。小学校、中学校までは学校で上位の学業成績を維持していたのですが、レベルの高い高校に進学すると成績が平均以下になってしまい、勉強という「唯一の取り柄」と思っていたものが失われ、「自分には何もない」という喪失感と、そうした気持ちを吐露できない孤独感に陥ってしまいました。そして、当時の状況が、私自身の弱さや周りの環境のみによって生まれたのではなく、社会や政治、人々の思想など、さまざまな要因も関係していたのでは?と考え直したことが、この研究に取り組んだきっかけです。研究の過程では、政治学だけでなく、心理学や経営学の視点も大いに役立ちました。心理学の授業で学んだ、孤独の実感が心身の不調に発展していく事例や、孤独に耐えられなくなると権威に従属したくなる心理、孤独に陥った状況で人間がとりがちな逃避行動の方向性などは、研究の根幹である「孤独」がどのようなものであるかを深く理解するために欠かせない知見であったと感じています。また、資本主義が個人にもたらす影響も重視していて、思想・社会から会社などの職場、人々の生活、個人の自己意識までがどのようにつながっているのか明らかにする上で、学科の専門である政治学と経営学を融合したアプローチが有用だったと感じています。

情報を批判的に見る力が身についた

複数の分野の学問を学び、少人数制の授業で多様なものの見方、考え方に触れる中で、学問と学問の意外なつながりを実感するとともに、多様性への理解や多面的に考える力が磨かれたと感じています。高校までの学びでは、決まった答えのあるものがほとんどでしたが、成蹊大学で経験してきた学びでは、大半が学生自身の意見を求めるもので、決まった正解のない問いに対して議論する機会も数多く経験できました。多数の事例に触れ、学びを深めていく中で、「正解がない」のは社会も一緒だという感覚も強くなりました。異なる人生を歩んできた人が異なる考えをもつのは当たり前ですし、一方が正義で一方が悪とは断言できない問題も世の中にはたくさん存在します。そうした前提を知るとともに、目にする情報をさまざまな視点から考えられるようになったのは、大学の学びで得られた一つの成長だと思っています。たとえば、高校生まではテレビで報道されることは正しいと無条件で信じていたのですが、今ではテレビ番組を支えているスポンサーをはじめ、番組に関わる人の意思がどこかで影響している可能性も視野に入れるようになったほか、SNSに表示される広告に対しアルゴリズムが使われている可能性を考えるなど、情報を鵜呑みにせず批判的に考察できるようになりました。

ものごとを多面的に考える習慣が、話す力を育んだ

多面的に考え、自分なりの意見をもつ姿勢は、就職活動でも評価いただけたと感じています。一つの専門分野に限定せず、幅広い分野を学んでいたことで、どのような話題を振られても対応でき、会話の引き出しを多くもてた実感もありました。また自分の意見をアウトプットするだけでなく、ゼミをはじめとした少人数制の授業で取り組んできた「相手の意見をよく聞くこと」も、姿勢として評価されたのだと思います。

卒業後は、生命保険を扱う保険会社で働くことが決まっています。その会社に決めたのは、「自己責任」と対極にある「相互扶助」の考え方に共感したからです。卒業論文を通じて、孤独な人をつくらないためには、人と人がつながり助け合う仕組みづくりが大事であると考えていました。保険会社は政策を考えるわけではありませんが、個人が安心して暮らせるような保険商品を提供することで、私が理想とする社会を実現するための一助になれるのではないかと考えています。ものごとを多面的に見る姿勢をこれからも大切にしながら、お客さま一人ひとりと向き合い、励んでいくつもりです。

データで見る成長した力

  • 成蹊大学 履修要項「副専攻対象科目及び必要単位数一覧」より
  • 2023年度現在
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※内容は取材当時のものです。