成長する成蹊大生の図鑑

教職課程での実践的な学びと言語学との出会いを
きっかけに理想の教師像を見出した

文学部 日本文学科 4年生(2022年度取材時)

2019年度入学

東京都立八丈高等学校出身

「国語の教員になる」夢につながる環境が整っていた

中学時代の恩師に憧れ、国語の教員をめざして成蹊大学に入学しました。その先生に谷崎潤一郎の作品 を勧められ、それまで触れたことのない文学の世界を堪能した経験が、「国語」を教えたいと思ったきっかけです。入学時は、興味のある「文学」を専門的に研究したいという思いもありました。文学部日本文学科には、文学に加えて言語学を学べる授業もあり、教員をめざしながら専門科目を通じて視野を広げられると感じたことが、成蹊大学を選んだ理由です。

実際に4年間の学修では、発想力が磨かれ、そこから派生する「子どもたちに考えさせる問いを立てる力」と「子どもの見えにくい感情にもアンテナを立てる力」を身につけられました。それは、教職課程の模擬授業や授業後の検討会などを通じて実践的な学びを重ねられただけでなく、言語学の研究を通じて物事を多角的に考察する経験ができたことも大きかったと感じています。

生徒に考えさせる「問いかけ方」を追究

教職課程では、教育心理や一般教養などの基礎を学んだうえで、模擬授業などの教育方法に関する学びに取り組みました。実際に教える役割を経験して最初に感じたのが、「問いかけ方」の難しさでした。国語の授業では、教科書を見ればわかるような質問だけしていては、生徒の考える力を育むことはできません。そこでは教員がいかに工夫し、気づきのきっかけを提供できるかがカギとなります。例えば文学作品を講読する際に、文中には書かれていない登場人物の心情に注目させるといったアプローチもありますし、ある一文がないと仮定してどのように印象が変わるかを考えさせるといった展開の仕方もあります。そうした目に見えない部分に着目する視点を持てたのは、教職課程で学んだ大きな成果だと思っています。また、模擬授業の後では、毎回のように先生も交えて指導方法の検討会を行いました。自分が教える立場を経験するだけでなく、他の学生の模擬授業を生徒の立場で経験でき、皆で良かった部分や課題を考えたおかげで、自分の力を客観視でき、工夫の引き出しを増やすことにつながったと考えています。

言語学の研究が潜在的な問題を発見する力に

発想力は、学科の専門科目でも鍛えられました。入学当初は文学作品の研究に強い関心をもっていたのですが、授業を通じて言語学のおもしろさに目覚め、卒業研究も言語学に関するテーマに取り組んでいます。言語学に興味を引かれた理由は、普段当たり前のように使っている日本語を論理的に解明していくアプローチがおもしろいと思ったからです。例えば「地味に」という言葉は、状況により程度が上がっている意味で使われることがあれば、真逆の下がっている意味で使われることもありますし、一見同じように使われている「普通に」という言葉との使い分けも大変興味深いと感じています。こうした事例から言葉を考察する学びは、知見そのものをコミュニケーションのきっかけとして現場で活用できるだけでなく、私自身の発想力の向上にもつながりました。当たり前に言葉を使い過ぎているために気づかなかった視点から考察したことで、以前よりも物事の潜在的な問題に注目できるようになりました。

ボランティア活動が習得したスキルの確認と課題発見の場になった

大学卒業と同時に中学校・高等学校教諭一種免許状(国語)を取得する見込みで、卒業後の進路は東京都の公立学校教員採用の内定をいただいており、中学校教員を希望しています。教員になれば、中学校の現場にはずっと関われるため、あえて教育実習を高校で行い、教育ボランティアを小学校で行うようにしました。中学校の前後の教育を自分の目でみることが、教育の接続を理解するうえで意義があると考えたからです。小学校の成長過程への理解を中学校での教育に活かし、どのような生徒を送り出すことが高校でのさらなる成長につながるかをイメージするための貴重な経験ができたと考えています。

また、実際に子どもたちと接する経験は、教職課程での学びを通じて身につけたスキルがどのように通用するかを確認したり、新しい課題を発見したりなど、自分の成長度合いを確認し、自信を深める機会にもなりました。子どもへの理解を深めるという点でも、有意義だったと感じています。例えば、課題に対して「面倒くさい」と発言するなど、前向きでない態度をとった子どもとじっくり話してみると、私の気を引いてもっと話したかっただけであったことがありました。もちろん、世代ごとの特徴もありますが、子ども一人ひとりには個性があり、一見では表面に現れない感情の存在を肌で感じることができました。

子どもの心情を理解し、良い人生を歩む支えとなりたい

私は、「子どもたちの自立を促すことのできる教員」になりたいと思っています。そこには、私の教え子となる子どもには「良い人生を送ってほしい」という思いがあります。教員として教科を教えることは大切ですが、日々の挨拶など、卒業後も生涯にわたって生活で必要になる姿勢や態度、知恵を育むのが、義務教育最後の年代を預かる教育者としての責任だと考えています。

4年間で培った「子どもに考えさせる問いかけをする力」や「子どもの見えにくい感情を感じ取る力」を活かし、自ら人生を歩んでいこうとする子どもの支えになることが目標です。

データで見る成長した力

  • 成蹊大学調べ
  • 成蹊大学調べ
  • 成蹊大学調べ
  • ベネッセiキャリア「GPS-Academic」(アセスメントテスト)
    2019〜2022年度 3年生受検合算データより作成
  • 「①非常にあてはまる/②ややあてはまる/③あまりあてはまらない/④まったくあてはまらない」のうち「①非常にあてはまる」「②ややあてはまる」と回答した割合。

※内容は取材当時のものです。