新理工学部 
未来どうなるの?研究部

第3回研究テーマ

「未来どうなるの?研究部」の質問に答えてくれるのは、データサイエンスの研究者
小森理先生。未来社会のキーになると言われているデータサイエンス。
今、注目されているこの学問についてお話を伺いました。

未来どうなるの研究部グラレコ1-1
未来どうなるの研究部グラレコ1-2
未来どうなるの研究部グラレコ1-3

Interview

  • データサイエンス

    データ数理専攻
    データサイエンス研究室

    小森 理 准教授

    小森研究室では、さまざまなデータから役に立つ情報を抽出する手法を統計科学などの視点から開発している。
    データサイエンスがもっと社会に広まっていくことで、よりよい世の中になることを願っている先生。

Q1

「最近よく聞く
『データサイエンス』
って、何ですか?」

データから未知の規則性を見つ
けて社会に
役立てる学問。
キーワードは「可視化と予測」

小森先生

データサイエンスは、大量のデータから特徴や意味を見出し、データの背後にある規則性(構造や本質)を捉えることから始まります。それをグラフなどにして、解析して結果を予測できるプログラムを実装したりすることで、社会に役立てることを目指す学問です。

先生はどんな研究をしているのですか?

小森先生

私はデータサイエンスの中でも特に生物統計が専門。医療データや生物多様性データを用いて研究をしています。例えば、医療データで言うと、病院の患者さんの臨床データや遺伝子情報から病気の進行状態を予測し、その人に合った治療法の開発に役立てています。
医師や研究室の学生と一緒に診断を効率化するウェブアプリを開発したのも、研究室の成果の一つです。医師が患者さんの情報を入力すると病気の進行度が数値化され、一人ひとりの適切な治療法を判断する材料になります。

生物多様性の研究では、どんなことを
されているんですか?

小森先生

生物多様性に関しては、生物が日本のどこにどれだけ生息しているかを、地図上で視覚的にわかるようにするプロジェクトに取り組んでいます。何千何百もの動植物のデータを集めながら、生物の種類や生息数を地図上に色分けして示す「ヒートマップ化」することで、日本全土の生物の分布がひと目で分かるようになりました。

※琉球大学・久保田研究室との共同研究「日本の生物多様性地図化プロジェクト」で、現在進行中。

日本中の生物の分布がデータベース化
されたってこと!?

小森先生

こうすることで、保護すべき生物がどこにどのように分布しているか、それらを脅かす外来種が近くにいないかなどを判別できます。生態系や環境を守る目的で設けられている自然保護区も、そのデータに基づいて制定できるようになりました。生物多様性の保護に役立つといいなと思っています。

データサイエンスで
自分の好きなものを研究に。

先生の研究室の学生さんたちも同じ研
究をしているの?

小森先生

私の研究に関心を持ち、研究テーマに選ぶ学生もいますが、多くはそれぞれの興味や関心のある分野でデータサイエンスの解析手法などを学んでいます。
例えば、音楽好きの学生は「Spotify」という音楽配信アプリのデータを使って、自分の好きな音楽の特徴を解析していました。Twitterのつぶやきテキストデータから株価変動を予測することをテーマにした学生もいましたよ。

えー!!Twitterから株価を予測!?

小森先生

その学生はもともと経済に関心があり、Twitter上でどんな言葉がつぶやかれると、日経平均株価やNYダウなどの株価に影響するか解析していましたね。

なんと!音楽アプリやSNSのデータも、
研究の対象になるんだなぁ…。

小森先生

新型コロナウイルス感染症について、Twitterのデータから見てみようと研究を進めた学生もいます。第一波から第六波まで、どういう言葉がつぶやかれているんだろう?と。ある時期には「ワクチン」が頻出していたが、別の時期には違う単語が多用されるなど、波ごとの社会のコロナに対する捉え方を垣間見ることができました。

音楽、株価、新型コロナ…データサイ
エンスで研究できるものって幅広いで
すね!

小森先生

私の研究室では、他にも将棋、野球、小説など、ジャンルを問わず「学生が何に興味があるのか?」を第一に研究を進めています。データサイエンスの素地を身につければ、自分の好きなものや興味あるものをテーマに研究ができるのも良いところですね。
そして、どのデータ解析研究もベースにあるのは「可視化と予測」。これがキーワードです。

Q2

「いま、世の中で
データサイエンスは
どう広がっているの?」

ビジネス、エンタメ、医療など
社会のあらゆる分野で活用され
ている。

ボクたちが知っていることにも使われ
ているのですか?

小森先生

そうですね、SNSのフォロー状況から出てくる「おすすめアカウント」や「友達かも?」の表示情報や、ECサイトの購買履歴に基づいたレコメンド情報など、私たちの身の回りのものにも活用されています。

よく目にします!他にはどんなことに
使われているんだろう?

小森先生

例えば自動翻訳。昔は単語レベルだったものが、今では文章レベルでデータを収集できるようになったことで、文脈に沿った翻訳や文章レベルでの翻訳にも対応できる高性能化が進んでいるんですよ。

私は理系志望で薬の開発に興味がある
のですが、たとえばその分野でも活か
せますか?

小森先生

創薬でいえば、何千・何万件に1件ほどしか実際の薬にはならなかったのが、データサイエンスの活用で、さまざまな化合物のデータから実験結果のシミュレーションが可能となったので、薬になる可能性の高い化合物の候補を精度よく絞り込めるようになりました。分野を問わず、専門性を深め広げる道具としてもデータサイエンスは活かせます。

判断に役立つ。
見えなかったものが見えてくる。

本当にいろんな分野で活用されている
んですね。
将来、自分の興味ある会社に就職して
仕事をするときも、データサイエンス
が役に立ちそう!

小森先生

データサイエンスは、ビジネスともかなり密接に関わっていますし、経営の舵取りにも役立ちます。例えば新サービスの導入や人気商品の量産指示などは、トップが世の中の動きを予測したうえで方針を決める必要がありますよね。

うんうん…

小森先生

データサイエンスの視点があると、これらを経験や勘だけに頼らずに、データから客観的に判断できます。マーケティング、営業、プロモーションなど、今はどんな仕事でもデータと無縁な仕事は少ない。だからデータを扱えると、どんな分野でも活躍できます。今後は、理系・文系や業種を問わず、あらゆる人にデータサイエンスの素養が必要になると思います。

データサイエンスの素養って、データ
を読む力のようなものってこと…?

小森先生

そう!みなさんに身につけて欲しいのは、データを正しく理解する「データリテラシー」です。データを読み解く力があれば、さまざまな場面での意思決定がきちんとデータに基づいているか?という疑問を持てる。そういった客観的な目で、正しいかどうかを判断できるようになることが重要です。

ちなみにボクは小説を読むのが好き
で、いつか自分でも書いてみたいと思
っているのですが、

データサイエンス
はそんなボクにとっても役に立つので
しょうか?

小森先生

もちろんです。ちなみに、私の研究室には『かがみの孤城』『ハケンアニメ!』で知られる作家・辻村深月さんのファンの学生がいて、その学生は受賞作品と受賞を逃した作品の違いを解析していました。データ解析をすることで世界が広がり、とても楽しみながら研究していたのが印象に残っていますよ。

!!!おもしろそう!!

小森先生

データサイエンスは、データを可視化して解析することで、見えなかったものが見えてくる、いろんな新しい気づきがある学問です。皆さんだったらデータサイエンスを使って何をしたいですか?考えるだけでワクワクしますね。

Q3

「データサイエンスで
未来社会は
どう変わっていきますか?」

よりよい社会へのヒントを示し、
次の時代へ進む指針になる。

データサイエンスは世界的にも必須の
知識になっているのですか?

小森先生

私たちがいま向かっているのは、インターネットなどの「仮想世界」と私たちが暮らす「現実世界」とを高度に融合させるSociety 5.0の超スマート社会です。
その実現にはデータサイエンスが欠かせません。10~20年後には、世界中でデータサイエンスが英語のように、ごく当たり前の共通言語になっている世の中が来るかもしれません。

データサイエンスで、未来社会が大き
く変わるんですね!?

小森先生

そうですね。データサイエンスは、昨今言われているSGDsが目指す17のゴールや循環型社会の実現も下支えするチカラにもなるでしょう。

データサイエンスとSDGsが繋がるのは
意外でした!

小森先生

持続可能な社会をつくるためには、効率よく資源を活用できる良い循環を作ることが必要です。そこで、データサイエンスの「可視化と予測」がキーになります。
例えば省エネ。横浜では、消費電力をリアルタイムで「見える化」するシステムを導入し、節電行動を促進する取り組みを行っています。また、昨今、問題になっている地域過疎化や人口減少もその現象や要因が可視化されることで、国や地方行政が的確な方針や施策を打ち出せるんです。

新しい仕事や価値観が生まれる社会へ。

ボクたちが社会人になる、近未来でも
いろんな変化が起こりそう。

小森先生

社会全体でデータサイエンスの活用が進むと、今はまだ考えられない新しい職種やサービス、価値観が生まれるでしょう。働き方や暮らし方など社会全体も変化して、自分の好きなことにデータサイエンスを活かしながら、みんなが幸せに生きられるようになっていくと思います。

データサイエンスが社会を変えるなん
て、ワクワクしてきました!

小森先生

データサイエンスは、より良い社会へと向かう指針になると私は信じています。
皆さんも、自分の好きなこと、興味のあることをデータサイエンスで紐解いてみませんか。
もしかするとそこには、未来につながる新たな発見があるかもしれません。

※掲載している内容は2022年7月時点のものです。

Profile

  • 小森 理 准教授

    医療と生物に関するデータを専門領域とするデータサイエンスの研究者。遺伝子発現解析による膵臓がん検出の共同研究で特許を取得している。
    動植物の生息分布の予測などを通じて、生物多様性の保全に寄与する研究活動を行うなど、データを通じた社会貢献を目指している。

    データサイエンス研究室