新理工学部 
未来どうなるの?研究部

第2回研究テーマ

「未来どうなるの?研究部」の質問に答えてくれるのは、コンピュータ科学の研究者 岡本秀輔先生と触媒化学の研究者 里川重夫先生。
オンライン授業が普及した今、遠隔でも学べるようになりました。
これからの大学で学ぶ環境や学ぶ内容はどう変化していくかを話します。

未来どうなるの研究部グラレコ1-1
未来どうなるの研究部グラレコ1-2

Conversation

  • 情報科学

    コンピュータ科学専攻
    コンピュータシステム
    研究室

    岡本 秀輔 教授

    岡本研究室では、コンピュータによって、Web・並列処理・対話型アニメなどのプログラミングに関する研究を行っている。AIやプログラミングの力でIoTや小さなコンピュータを何にどう役立てられるだろうかと、いつも考えている先生。

  • 触媒化学

    応用化学専攻
    環境材料化学
    研究室

    里川 重夫 教授

    里川研究室では、二酸化炭素排出削減のために、エネルギー・資源の有効活用のための化学プロセスや触媒技術の研究をしている。学生と一緒に実験したり、研究室から出てカフェで学生と話したり、一緒に考えたりするのが大好きな先生。

Q1

「大学生活はどれくらい
オンラインになるの?」

オンライン活用は進むけれど、
対面でしか得られない
学びがある。

岡本先生

技術やインフラが発達して世の中全体でオンライン化できる部分が増えましたね。コロナ禍でオンライン授業の活用が進みましたが、メリットもデメリットもあると感じています。

里川先生

オンライン授業では、オンデマンドで授業の動画を何度も見られますね。分かるところは倍速で視聴できるし、分からないところは何回も見て確認できるという良さがありますね。

岡本先生

チャット機能がまた便利で、リアルタイムのやりとりができる。教員側から見ると一度に全員の回答をその場で集めることもできるから、対面で一人ずつ発言することとはまた違った活発さがありますね。でも、オンライン授業を十分に生かすには、受け身ではなく、学生が能動的に活用する側にならないといけない。

里川先生

あふれる情報をセレクトして、いかに自分のアイデアにつなげるか。どう噛み砕いて吸収して、アウトプットするかです。思考力が鍛えられるので、中にはオンライン授業によって、深く考えることにつながった学生もいます。

岡本先生

確かに。でも、オンラインには足りないものがある。それは臨場感や緊張感。教室には隣に友だちがいて、刺激があって、尊敬したり、学び合ったりできる良さがある。そこからさまざまな気づきが生まれます。また、キャンパスの中では偶然の出会いがあります。さまざまなモチベーションやパッションを持つ人、自分とは異なる背景を持つ人ともつながりができるかもしれない。だからこそ、これからはより対面とオンラインのそれぞれの長所を生かした授業構成になっていくと思います。

社会も価値観も変化する。
大切なのは人が豊かに暮らすこと。

岡本先生

コロナ禍の前から、ICTを活用して利便性、快適性の向上を図るなど、「スマートシティ」といわれる社会全体のオンライン化が急速に進んでいます。人と社会も変化していっていますね。

里川先生

同時に地球温暖化対策として世界中で二酸化炭素の削減が叫ばれている。そこで忘れてはいけないのは、「人間がどう豊かに楽しく暮らしていけるか」です。

岡本先生

なるほど。科学技術はそれを叶えるためにある。環境問題や社会の変化などを捉えながら、未来に向けて何が必要かを考えることが求められますね。

里川先生

私の専門は触媒化学で、二酸化炭素をどう減らすかがテーマです。温暖化対策として、多くの国が化石燃料を使わずに高価でも自然エネルギーを使うという流れになっている。安価だけど化石燃料は地球をダメにするもので、それを使うことはものすごい犠牲をはらうことになるという考えです。化石燃料に依存して経済は発展を遂げてきただけに、歴史的にも大きな転換期といえますね。暮らし方も変化して、従来の仕組みやルールも価値観も変わっていくと思います。まさに「ゲームチェンジの時代」ですね。

岡本先生

スマートフォンなど新しいデバイスも次々に進化するし、YouTubeの普及でメディアの在り方も変わったりして、暮らし方そのものがどんどん変わっています。IT技術の活用は無限大ですが、コンピュータはあくまでも人と社会を補助する道具。AIが仕事を奪うなんて心配する人もいるけれど、仕事を奪うのはAIを使う人であって、AIそのものではない。結局、道具を使って、どれだけ人が幸せになれるかが一番大事ですね。

里川先生

そう!つまりどうしたら人が幸せに暮らしていけるか、楽しいか、自分に何ができるかを考えて変えていくことが未来を開拓することになると思いますね。

Q2

「未来の研究に
大切なものは何?」

多様な考えに出会える、
「マルチジャンクション」
のような環境。

岡本先生

時代や社会の変化に対応するために必要なことは、好きなことに能動的になること。学生が受け身ではなく興味をもって自分から学び、その興味をもったことを発信して伝え合う。そうして刺激を与え合うことで想像もできなかったアイデアが生まれることがあります。

里川先生

研究者は考えたことを発信して、ディベートを重ねることで研究が前に進むと昔からいわれています。家庭でも学校でも研究でも、考え方や感じ方の違いを知って、modifyする=修正していくことも必要ですね。専門を深めることも大切だけれど、違う分野の人に会って、違うことを教え合ったり学び合ったりして知識や情報を共有することで、新しい可能性が開けたりする。

岡本先生

その意味では、大学というのはいろんな人が集まって一緒に何かをやって影響を及ぼし合える、うってつけの場所です。そこで生まれる化学反応が、予想もしない未来の研究につながっていくかもしれない。

里川先生

今、成蹊大学ではキャンパスの理工学部エリアを再開発して、文理融合のコラボスペースとして新たな拠点づくりをしています。新棟ではいろんな研究室の内部を可視化することで、知識や情報を異分野の学生と共有できるようにしています。これまでは壁で遮られた自分の研究室しか中が分かりませんでしたが、建物内をあちこち自由に回遊できるようにすることで、「この研究室のこの研究は面白そう」というコラボレーションの芽が見つかるかもしれない。そんな「マルチジャンクション」のような環境を生み出せればと思っています。

理系文系・異分野を越えて

里川先生

実際、社会では理系文系といった分類は意味がありません。卒業するとメーカーに就職する人も多いけれど、そこでは理系は技術だけでなく経済や社会情勢を知らないといけないし、文系も二酸化炭素削減などのテーマに興味がなければ、話題についていけない。

岡本先生

今は文系からもITの分野に入る人は少なくないですね。柔軟な発想のためにも、皆さんには多趣味であってほしいし、異分野の人間ともどんどん交流してほしい。

里川先生

そのために新棟では、他の研究をしている学生や教員と自然につながれるフリースペースを作るのですが、そこにはいつもいろんな専門家や研究オタクが溢れていて、他愛もない話がどんどん発展していくといいですね。そんな環境があれば、「あれ?どうして?」といった研究のナゾが解けることもあるし、全然知らない専門のトビラを開けることもできるでしょう。これは発想力のトレーニングにもなる!

岡本先生

海外の大学では「ファカルティクラブ(Faculty Club)」という教員がちょっとした雑談をする場での異分野の専門家の交流が根付いています。新棟では、そんな「ファカルティクラブ」のような場で学生もお茶などを飲みながら個々の研究についてディスカッションができる。そこでの人とのふれあいからインスピレーションや刺激を受けて、新たな未来を創造するアイデアや発想が生まれていくと思います。

Q3

「未来に向かって
チャレンジできることはありますか?」

「やってみること」「話すこと」

未来への第一歩。

里川先生

ゲームでも趣味でもなんでもいいから、興味を持ったらとにかくやってみることです。そして、おもしろいと思ったらそれに没頭してみよう。その道で一番を取るくらい積極的にチャレンジしてほしい。

岡本先生

趣味のことでも悩みでも妄想でもなんでもいいから、周囲に自分の言葉で自分の考えを話してみてはどうだろう。突然プレゼンしろと言われても、1~2分で自分の思うことを話せるように準備しておくといい。

里川先生

それは雑談でもいい。例えば自分の知識をお父さん、お母さんにわかるように話してみるのもいいですね。「どういう言葉で伝えれば、この面白さを分かってくれるだろうか?」と考えて、相手と「何で?」「どうして?」と会話をすることが大事です。

いろんな分野のリーダーになろう

里川先生

あとはぜひ目標として持ってほしいのは、リーダー意識です。今の社会には多様な価値観があり、多様なリーダーが求められています。ゲームチェンジの波を捉え、社会の変化をつくりだすために、そして、世界と日本がいい方向へ向かうために情報発信できる、そんなリーダーになるという意識が必要です。

岡本先生

リーダーといっても、大企業の社長とかそういうことではない。自分の分野で影響を与えるリーダーになれればいいんです。

里川先生

そのために必要な学びの基本にあるのは「FOR BETTER LIFE」。人と社会の幸せの実現に向かって進むことです。自分が豊かな人生を歩み、世の中で活躍するためには、多様な価値観を誘導して、次の時代を切り拓いていく必要がある。

岡本先生

そう!それに向かって活動し続けることがゴール。今は時代の転換期なので、大学生や高校生の皆さんにはチャンスがたくさんあると思います。ぜひそのチャンスを掴んでください。

※掲載している内容は2022年3月時点のものです。

Profile

  • 岡本 秀輔 教授

    情報ネットワーク、計算機システム、ソフトウェアが研究分野。
    コンピュータによって、Web・並列処理・対話型アニメなどのプログラミングに関する研究を行っている。世の中の発展を見据えて、それに合わせたソフトウェアも開発している。新しい技術を取り入れたオンラインゲームの制作、仮想及び実ロボットの制御装置なども研究のひとつ。

    コンピュータシステム研究室
  • 里川 重夫 教授

    二酸化炭素排出削減のために、化石資源を使わない暮らしの実現に向けた化学プロセスや触媒技術の研究を行っている。
    太陽光や風力から得られる電力を使い、水を電気分解して水素を作る技術、大気中から二酸化炭素を回収する技術、そして水素と二酸化炭素から燃料油や化学品を作る技術に取り組んでいる。
    研究を通して、それらが「経済的に実行できる社会の実現」を目指している。

    環境材料化学研究室