■主催
成蹊大学Society 5.0研究所
■開催日
2025年6月14日(土)
■時間
16:00~18:40
■会場
成蹊学園本館大講堂
■参加者数
188名
■主催者代表
小森 理(成蹊大学Society 5.0研究所所長)
2025年6月14日(土)に、東北大学名誉教授・イノベーション戦略推進センター未来社会健康センター拠点長の永富良一先生をお迎えし、Society 5.0研究所主催の第16回講演会を実施しました。永富先生は健康維持増進に関する医工学の第一人者の先生で、当日は「Society 5.0社会における大人の体育・スポーツのススメ」と題し、身体を自らの意思で思い通りにマネージする広義の体育についてご講演して頂きました。
身体を動かす際に必要になるのはもちろん筋力です。WHO身体活動・座位行動ガイドラインでも、成人と高齢者のカテゴリーで有酸素性身体活動に加え筋力向上活動が推奨項目として明記されています。ウォーキングやジョギング、サイクリングや水泳などの日常の運動だけでは健康の維持増進には不十分なことを示唆しています。永富先生のご講演中にもMomma H. et al.(2022)の論文を引用され、週に1時間程度の筋力トレーニングが実際に総死亡、心血管疾患発症、がん発症のリスクを低減することについて説明されていました。但しここでいう筋力トレーニングは筋肉痛を伴う高強度のトレーニングのことで、毎日行えるような軽度の筋力トレーニングは含まないことも注意点として言及されていました。
またご講演の後半では衰えた筋力を増強させることに焦点をおき、筋力増強のしくみとその実際の方法について詳しく説明してくださりました。筋力トレーニングなどの高強度の無酸素運動によって筋繊維に損傷が起こり、衛星細胞が活性化される。それにより筋繊維の原型である筋芽細胞や筋管の増殖が引き起こされるとのことでした。また鶴ケ谷プロジェクトのご紹介もあり、杖を使い歩行されていた高齢者の方でも適切なトレーニングを行うと元気よく歩けるようになる映像も見せて頂き、負荷を伴うトレーニングの効果とその大切さが非常によく分かる内容でした。但しそのような高強度のトレーニング、いわゆる追い込みを伴う運動は一人だけでは長続きはしません。永富先生のご講演の最後にも、人間の幸福と健康の条件は「出会いと絆」であることを強調されていましたが、身近な仲間や友人と一緒に楽しみながら身体を動かし、心身ともに健康であることが一番大切なことです。このことは高齢化社会を迎えている日本において非常に重要なメッセージであると改めて感じました。
講演後にもたくさんの質疑応答があり、非常に盛況のうちに講演会を終えることができました。永富先生をはじめ、参加してくださった地域住民の方、学生、成蹊学園の教職員の皆様に改めて厚く御礼申し上げます。
(成蹊大学Society 5.0研究所所員 小森 理)

