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【報告】成蹊中学高等学校 生物科家庭科特別講義 「深海魚に触れて、観察して、作って、食べよう」

担当者所属:東京大学大気海洋研究所
担当者名:猿渡敏郎        

1.タイトル
成蹊中学高等学校 生物科家庭科特別講義
「深海魚に触れて、観察して、作って、食べよう」

2.活動日時・場所
2018年6月16日(土) 13:00-17:00
成蹊中学高等学校 生物科階段教室、家庭科室

3.参加人数
中学生 40名、高校生 2名、 教員7名、卒業生 1名

4.活動内容
深海魚をテーマとした特別講義を実施した。講義と実習を取り入れた、生物科と家庭科が連携した科目横断型の特別こうぎである。教材として、駿河湾にて深海トロール漁船に乗船して採集した深海魚を提供した。
自己紹介、魚類学超短期集中講座といった講義のあと、解凍し生鮮状態の深海魚を自由に手に取らせ、観察させた。その後、参加生徒一人ひとりが油粘土にて理想の深海魚を作製し、その名前、特長、生息場所などについて一人一分で発表した。家庭科室へ移動しての調理実習では、ヒゲキホウボウ、ギス、アオメエソ、アラメギンメなど深海魚を材料に、味噌汁、煮付け、梅干煮、南蛮漬けを調理し、試食した。

5.成果と課題
本特別講義は今回で七回目となる。過去には、研究紹介、深海ザメの解剖などを行った。教材として用いた深海魚は冷凍保存し当日解凍したものである。そのため、薬品処理された液浸標本とは異なり、生時の色と触感を保持している。素手で触れても問題ないので、標本を直に手に取り、観察することが可能である。特別講義のつど、生物多様性を直に触れて体験し、理解する機会を参加生徒に提供している。
 
今回初めて実施した油粘土による理想の深海魚作りは、観察結果を頭の中で発展させ、悩みながら手を動かして形にするという創造的行為を生徒に体験させた。参加者の前で行わせた理想の深海魚の発表は、自身の創造物に関する考えを整理させ、言葉にして説明させることになり、ものづくりの裏にある考え方、創造の哲学を表現させることとなった。
深海魚調理実習は二回目の特別講義から実施している。洋上にて投棄される深海魚を調理し食すことにより、参加した生徒は未利用水産資源の有効利用を体験する。食糧の持続的利用、有効利用を体験したことになる。
今回の特別講義は、内容が多岐に渡りすぎ、用意した深海魚標本を観察する時間を十分に取ることができなかった。本特別講義の最大の特徴を十分に生かせなかった。過去七回の経験を元に、より高い教育普及効果を狙い、以下の特別講義を提案する。


1、「本物の深海魚を見て、触って、生き物の多様性を体験しよう」
対象:小学校高学年
目的:深海魚の観察を通して、生物種多様性を体験させる。
内容:魚類を紹介する講義と深海魚の観察。

2、「理想の深海魚を作ってみよう」
対象:中学生
目的:生物の体と生態・生活史に対する理解の深化。
内容:魚類の多様性と体の構造、生態に関する講義。あるいは研究紹介。深海魚の観察。油粘土による理想の深海魚作りと発表。

3、「深海魚を食べてみよう」
対象:高校生
目的:未利用水産資源である、洋上で投棄される深海魚を観察し調理することにより、生物資源の重要性と持続的利用を考えさせる。
内容:水産資源に関する講義。あるいは研究紹介。深海魚の観察。深海魚の調理実習。