成長する成蹊大生の図鑑

社会背景や文学的理論から考察する学びが
論理性の修得につながった

文学部 英語英米文学科 4年生(2022年度取材時)

2019年度入学

大分県立中津南高等学校出身

良作との出会いをきっかけに文学研究の魅力に目覚める

文学部英語英米文学科に入学して良かったと思うことの一つに『去年の夏 突然に(Suddenly Last Summer)』という作品との出会いがあります。きっかけは2年次に受けたアメリカ文学の授業で、その舞台版の台本を講読したことです。ストーリー自体が衝撃的な展開でとてもおもしろかったという点に加え、学術的な視点でストーリーを深く考察するプロセスが楽しく、文学研究の魅力に目覚める契機にもなりました。

子どもの頃から文学作品をたくさん読む方で、登場人物の心情などを深く考えるのが好きでした。入学前から考えていたことではありませんが、先生の専門的な知見を通じて、自分だけでは知り得ない文学作品の読み解き方に触れられることは、文学を専門的に学ぶ醍醐味だと感じています。

作品背景への理解が社会問題への関心に発展

また、英語英米文学科の授業では、作品そのものをじっくり掘り下げるだけでなく、舞台となった時代の社会背景から考えるアプローチが多かったです。『去年の夏 突然に』の舞台は20世紀初頭のアメリカで、当時は奴隷解放宣言を経てもまだ白人優位の思想が色濃い社会。物語のラストでは弱者である貧しい黒人の子どもが白人の大人を食べてしまうという衝撃的な展開があるのですが、物語そのものの文脈に加え、社会的地位の逆転という視点で見ると、作者が意図したメッセージが、浮かび上がってきました。そうした経験から、ストーリーを読み解くために学んだ、アメリカやイギリスの歴史や社会そのものへの関心も広がりました。例えばアメリカには、パーカーのフードを深く被るスタイルに対して嫌悪感を抱く価値観があります。それは犯罪のイメージと結びつくからなのですが、一方で1970年代に主に貧困層が暮らす街で生まれたヒップホップの定番ファッションでもあり、人種差別問題の複雑さやアメリカの文化を理解するための手がかりとして、とても興味深いと思いました。文学研究を通じて社会問題への意識が培われたことも、英語英米文学科の学びの成果だと感じています。

作品から社会問題の本質を読み解く

作品への考察が社会問題の深い分析につながることも、文学研究の意義だと感じています。文学作品は創作の要素を含むものですが、実在する社会が舞台となった作品については、書かれた時代の社会状況や人々の感情が反映されています。フィクションであってもそうした背景を根拠につくられている作品が多数です。もちろん、登場人物に感情移入して作品の世界にどっぷり浸かって読むのも文学作品の楽しみ方ですが、文学研究ではあくまで俯瞰する立場で、社会に潜在する問題を浮き上がらせるような読み方をします。社会問題で、困難に直面したり不利益を被ったりするのは、最終的には個人です。登場人物が向き合っている不条理が社会のどのような仕組みによってもたらされているのか、登場人物の感情も含めて考察するアプローチは、リアルな問題を考える際にも有用だと考えています。

目標から逆算して論理的に考える力を修得

文学作品には、音楽や絵画など他の芸術と同様に作品として成立させるための論理が存在します。起承転結の流れがしっかりしているか、登場人物の感情を度外視した展開になっていないかなど、作品を論理的に捉える力は、緻密にロジックが練られた良作の研究を通じて大いに鍛えられたと思います。また作品そのものを解釈する力が磨かれただけでなく、課題のレポートを通じ、根拠の明確さを重視するアカデミックライティングを経験する中で、自分の主張を筋道立てて展開する力も身につきました。特に意識したのは、最初に主張する自分の意見と結論が一致していること。結論へ至るまでに、根拠を破綻や矛盾がないように積み上げ一貫した主張にまとめ上げる。そうしたスキルは、社会でも大いに活かせると考えています。例えば、何か達成すべき目標があるときに、必要なタスクを見出して積み上げていくといったプロセスに応用できるはずです。

妥協なく探究する姿勢を大事にしたい

卒業後はさまざまな製品の原料を扱う鉄鋼専門商社に就職します。「鉄鋼」という業界に興味を持ったのは、社会を支えるさまざまな商品がある中で、その大本となる商材を扱う仕事がしたいと考えたからです。そうした発想に至ったのは、問題の根源に迫る英語英米文学科の学びの影響が大きいと感じています。アメリカ文学の背景にあるさまざまな社会問題に触れる中で、「社会に貢献したい」という意識が培われたこともそうですが、学びを通じて身につけた論理性を活かして、社会を安定させるために本当に必要なものを自分なりに突き詰めて考えたという面もあります。

現在はヘミングウェイの『老人と海』を研究対象に卒業論文に取り組んでいます。著名な作品であり、既に多数の論文がある故に、これまでにない新しい視点を見出すのに苦労をしていますが、「練り上げられた自分の見解を示すこと」に妥協することなく取り組んでいきたいと考えています。

データで見る成長した力

  • 大学IRコンソーシアム学生調査(アンケート)
    2022年度 3年生回答データより作成
  • 対象者数 成蹊大学:29名 全国:28,485名
  • 「増えた」は、「増えた」「大きく増えた」と回答した割合。「減った」は、「減った」「大きく減った」と回答した割合です。
  • TOEIC-IP(学内実施)の試験結果より作成
  • 2014~2022年度入学者の合算データ(1年次4月と2年次12月の平均点を比較)
  • 大学IRコンソーシアム学生調査(アンケート)
    2022年度 3年生回答データより作成
  • 対象者数 成蹊大学:29名 全国:28,482名
  • 「増えた」は、「増えた」「大きく増えた」と回答した割合。「減った」は、「減った」「大きく減った」と回答した割合です。
  • 大学IRコンソーシアム学生調査(アンケート)
    2022年度 3年生回答データより作成
  • 対象者数 成蹊大学:29名 全国:28,139名
  • 「満足」は、「満足」「とても満足」と回答した割合。
    「不満」は「不満」「とても不満」と回答した割合です。

※内容は取材当時のものです。