成長する成蹊大生の図鑑

企業との共同研究により
現場で応用可能な高い技術力を培った

理工学研究科 システムデザインコース
博士前期課程2年(2023年度取材時)

2022年度入学

千葉県立磯辺高等学校出身

人の心理にも注目する経営工学の視点で優良な生産ラインを追究

理工学部3年次から現在も師事している篠田心治教授の経営工学研究室で、製造業の効率的な生産ラインをデザインする研究をしています。大学院でも同じ研究室で研究を続けるか一度迷ったのですが、研究内容自体は魅力的でしたし、篠田先生の熱意に引かれたこともあり、研究室に残ることを決めました。私が研究対象としている生産ラインは、機械でオートマチック化されたものではなく、人の手作業を介するものになります。経営工学は、数字だけでなく、人間の心理も考慮する必要がある学問分野であり、私の研究でも全体の効率だけでなく、個々の「作業のしやすさ」なども含めて考察します。理系の研究でありながら文系的な要素を含むところが、この研究のおもしろさの一つだと思っています。

「研究室」でサポートする力が磨かれた

博士前期課程に進学してからは、学部のとき以上に後輩のサポートに力を入れるようになりました。経営工学研究室には、大学院生が学部生を手厚くサポートする伝統があり、私も大学4年生のときは先輩にたいへんお世話になりました。私の指導を担当してくれた先輩は、本当に面倒見のいい方で、「自分の研究はいつしているのだろう?」と思うくらい、私の研究をよく見てくれて、相談にも事あるごとにのってくれました。自分が大学院生になり後輩への指導で特に心掛けたのは、「話を最後まで聞き、決して途中で否定しないこと」。説明の途中で誤りと思われる内容があっても、最後まで聞かなければ最終的な正誤の判断はできませんし、寄り添ったサポートをするためには、それがどのような視点に拠るものなのかを正確に把握する必要があります。ただ私の言った通りにしてもらうのではなく、必ず一度は後輩に自分自身で考えてもらい、そこからアウトプットされたものに対して、改善し精度を上げていくためのヒントを示すといったスタンスを徹底していました。「先輩がいて本当に助かっています」という言葉をかけてもらったときは心からうれしかったですね。自分の研究と並行して後輩の研究をサポートするのは、かなり忙しかったのですが、おかげで成長を促しながらサポートする力が身につき、貴重な経験になったと感じています。

企業との連携により現場の感覚を研究に反映

企業との共同研究によって、現場の知見を取り入れた、より実践的な研究ができるようになったことも、学部時代からの大きな変化だと感じています。例えば、あるメーカーとの共同研究に取り組み、オフィス用の複合機で使用する製品の生産ラインをバーチャル上で評価するシステムを提案し、実装に向けたプロジェクトが進むまで漕ぎ着くことができました。「研究をする以上は、実際に役立つものをつくりたい」という思いを強くもっていたので、実用できるレベルの提案ができたことは自信になりましたし、企業の方と交流することで本当にたくさんの刺激を得られました。特に印象に残っているのは、研究室にいるだけでは想像できなかった現場の感覚に触れられたこと。製品の品質と生産のスピードの両者を担保するために、作業者にとっての「やりやすさ」はとても大事な要素ですが、一番合理性があると私が思った方法が、現場の方の感覚では必ずしもベストではない場合があります。打ち合わせ等の際に、「私の考えと異なるこの意見は、どのような経験がベースになっているのだろう?」といった想像を働かせながら聞くことで、相手の考えやニーズを洞察する力が磨かれたと感じています。「人の感覚」への考慮が欠かせない経営工学を追究する私にとって、リアルな現場の感覚を学ぶ貴重な経験でした。

試行錯誤を重ねハイレベルな学会発表を乗り越えた

博士前期課程1年の秋には、経営工学を研究する全国の大学院生が集い、研究成果を発表する学会に参加しました。その準備の過程では、先生からこれまで以上に高い精度を求められ、試行錯誤を重ねる中で、最後までやり遂げ、「自らの研究を説明できる力」が身につきました。レポートを何度出してもなかなか先生からOKをもらえず、どこが悪いのかをなかなか見出せない日々が続きました。ただ、「根本に立ち返って考える」「指摘を受けた箇所以外に原因がないかも探ってみる」といった方法で粘り強く取り組み、本番に向けて着実に精度を上げることができました。取り組んでいた当時はとても厳しいと感じましたが、振り返ると、教え子に「恥ずかしい発表をしてほしくない」という先生の親心だったのだと思います。

「実際に役立つ技術」を社会でも追究したい

博士前期課程を修了した後は、メーカーの生産性を向上させるシステムを提供するIT企業でSEとして勤務することが決まっています。私と同様の専門分野をもつ学生は、メーカーで自社の生産システムを担当する人も多いのですが、自社に最適なシステムだけを考えて終わりではなく、私の専門知識をいろいろな領域に応用したいという思いがあり、メーカーを支える立場の内定先を選びました。大学3年次には、大学院に進まず就職することも一度考えましたが、文系の学生に交じってインターンシップなどに参加する中で「興味関心が定まっておらず、明確な強みもない状況では就職したくない」と思い、大学院への進学を決めました。

大学院での2年間で、専門性に磨きをかけられたのはもちろん、企業との共同研究に取り組む中で、「実際に役立つものを作る」というエンジニアとしての思いを体現することもできました。学部から大学院に至る成蹊大学での6年間の学びを活かし、クライアントに本当に必要とされる提案をしていきたいと考えています。

データで見る成長した力

  • 成蹊大学調べ(2016〜2022年度実績より抜粋)
  • ベネッセ i-キャリア「GPS-Academic」(アセスメントテスト)2019~2022年度 3年生、2021~2022年度
    博士前期課程1年生受検データより作成
  • 対象者数 3年生:1,090名、博士前期課程1年生:64名
  • ベネッセ i-キャリア「GPS-Academic」(アセスメントテスト)2019~2022年度 3年生、2021~2022年度
    博士前期課程1年生受検データより作成
  • 対象者数 3年生:1,085名、博士前期課程1年生:64名
  • ベネッセ i-キャリア「GPS-Academic」(アセスメントテスト)2019~2022年度 3年生、2021~2022年度
    博士前期課程1年生受検データより作成
  • 対象者数 3年生:1,085名、博士前期課程1年生:64名
  • 「①非常にあてはまる/②ややあてはまる/③あまりあてはまらない/④まったくあてはまらない」のうち「①非常にあてはまる」「②ややあてはまる」と回答した割合。

※内容は取材当時のものです。