成長する成蹊大生の図鑑

好奇心を追求しながら、
研究者としての素養を育める環境があった

理工学部 物質生命理工学科 生体分子化学研究室 4年生(2022年度取材時)

※2022年4月より理工学部は1学科5専攻に改組しました

2019年度入学

茨城県立竹園高等学校出身

研究者として「何を追究するか」を入学後に見極めたかった

私は大学入学前から、卒業後は大学院に進んで研究職をめざしたいと思っていました。ただ高校生の当時は、どのような専門分野が自分に合っているのかをまだ見極められずにいました。そのようなときに目についたのが、物理や化学、生物を幅広く学んでから専門分野を決められる成蹊大学理工学部のカリキュラムでした。

オープンキャンパスで説明を聞いてさらに興味が深まり、緑豊かなキャンパスも魅力的に感じたことから、最後は「ここしかない」という気持ちで入学を決めました。

有機化学の視点で生命を解析する研究に心引かれた

大学入学当時は、物理、化学、生物への関心の度合いは同じくらいだったのですが、それぞれの系統をまんべんなく学ぶ中で、現在の指導教員である戸谷希一郎先生の有機化学と生命科学を融合した研究と出会い、生命の現象を有機化学の視点で解明するアプローチのおもしろさを知りました。生命は、生きるためにさまざまな活動を生体内で繰り広げています。そこでは、同じ原子で構成される有機化合物であっても、その立体配置が変わるだけで、働きが大きく変わるといった機能変化が発生しています。そうした点に注目しながら生物の事象を解明しようとする考え方が、当時の私にはとても新鮮に映りました。授業の科目は、シラバスをよく読み、興味を引かれたものを履修するようにしていたのですが、戸谷先生の授業と出会ってからは、自然と化学系と生物系の割合が多くなっていきました。

専門性とともに「論理的に考え説明する力」を修得

3年次後期に研究室に所属してからは、論理的に考え説明する力、物事に取り組むときの根気強さが鍛えられたと感じています。所属した当初は、担当している研究の内容をきちんと説明しようと思っても、初見の相手に対して説明すべきことが欠けてしまい、前提の部分から質問をされてしまうことが多くありました。この「うまく伝えられない」もどかしさを払拭するため、助教の先生にも相談して心掛けたのは、結論の理解に必要な前提や根拠をしっかり示すこと。過程を共有できている相手に対しては、結論だけで話が通じることもあるかもしれませんが、相手にとって新しいことを説明する場合は、前提や根拠の提示が必須となります。また質疑応答の場を発展的な学びにつなげられるように、説明後にありそうな質問を予測して関連するデータを用意するようにしました。研究室では定期的に進捗状況を報告するミーティングを行っているのですが、そうした工夫の甲斐もあり「伝わっている」手応えを徐々に感じられるようになりました。「自分の考えが正しいかを論理的に検証し整理したうえで話す」という意識を持ったことも、説明する力を伸ばすことができた一因だと感じています。

根気強さが身についたことについては、実験がうまくいかないときに、失敗から目を逸らさず一つひとつ原因と向き合いながら取り組んできた経験が大きいと思っています。何がいけなかったかを諦めずに考え、それでもわからなければ先輩や先生に質問する。そのようにして目標を持って研究に臨む中で、研究者としての自立心が芽生えてきたことも、根気強さの体得を後押ししてくれたのだと思います。

がん治療に貢献する診断方法を研究

現在私が取り組んでいる卒業研究のテーマは、「がん細胞表面カルレティキュリンに対する蛍光モニタリング法の開発」。がん細胞に光を発する蛍光プローブというものを添加したうえで、抗がん剤を投与することで、抗がん剤の効き方を可視化する方法を研究しています。抗がん剤には、副作用が大きく体への負担が重いものが多くあります。その薬が患者さんに合っているかを見定めるには、継続して投与し経過を観察する必要がありますが、それでは判断に時間がかかり、体に合わない薬を一定期間使い続けるリスクを負う可能性もあります。もし薬の効き方を投与してすぐに確認できれば、抗がん剤が患者さんに合うかを早期に判断でき、安全かつ効果的な治療法の検討に役立てることができます。この研究をうまく応用すれば、薬の効果を判断するのに1か月を要したものが1日で済むようになる可能性もあり、患者さんの負担軽減にも役立てることができます。

大学卒業後は、成蹊大学の大学院に進み、同じ研究室でこの研究を継続する予定です。学部から大学院に進学することで、求められる専門性のレベルはもちろん、責任もいっそう求められるようになると思います。研究の成果を追究するだけでなく、研究者としての主体性もさらに磨いていければと考えています。

「人の役に立つこと」を軸に据え、
研究に邁進したい

戸谷先生の研究室には、真摯に研究に取り組む緊張感がありながら、お互いを尊重し合いコミュニケーションが取りやすい雰囲気があります。専門知識に加えて論理的に説明する力を伸ばせたのも、先生にも先輩にも質問しやすい環境があったからこそだと思います。

私が研究の道を進むうえで大事にしたいのは、常に「人のため」を意識して取り組むこと。どのような研究も成果が出るまでには、目の前のことに根気強く向き合う必要があり、多くの時間と労力を要します。研究の中には、研究室で代々引き継がれたり、他の研究で応用されることで役に立ったりするものも多くあります。学術的な好奇心がモチベーションを支える面もありますが、「最終的に臨床の場で役立てるために取り組む」という視点を忘れずに、これからも研鑽を積んでいきたいと思っています。

データで見る成長した力

  • 大学IRコンソーシアム学生調査(アンケート)
    2022年度 3年生回答データより作成
  • 対象者数 成蹊大学:19名 全国:28,494名
  • 「増えた」は、「増えた」「大きく増えた」と回答した割合。「減った」は、「減った」「大きく減った」と回答した割合です。
  • 大学IRコンソーシアム学生調査(アンケート)
    2022年度 3年生回答データより作成
  • 対象者数 成蹊大学:19名 全国:28,644名
  • 「あった」は、「ときどきあった」「ひんぱんにあった」と回答した割合。「なかった」は「まったくなかった」「あまりなかった」と回答した割合です。
  • 大学IRコンソーシアム学生調査(アンケート)
    2022年度 3年生回答データより作成
  • 対象者数 成蹊大学:19名 全国:28,489名
  • 「増えた」は、「増えた」「大きく増えた」と回答した割合。「減った」は、「減った」「大きく減った」と回答した割合です。
  • ベネッセiキャリア「GPS-Academic」(アセスメントテスト)
    2022年度 3年生受検データより作成
  • 対象者数 成蹊大学:50名 全国:63,957名

※内容は取材当時のものです。