中村春二を知る

卒業生に贈った言葉
(たしかな足ぶみ・処世七則)

卒業生に贈った言葉(たしかな足ぶみ・処世七則)

たしかな足ぶみ

(旧制成蹊中学校の卒業生へ)

君たちは世の中に出た
学校の窓から見た世の中とは随分と違って居るだろう
がっかりした事もあろうし又こいつは面白いと思った事もあろうけれども
毎日おなじような仕事をくりかえす事はいやに誰も思っていよう
そしてこんなで一生を送ってはと思う折があろう
しかし毎日目先が変わる事が生きるための必要な条件だろうか
又目先が変わらなければ人の目的がとげられないか
太陽は東から出て西にはいる 冬が去れば春が来る 昼の次は夜だ
自然のもの皆がおなじ軌道を通っている
毎日おなじ仕事をする事をつまらぬと思うものはあわれむべき人だ
同じ仕事の内に種々のふかい意味が潜んでいる
ひとの世の旅路をふりかえって見るとその道の面白さや変化が嬉しいのじゃない
同じ仕事の内に種々のふかい意味が潜んでいる
その旅路をふみしめる自身の一足一足の確かさが大事なのである
君達は日々の旅路をしっかり踏みしめて進みたまえ
この気持ちを失わなければいつとなく知らぬまに緑の山
清い泉の楽しい村里にふみ入れるだろう

『桃源』4号より(原文を常用漢字・現代仮名遣いに改めた。)

処世七則

(成蹊実務学校 第一回卒業生へ)

処世七則
処世七則
第1回卒業式(1916年)
第1回卒業式(1916年)
最後列左から4人目が中村、その左前方に和服姿の今村がいる

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