研究活動紹介

研究活動紹介
再生可能エネルギーと水素社会に向けた取り組み

環境材料化学研究室 里川 重夫教授

1988年早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程修了. 1988年東ソー株式会社研究所,1994年東京ガス株式会社研究所の勤務を経て,2006年成蹊大学理工学部助教授,2007年より現職.2014年よりJST-CREST研究代表.1998年度(一社)日本粘土学会奨励賞,2005年度(一社)触媒学会奨励賞授賞.触媒学会,石油学会,ゼオライト学会の役員,委員等を歴任.専門分野は,無機材料,触媒化学,エネルギー工学,博士(工学).

再生可能エネルギーと水素・燃料電池の関係

自然エネルギー、再生可能エネルギーという言葉は、最近良くマスメディアでも取り上げられ、世界的に注目されています。
従来のエネルギー源である化石燃料は石油や石炭のことで、これらは化学エネルギーなので貯蔵が容易なのですが、太陽光や風力発電などで得られる再生可能エネルギーは電気エネルギーなので貯蔵することが出来ません。そこで注目されたのが化学エネルギーである「水素」です。
水素(H2)が注目されるのは、水素は二酸化炭素を排出せずにエネルギーを持つことが出来る物質だからです。電気エネルギーを水に作用させるとエネルギーは水素に乗り移ることが出来、水素に乗り移ったエネルギーがまた酸素と化合すると電気を出します。最近、騒がれている燃料電池はその間に入り、電気と水素の変換反応をサポートする役割をしているのです。ただ、水素は気体なのでそのままではちょっと不便です。

少しメジャーになった
「水素キャリア」

従来、電気エネルギーは送電線を通して供給する方法しかありませんでした。
しかし、太陽光、風力などの自然エネルギーを集めている場所は、ほとんどが人の住んでいない広大な土地があるところなので、電気を送るインフラ設備を整えるには膨大なコストが必要になります。
そこで登場したのが、電気の持つエネルギーを液体にして容器に入れ、貯蔵する「水素キャリア」なんです。電気を好きな時に好きなだけ貯めたり運んだり出来れば、様々な形で社会貢献出来ますよね。

臭いけど注目!
水素キャリアとしてアンモニア

「水素キャリア」の研究は様々な形で進められていますが、水素を液化水素するにはマイナス253℃まで冷やさないと液化しないので、たくさんの(膨大な?)電力が必要となります。
そこで注目されているのが液化水素に比べ、マイナス34℃で液化することが出来るアンモニアです。アンモニアは肥料などにも使われ、世界中で最もたくさん作られている化学物質でもあるのです。
さらに、アンモニアは窒素と水素で形成されているので、水素を取り出した残り(窒素)は空気中に戻せばいいということになります。最近「水素キャリア」として注目されているメチルシクロヘキサンは常温で液化されているので冷やす必要はありませんが、水素を取り出した後にはトルエンが残りますので、送り返す必要があります。
このようにそれぞれにメリット・デメリットがあるので、将来はどれが本命になるのか、現状では決められないというのが最新の科学のスタンスなのです。

触媒技術を基盤とした新技術に
チャレンジ

エネルギー資源の有効利用や大気環境浄化のための化学プロセス及び触媒技術に関する研究を行っています。水素と窒素からアンモニアを合成する触媒やアンモニアを分解して水素を取り出す触媒の研究もその一つです。さらに、触媒化学と電気化学を融合して水と窒素に電力を作用させて一段でアンモニアを合成する研究にもチャレンジしています。興味のある方はぜひ研究室へお出でください。