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【報告】ワークショップ「文楽と出会う」

担当者所属:成蹊中学校 
担当者名:特別研究グループ歌舞伎 主宰 宮本浩司

1.タイトル
ワークショップ「文楽と出会う」

2.活動日時・場所
2020年 2月16日(日) 15:00~   
成蹊中学・高等学校大教室

3.参加人数
東京都内の中学校・高等学校8校(生徒・教員 約60名)

4.活動内容
あいにくの雨天の日曜日の午後でしたが、多くの参加をいただきました。普段触れることのできない古典芸能、中でも文楽の語りの力を身近に感じ、古語や時代背景などの壁を越えて、引き込まれて聞き入る参加者の表情が印象的でした。

出演:太夫 竹本小住太夫 三味線 鶴澤清公

プログラム:
・浄瑠璃解説
一人ですべての人物の台詞、ト書きまでを語り、節をつけて歌う語りの技術と、三味線の歴史や種類、単なる伴奏楽器ではなく登場人物の心理や状況を描き出す三味線の多様な効果について実演を交えて解説がありました。続いて『仮名手本忠臣蔵』の「裏門」の場面の一節を、実際に三味線に乗って、声を出して体験しました。会場から一名壇上で、太夫に挑戦もしてもらいました。

・文楽の物語を演じてみよう
当日上演する演目『菅原伝授手習鑑』の「喧嘩の段」の一部を、わかりやすく現代語に直した台本を3校の演劇部の生徒さんに違ったスタイルで演じてもらいました。
まず一校目、日大二高の女子4名による朗読劇。4名の登場人物をト書きを含めてそれぞれに語ります。男性の役を演じることで、声の使い分け、台詞と説明との違いなど、語り分けの難しさを体験してもらいました。併せて物語の内容を観客にも理解してもらいました。
2校目は、成蹊の中高生で、高校生の女子4名が朗読し、そこに中学生の男女がそれぞれの役で語りに併せて動くという、人形浄瑠璃ならぬ人間浄瑠璃。合わせることの難しさを体験してもらい、実際、文楽では本番の前日1日しか、浄瑠璃と人形は合わせ稽古をしないと聞いて、皆驚きました。これは、型があるからこそ可能なのだと、日本の伝統芸能の奥深いところを知ることになりました。
最後は、深川高校の男子1名による、全役の語り分けの挑戦です。男女2名ずつの登場人物、その違いと、喧嘩に至る気持ちの流れを一生懸命に演じてくれました。これは、このあとの太夫さん達の上演と照らし合わせて、なじみのある落語などと違った、素浄瑠璃の芸について、その特徴を考えてもらうヒントにしてもらいました。

・上演
今回の講師のお二人による 素浄瑠璃での「喧嘩の段」の全段上演です。
人形のない文楽のワークショップはハードルが高いと心配しましたが、空気を伝わって響いてくる声の力、太棹三味線の迫力、いがみ合う兄弟、見守るそれぞれの妻達、血気盛んな若者の同士の取っ組み合いの喧嘩は目に浮かぶように語られました。最後に、必ず、閉じた床本(台本)を捧げ持って一礼するところに、作者・作品への敬意が示され、礼を重んじる古典芸能の世界の空気を感じることもできました。

5.成果と課題
どんなことでも、最初の出会いというのはとても大事です。参加者からは、大人からも学生からも良い学びの機会であり、出会いの場であったと好評を頂戴しました。みんなで三味線に乗って語る体験で、その台詞に「やあ、やあ、勘平(か~んぺ~い)」と声をあげるところがありました。お子さん連れで参加した方がいて、さっそく家に帰ると、「やあやあ かあ~さ~ん」と真似をしていたとのこと。今回参加された方の心の中に、何かの種をまくことはできたようです。こうした、古典芸能との出会い、知る機会を今後も作っていきたいとあらたに思いました。