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エヴァン ピーター ダニエル教授
インタビュー

時代や国籍、人種を超えて。
自分自身の目と心で世界と出会うために。

「私と成蹊大学とのつながりは、私がケンブリッジ大学の大学院生だった約15年前までさかのぼります」と語る経営学部のエヴァン ピーター ダニエル教授。時を経て、現在は成蹊大学の教員として、EAGLE生がケンブリッジ大学へ短期留学するための準備や、中世イングランドの歴史や文化に関する学びを授けています。目指すのは、学生たちがオープンな心で世界と出会い、どんな環境でも自らの考えや自分らしさを表現できるようになることです。

profile

エヴァン ピーター ダニエル教授

2000年にアメリカ・インディアナ大学を卒業後、2004年にイギリス・ダラム大学で修士号(MA in Medieval History)、2011年にケンブリッジ大学大学院で博士号(PhD in Anglo-Saxon Norse and Celtic)を取得。2011年より成蹊学園国際教育センターの常勤講師を務め、2014年に成蹊大学経済学部准教授。2020年より成蹊大学経営学部教授。専門は文献学で、中世イングランド史およびその周辺国との関係を政治や宗教、言語の側面から研究している。

インタビューを読むread the interview

Q01成蹊大学で教えることになった経緯を教えてください。read more

私が通っていたケンブリッジ大学ペンブルック・カレッジは、成蹊学園の創立に深く関わった岩崎小弥太が明治時代に留学したこともある、成蹊大学と縁の深いカレッジです。私と成蹊大学とのつながりが出来たのは約15年前。当時、ケンブリッジ大学院生だった私は、日本からの留学生に英語を教えていたのですが、成蹊大学の学生は留学プログラムを楽しみながら真面目に取り組んでいて、とても好印象でした。逆に、私がケンブリッジ大学ペンブルック劇団の運営メンバーとして成蹊大学を訪れたこともあります。成蹊大学とは何かと縁があったんですね。博士号を取得した後に来日し、成蹊学園国際教育センターで常勤講師として働くことに。その後、成蹊大学の教員となって現在に至ります。いまはイギリスの文化や歴史、英語の授業を受け持っているほか、EAGLE生の実りある留学のために、滞在先の文化や背景知識、アカデミック・スキルを教えています。

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Q02専門分野である中世イングランドの歴史や言語に興味を持ったきっかけは?read more

私はアメリカで生まれ、10歳の時にイギリスに引っ越しました。その異国の地で目にした古い遺跡や城、教会などに心惹かれ、中世イングランドの歴史や文化に興味を持ちました。あの頃は、ロビン・フッドやキング・アーサーごっこをして遊んだものです。きっと、他国からやって来たアウトサイダーとして異文化に出会ったからこそ、余計に興味が湧いたんだと思います。

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Q03現在、エヴァン先生がEAGLEで担当されている1年生の授業「Global Studies Seminar I」は、どのような内容ですか。read more

「Global Studies Seminar I」では、主に1年生の夏に実施される、私の母校でもあるケンブリッジ大学ペンブルック・カレッジへの短期留学に向けた準備を行います。コロナの影響で、残念ながら短期留学自体は実施できていませんが、EAGLE生がスムーズに留学できるよう、世界基準のノートテイクやディスカッション、プレゼンテーションスキルの習得をはじめ、イギリスの歴史や文化についても学びます。

また、ケンブリッジでの大学生活の紹介や短期留学中の週末の過ごし方の計画など、学生たちが現地での生活を具体的にイメージできるような取り組みもしています。学期末には最終プロジェクトとして、それぞれが作成したイギリスでの週末プランを発表するワークショップを行います。過去には「The Beatlesゆかりの地めぐり」「サッカーチームの聖地巡礼」などのプランのほか、幼い頃にホストファミリーとして英国からの留学生を受け入れたことのある学生が、その留学生の故郷であるスコットランドの小さな村を訪ねるプランを考案したこともあります。学生一人ひとりの個性が光りますし、長年イギリスに住んでいた私でも知らないスポットも出てきて、とても楽しいです。

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Q04「Global Studies Seminar I」で心がけていることをお聞かせください。read more

学部や専攻を超えた仲間意識を育んでもらえるよう、授業のはじまりはカジュアルな雰囲気になるよう心がけています。学生同士がお互いを知ることができるように、グループワークやディスカッションを多めにしていますね。学生たちは皆、留学に対して強い興味を持っていますので、共同でプロジェクトを進める中で自然と仲間意識が生まれ、コミュニティが出来上がっていきます。

それに加えて、ノートの取り方や論文の書き方、引用方法、盗用・剽窃に関するルールなど、成蹊大はもとより海外の大学で学ぶ際に必要となるスキルに特化した授業も行うよう意識しています。

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Q052年生の授業「Regional Studies」もご担当されていますね。こちらについてもお聞かせください。read more

「Regional Studies」では、古代・中世の文献や遺物、建築などの資料を通してイギリス文化がどのように形成されたかを学びます。たとえば、中世社会の身分制度、キリスト教と教会など、文化の背景にある歴史的トピックを取り上げます。授業に用いる資料はテーマによってさまざまです。古代の遺物を実際に手にとって本来の用途を探ってみたり、中世の音楽を聴いてどの身分の聴衆を想定して作られたのかを考えてみたり。キリストの磔刑図も興味深いモチーフです。アングロ・サクソン時代のものですと、キリストの表情は平和的に描かれているものが多いですが、14世紀になると写実的になり、苦しんだ表情のものが多く見られます。

言語に関するエピソードで学生たちが驚くのが、11世紀に起こったノルマン征服の影響です。支配階級・貴族階級はノルマン人で占められたため、フランス語が公用語となり、英語は庶民が話すものだった。「当時の偉い人は、英語を喋れなかったんだよ」と話すと、皆びっくりしますね。

このように、資料からさまざまな形に用いられた英語や歴史、文化を知ることで、語学力だけでなく、海外をフィールドに活躍するための豊かな教養を育むことができるのです。

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Q06「Regional Studies」では、どのような点を意識して授業を展開していますか。read more

他国の、しかも中世という遠い昔の歴史を学ぶので、学生たちがそれらを身近に感じてもらえるような工夫を心がけています。歴史の授業というと、教員が史実をきれいにまとめて説明するイメージがあるかもしれません。しかし、実際に歴史を研究する時は、遺物などの本物に触れて、当時の様子を読み解いたり、調査したりするわけですから、学生にもそういう経験をしてほしいんです。

授業では毎回、私が収集したコレクションの中から、トピックに合った写本やコインなどの実物を持参して、学生たちに実際に手にとってもらうようにしています。知識とともに実物に触れた時、学生が何を考えるか。そこを大事にしたいと考えています。

その他にも、アングロ・サクソンの写本に残された「なぞなぞ」を通じて、1000年以上前に生きた人たちと知恵比べのゲームをすることもあります。具体的な例を一つご紹介しましょう。「私は誰も傷つけたくないですが、私を切った相手を泣かせてしまいます。私は誰でしょう?」。答えは、タマネギです。このような問題に接することで、遥か昔に生きた人々との距離が縮まり、時差がなくなります。

Regional Studiesの授業中、中世のコインや写本を見せるエヴァン先生。1611年にイングランド王ジェームズ1世の命によって作られた英訳聖書の貴重な1ページも登場。

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Q07英語自体を習得するだけでなく、学生の考えを引き出すことも重視されている印象です。read more

EAGLEでは英語はコミュニケーションツールであって、目的ではありません。そもそも、学生自身に意見や考えがなければ、どんな言語でも役に立つものではないと考えています。クラスには英語で明確に自分の意見を伝えることが得意な学生もいれば、英語に関しては少し助けが必要な学生もいます。でも、彼らの考えにこそ、きらっと光るものがあるんです。もちろん、ある程度の英語力は必要ですが、私の授業では学生が自分の考えを皆と共有することを重視しています。

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Q081年生の夏という早い段階で短期留学をすることの意義とは?read more

EAGLE生の多くは、2、3年次に中長期の本格的な留学を希望しているので、1年生での短期留学の経験は、その足掛かりになるものです。大学生活の早いうちにノートの取り方や引用方法など大学で必要とされるアカデミック・スキルが重要であることがわかり、それらのスキルを身につけるモチベーションにもつながります。また、現地の学生や教員たちとの交流を通して、自分がどれだけ成長したか、目に見える形でその手応えを確認することもできるよい機会だと思いますね。

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Q09エヴァン先生が考える「グローバルな人材」とは?read more

最近は「グローバル」という言葉が流行っていますよね。「グローバルな人材」=「英語力がある人」というイメージがあるかもしれませんが、「グローバル」に活躍できる能力というのはどんな環境でも通用する能力だと思うんです。オープンかつ批判的に考えられること、幅広い経験や知識、学んだことを活用できること、はっきりと自信を持って自分を表現できること......。これらはどんな環境でも役に立つ能力なのではないでしょうか。

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Q10EAGLEを通して学生たちに学んでほしいことは?read more

何事も一般論で片付けてしまうのではなく、自分の目と心でしっかりと世界と向き合ってほしいです。これから出会う人たちや経験すること一つひとつに対して真の意味で心を開き、国籍や人種、ジェンダーなどを根拠にステレオタイプなレッテルを貼ったり、決めつけて分類しようとしたりしないこと。そうやって、さまざまな国の人々や異文化と向き合ってもらいたいです。

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