コラム

シリーズ"SDGs副専攻"科目紹介 第3回「野外自然教育論」

成蹊大学には、所属する学科の専門分野の学びにプラスして、学生自身の興味・関心やニーズに沿った学修を進められる副専攻制度があります。"SDGs副専攻"では、「環境・地域」、「国際理解」、「人権・共生」の3つの側面に関する科目やそれらの「実践」に関する科目をバランスよく学ぶことにより、持続可能な社会の実現に貢献するための素養を身に付けることを目指します。第3回は「野外自然教育論」について紹介します。

■担当教員
保母禎造 非常勤講師(成蹊中学・高等学校教諭)

■授業のテーマ
野外活動などにおける自然体験学習は自然を心で感じることで、自然を愛する気持ちや自然と共生する感覚を育むことにつながります。良質な自然学習を提供するために必要な、野外自然教育の理論とスキルを実践的に学び、さらに、学校内外の教育活動における環境教育やESDの推進について考察します。

■主な授業の内容
野外体験・自然体験の重要性、教育活動しての野外学習、野外教育・自然教育の歴史、環境教育・自然保護教育、野外自然教育とESD、野外自然教育のアクティビティとプログラム、野外自然教育の指導と安全管理、学校教育での野外自然学習、社会教育などにおける野外自然教育、学齢に合わせた野外自然教育など

■関連するゴール
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▽筆者の授業体験レポート
 授業は、「林苑」でのアクティビティから始まりました。林苑は、大学キャンパスの隣にある成蹊中学・高等学校の敷地の南西に100年近く存在する木々で、学園全体の樹木の約3割が立ち並ぶ場所です。木の葉が色付き、落葉の絨毯も広がっていて、秋の深まりを感じることができます。
 この日のアクティビティは「カメラゲーム」。ペアになり、写真家役とカメラ役を決めます。写真家役は、林苑の中で気に入った場所、写真に収めたいものを探します。見付かったら、望む写真が撮れる位置まで、目を閉じたカメラ役を連れていき、シャッターを切ります(カメラ役の肩をたたいて合図)。カメラ役は目を開け、見えたものを味わいます。この要領で、役を交代して3回行った後、カメラ役の時に記憶した景色のうち一番印象に残ったものをカードに描きます。最後に、カード(写真)を交換し「写真家役として、どうしてこの景色を撮影したのか」「カメラ役となった気持ちはどうだったか」等を話し合って終了です。
 その後、教室に戻って、前回の授業に関するレポートを共有しました。「同じ場所(林苑)での活動でも、毎回見え方が違い、様々な楽しみ方がある」「自然の中の形に注目することで、トカゲが逃げる道や葉っぱの落ちる軌跡などに気付くことができた」「野外での体験を通して、危険性も含めて自然への理解が深まると思う」「自然の中で過ごすことが、おのずと自然に関心を持つことにつながっている」等の声があり、受講している学生たちが林苑での時間を味わい、自然を身近に感じていることが良く分かります。
 最後は、これまでの授業で学んできた環境教育とESD・SDGsとの関わりについての講義です。経済成長に伴う公害や自然破壊に端を発する環境教育は、やがて先進国だけではなく地球規模の課題として捉えられるようになります。そこに持続可能性という概念が加わり、環境保全と経済成長の調和を図りながら、将来にわたって適切に社会を維持、発展させようとする「持続可能な開発」に展開します。その「持続可能な開発」のための教育がESD、具体的な目標がSDGsです。
 今回授業に参加して、ESD・SDGsについて考えるとき、授業の中で共有された学生のレポートを思い出します。野外(林苑)での体験活動は、確かに自然環境に対する親しみや関心を育んでいます。自らの体験から生まれる興味・関心こそが、持続可能な社会を考える礎になるのではないでしょうか。

■保母講師からのコメント
 自然そして環境への興味・関心が、それを守ることへの原点であることを感じて欲しいと考えています。一般的に野外における自然体験が減少している状況で、学生たちが実際に簡単な活動を行い自然体験を経験することで、野外自然教育に対してのイメージを共有します。そして、体験したことや講義から感じたり考えたりしたことをわかち合い、それぞれの認識や考えを深めます。さらにSDGsに関して具体的な体験することで、将来どのような立場であっても環境教育やESDを意識した活動を、実践することにつながって欲しいと期待しています。

(サステナビリティ教育研究センター事務局 平林)


▽もっと紹介…「野外自然教育論」で行ったネイチャーゲームアクティビティ

はじめまして: 「なにか生きものを育てたことがありますか?」「森のなかで読みたい本がありますか?」などお互いの自然体験を紹介しあうゲーム

フィールドビンゴ: 「ぬけがら」「ちくちくするもの」など色々な感覚を使って自然の宝物を探すゲーム

サウンドマップ: 聞こえてくる音をサインやマーク、記号などに変換し地図で表現するゲーム

フィールドパターン: 自然の中から「ハート型」「渦巻き状」「W(ダブリュー)」などの形のものを見付けるゲーム

SDGsディスカバーウォーク: まちを歩きながら、「風を感じる」「飲める水」「自然素材を利用したもの」などのアイテムを探し、見付けたものや体験したことをチェックしていくゲーム

SDGsアクションビンゴ: ビンゴ形式で、家庭や個人で手軽にできるSDGsへの取組みに継続的にチャレンジするゲーム