コラム

シリーズ"SDGs副専攻"科目紹介 第2回「共生社会トピックス(アートと社会)」

成蹊大学には、所属する学科の専門分野の学びにプラスして、学生自身の興味・関心やニーズに沿った学修を進められる副専攻制度があります。"SDGs副専攻"では、「環境・地域」、「国際理解」、「人権・共生」の3つの側面に関する科目やそれらの「実践」に関する科目をバランスよく学ぶことにより、持続可能な社会の実現に貢献するための素養を身に付けることを目指します。第2回は、対象科目のうち「共生社会トピックス(アートと社会)」について紹介します。

■担当教員
文学部 芸術文化行政コース 槇原彩 客員講師

■授業のテーマ・概要
「アートプロジェクト」は、おもに1990年代以降、日本各地で展開されている共創的芸術活動のことです。近年では、拠点づくりやコミュニティの課題を解決するための社会実験的な活動、芸術以外の障害福祉や教育、医療などの分野までその影響が波及しています。授業では、実際におこなわれている多様な「アートプロジェクト」の実践を紹介し、「芸術と社会の関係性」について思いを巡らせながら、考察を重ねていきます。

■主な授業の内容
自分にとって「芸術」とはなにか見つめなおしてみよう、アートプロジェクトとは?、美術とアートプロジェクト、音楽とアートプロジェクト、映画とアートプロジェクト、演劇とアートプロジェクト、アートプロジェクト体験、社会の課題と向き合うアートプロジェクトなど

■関連するゴール
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▽筆者の授業体験レポート
 この日の授業は、前回までの授業で取り上げてきたアートプロジェクトの事例や、アーティストを招いてのゲスト講義についてのまとめです。
 「まちづくり×アートプロジェクト」では、アーティストと地域住民、その才能と創造性、アートプロジェクトに関わった人たちが考える方向性の多様さ等、様々なものが組み合わさったところに、既存のコミュニティの活性化、さらには新たなコミュニティの形成が実現されるということが示されました。自主的な学びを生み出し、自己実現の場にもなりうるというところにも希望を感じました。
 「ホスピタルアート」に関する話では、院内環境改善の例だけでなく、アートフェスタを開催している病院の活動事例も紹介され、芸術を前に、医師と患者の関係がフラットになり、地域社会と患者との交流が生まれている様子を知ることができました。
 その他にも、教育との連携、福祉施設や社会的支援を必要とする人のコミュニティとの協働活動、国内に在留する海外ルーツの人びとの日本での日常生活に焦点をあてたアートプロジェクトなどの事例を通じて、社会のなかで「芸術」が発揮できる力や可能性について考える機会を得ることができました。自分と「芸術」との関わり方にも変化が起こりそうです。

▼槇原講師からのコメント
現在、芸術文化は社会を構成する一要素としてだけでなく、他領域をつなぐかすがい・・・・としてみなされるようになりました。「アートプロジェクト」は、日本各地で展開されている共創的芸術活動のことです。現代美術にダンス、音楽、演劇など、さまざまな芸術ジャンルで織りなされており、アーティストたちは、美術館や公共ホールなどの施設から飛び出して、野外やまちなか、廃校、廃屋、古民家などで展覧会や演奏会をおこないます。さまざまな属性の人びとが関わるコラボレーションと、それを誘発するコミュニケーションが生じていること、作品を展示や上演するだけでなく、多彩な社会的事象と関わりながら展開されていることが特徴です。特に近年では、拠点づくりやコミュニティの課題を解決するための社会実験的な活動、芸術以外の障害福祉、教育、医療などの分野まで、その影響が波及しています。もしかしたら、皆さんもまちなかで見かけたり、意図せず参加したことがあるかもしれません。私たちの"日常"の一瞬に入り込み、儚い"非日常"をうみだしているアートプロジェクト。ぜひ探してみてくださいね。

(サステナビリティ教育研究センター事務局 平林)


左下および右下の写真:成蹊アートプロジェクト「マノ・マノ・ムーチョ!」の様子(撮影:冨田了平)

▽もっと紹介…成蹊大学のアートプロジェクト

「成蹊アートプロジェクト」は、成蹊大学と武蔵野市行政、市内の市民文化団体やNPO法人等の官民学が連携し、武蔵野市における共生社会の実現を芸術文化の観点からめざすアートプロジェクトです。2020年度より本学文学部に新しく設置された芸術文化行政コースの学生が、実際に地域へとびだし、行政職員や市民とコミュニケーションをとりながら、主体的に企画制作を行ないます。「マノ・マノ・ムーチョ!」では芸術文化行政コース第1期生とNPO法人ペピータの日中一時支援事業「ペピータくらぶ」の利用者が、身体(特に手)を使った新たなコミュニケーションの型を模索し、踊りの掛け合いをする「手の会話」を基にダンスパフォーマンスを展開しました。