学びのこみち

経営学部

FACULTY OF BUSINESS ADMINISTRATION

経営学部 なにが消費者を説得するのか?

なにが消費者を
説得するか?

消費者である私たちは、日常的に様々な商品やサービスを購買しています。しかし、なぜその商品やサービス、あるいはブランドを選択したのか、理由を説明できるでしょうか?購買に関わる意思決定の8割は無意識に行われていると言われています。驚きの数字ですね。ただそれは本人が自己の内部で生じる認知や感情のプロセスに注意を向けていないということです。一方、商品を売る側であるマーケティングの世界ではこのプロセスを深く研究し、自分たちの商品やサービスを購買してもらうための戦略や戦術に活かしています。ショッピングに行ったとき、私たちの内部ではどのようなことが起こっているのでしょうか。アニメーションで見ていきましょう。

MOVIE

動画

ABOUT STUDY

大学での学び

-テキストバージョン-

01

無意識での購買行動

お昼時、あなたはランチを買いにコンビニに行きました。まず目に入ったのは棚の目立つ位置に陳列されたカップ麺。新製品らしく大きなPOPが貼ってあります。すると、あなたの耳に店員の「フライドチキン揚げたて」の声が飛び込んできました。こうばしい香りが店内に漂っています。店内を少し歩くと、パンコーナー。新商品のメロンパンがあります。あなたは数日前にテレビCMで大好きなタレントがこのメロンパンの宣伝をしていたことを思い出しました。それに最近あなたはパン作りに熱中しているので「参考になるかも」と思い、メロンパンを買うことにしました。飲み物はいつも通りのカフェオレ。何も考えずにお決まりのドリンクを手にしようとしましたが、ふと何かが頭をよぎりました。「野菜不足?」「糖分摂り過ぎ?」。天の声にしたがった結果、いつものカフェオレではなく、野菜ジュースを手に取りレジへ向かいます。

お昼時、ランチを買いにコンビニへ

POP付きのカップ麺

フライドチキンのいい香り

新商品のメロンパン

大好きなタレントのメロンパンの宣伝

最近熱中しているパン作り

いつものカフェオレ

野菜不足?糖分摂り過ぎ?

野菜ジュース

02

「消費者」の選択は偶然?

さて、この場合あなたという「消費者」の選択は偶然でしょうか?あるいは、本当に自分の意思による選択でしょうか?人間の知覚プロセスを学ぶことで、その謎が解明されるかもしれません。

まず、私たち人間は五感、すなわち視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚を通して外界からの情報を受け取ります。中でも、視覚から得る情報の割合は約8割にものぼると言われています。企業が商品のパッケージに力を入れるのはこのためです。では、パッケージに情報を詰め込めば詰め込むほど、消費者は説得されるでしょうか?

あなたという「消費者」の選択は偶然?

人間は五感を通して情報を受け取る

視覚から得る情報の割合は約8割

企業は商品パッケージに力を入れる

03

視覚から得る情報

次のパッケージを見て、この商品の購入を検討してみてください。(約5秒間空いて)すべての情報を認識できたでしょうか?おそらく、難しいはずです。なぜなら、人間は外部から取り入れる情報のうち、ごく一部の情報にしか注意を払っていないからです。では、その「ごく一部の情報」に含めてもらい、注意を向けてもらうためにはどうすればよいでしょうか。

情報を詰め込んだパッケージ

一部の情報にしか注意を払わない

04

消費者に注意を向けてもらうためには?

それは、消費者にとって注目しやすい刺激を与えることです。外部から五感を通じて受け取る情報は刺激とも言い替えられます。消費者にとって注目しやすい刺激であることが、その商品やサービスに対する注意を呼び起こします。

この注意には主に2つの要因があります。一つは、刺激の要因。つまり、刺激の大小レベルです。例えば、音が大きければ振り向き、ビビットカラーの方に目が行く、という具合です。

もう一つは、個人の要因です。例えば、冒頭のコンビニであなたがメロンパンを選んだ要因の一つに、「最近パン作りに熱中している」ということが挙げられます。パン作りに熱中しているということは、あなたは日頃からパンに対して好意的な態度を持っている状態です。この状態を専門用語で高関与であると言います。高関与な対象に対しては注意が向きやすくなります。

注目しやすい刺激

刺激の大小レベル

音が大きければ振り向き、ビビットカラーの方に目が行く

高関与な対象に対しては注意が向きやすくなる

05

消費者が高関与である状態を作るには

どうやら関与を高めると消費者は商品を手に取りやすくなりそうです。では、消費者が高関与である状態を作るには、どのような手があるでしょうか。

そのためには、商品を「自分事」として捉えてもらうことが重要です。例えば、その消費者のニーズに対して直接訴える方法があります。健康に対して関与が高く、オーガニック志向の消費者には、原材料に有機小麦を使用していること、天然酵母で発酵させていることなどを説けば、彼らの注意を獲得できるでしょう。

商品を「自分事」として捉えてもらう

オーガニック志向の消費者

ニーズに訴える

06

購買には直前の情報や刺激だけが影響?

では、購買をする直前の情報や刺激だけが、注意や選択に影響を及ぼすのでしょうか。冒頭のコンビニの場面をふり返ってみましょう。あなたがメロンパンの購入を検討しているとき、あなたは「大好きなタレントがCMをやっていた」ことを思い出しました。たとえそれが数日前の事だったとしても、タレントの表情やセリフを思い出せるようです。このように長い間思い出すことのできる情報を「長期記憶」と呼びます。この長期記憶は無限の容量を持っていて、一生覚えていられるものもあります。コンビニの場面ではこの長期記憶が思い出され、大好きなタレントが美味しいと言っていたという説得があなたの購買を後押ししました。

冒頭のコンビニ

大好きなタレントのCM

記憶のイメージ

長い間思い出すことのできる情報「長期記憶」

07

長期記憶と短期記憶

対して、目立つ場所に陳列されていたカップ麺や食欲をそそるフライドチキンの香りはあなたの頭を一瞬かすめただけで消えていきました。このような記憶を短期記憶と呼びます。短期記憶に保持できる情報量はごく限られていて、その保持時間も数十秒程度と短いのが特徴です。したがって、消費者に商品やサービスを覚えてもらい、購買の場面で選択されるためには、長期記憶に残るような広告やPRが必要になります。

カップ麺や食欲をそそるフライドチキンの香り

頭を一瞬かすめるだけの情報「短期記憶」

短期記憶の保持時間は数十秒程度

長期記憶に残るような広告やPRが必要

08

井上淳子教授の講義「消費者行動」

成蹊大学 経営学部総合経営学科の井上淳子教授の講義「消費者行動」では、このような消費者の購買行動や消費者の内部で起こっている心理的なメカニズムに焦点を当てた講義を行っています。井上教授は「消費者行動の研究は人間を知ること」と語ります。

講義風景

09

消費者行動研究への一歩

次に何かを購買する場面が来たら、なぜそれを購買するのか考えてみてください。

普段の購買行動について深く考えた時、あなたはすでに消費者行動研究への一歩を踏み出しています。そして、この動画を見終えたあなたは考えるための手がかりを知っているはずです。

普段の購買行動について深く考える

消費者行動研究への一歩

井上 淳子 教授
井上 淳子 教授

消費の科学から自分が見える

私たちは消費者として、日々、商品やサービスを購買し、使用し、廃棄(あるいは再利用)するという行為を行っています。アニメーションで紹介した「コンビニでランチを買う」場面ひとつとっても、私たちが瞬時に多様な刺激を五感で受け取り、自分の経験や知識と合わせて情報処理し、意思決定していることがわかりますね。「消費者行動」の授業では、私たちが普段あまり意識せずに行っている購買意思決定に焦点を当てて、そのプロセスと中身を深く探っていきます。難しそうですか?そんなことはありません。自分の感覚や行動、心の動きに目を向けるだけで、たくさんの気づきがあります。「あの時、なぜこの商品を衝動買いしちゃったのかな?」「なぜ私はいつもこのブランドに惹かれるのかな?」「なぜみんな長い行列に並んでまであのお店に行こうとするのかな?」消費者行動を学ぶと、こうした疑問に対して、科学的根拠に基づく答えを見つけ出すことができます。それはきっと、あなた自身を深く理解することにもつながりますよ。

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成蹊大学経営学部にはご紹介した学びの他にもさまざまなテーマに取り組み少人数のゼミがあり、教員と学生が近い距離の中で日々の学びに取り組んでいます。