成蹊LIFE vol.8

受験も、その先も見据えた
社会科指導

成蹊LIFE第8回は、「社会科の指導理念と受験指導」について紹介します。成蹊中高では、単に教科書の内容を暗記するのではなく、自分で考えながら身につけることを目的とし、社会科の指導にあたっています。大学受験はもちろん、社会に出てからも役立つ力を養成する、成蹊ならではの教育体制をご紹介します。

成蹊中高の社会科教育の特徴

各科目を幅広く学習。考える力を身につける

成蹊中学校の社会の授業は「地理(1・2年)」「歴史(1 ~ 3年)」「公民(3年)」に分かれ、そこでは、過去と現在の社会の姿や問題のあり方を、ただ「知る」だけでなく、それを「考える」ことを重視しています。授業で得た知識をいかに体系的に整理し、考えるための情報にしていくかということも中学の段階で学びます。

高校では1年生で「歴史総合」「公共」、2年生で「日本史」「地理総合」、3年生で「倫理」を必修科目としています。さらに高2文系で「世界史」、高3文系で「政治・経済」を学びます。受験に必要な科目だけに絞るのではなく、あえて全科目必修に近いカリキュラムを組むことで、社会に出てからも現代社会の問題を総合的に考察する力を身につけることができます。それぞれの科目において、単に暗記するのではなく、自分で考えながら学ぶという学習スタイルを大切にしています。

中3歴史
中1地理
中2歴史
中3修学旅行(京都)
事前学習も行います

歴史総合

高1の全員必修科目。主に日本を含めた20世紀以降の世界の歩みを学びます。その際、必要に応じ19世紀以前、特に近代の歴史に触れつつ学習を進めます。ここ100年間に世界で何が起きたかを学び、それが現代社会にどのような影響を与えているのかを考えます。

日本史

高2の全員必修科目、高3文系の選択科目。高2では明治維新からアジア・太平洋戦争の終戦までを、国際関係にも重きを置き、世界の中での日本の動きを見ていきます。3年生では受験コースと内部進学コースに分かれ、それぞれに合わせて古代史から江戸時代史を学びます。

世界史

高2文系の必修科目、高3文系の選択科目。高2では、高1「歴史総合」での学習を踏まえ、主に近代(18世紀から19世紀)の世界の歩みを学びます。高3では、主に近代以前の歴史を、近現代へのつながりを意識して学び、国際社会で役立つ幅広い教養を身につけます。

公共

高1の全員必修科目。中学校の公民学習を発展させながら、現代社会の課題を多角的・構造的に把握したうえで、平和で民主的な社会を形成していく市民としての思考力を育みます。

政治・経済

高3文系の必修科目。政治・経済の視点から現代の世界と日本の課題を学びつつ、幅広い教養を身につけ、大学での学びにつなげていくことを目的としています。

地理総合

高2の全員必修科目。地域社会の具体的事実を科学として抽象化するなど、社会科学の基礎を学びます。また、社会の仕組みを、自然との関係(資源、環境、災害など)から考え、空間的観点から地域格差や国際関係の在り方を考えます。

倫理

高3の全員必修科目。他の科目より抽象度の高い内容となるため、高校3年に配置しています。哲学・思想的な内容を理解し、表現する力をつけるだけでなく、最終的に答えが一つではない現代の課題を考えることを目的としています。

近現代史を重視した歴史の授業

近現代史を重視した授業を行っているのも、成蹊中高の社会科教育における特徴の一つです。現代の私達に直接関係する近現代をしっかりと学び、歴史的背景をきちんと理解することで、現在の複雑な社会的問題に対する自分なりの考えを持つことを目指します。また、紀元前から順番に覚えるのでなく身近な近現代史から学ぶことで、歴史を過去の単発的な出来事としてではなく、関連性を持ったストーリーとして認識することができます。まずは一人ひとりが歴史の一連の流れをきちんと理解し、そこから派生したさまざまな事象を学ぶことで、より深い理解ができるようになります。

高3日本史
高1世界史
高3日本史
高3倫理

Pick Up

社会科レポート

高校1年時に課されるレポートです。テーマごとに書籍が提示され、自分で調べたことやこれまで学んだことなどを参考にしながら、それぞれのテーマに沿った自分なりの考えを書きます。テーマは、「多様性と平等を考える」「情報化社会を考える」など。優秀作品は冊子にまとめられ、生徒や保護者の方々に見ていただいています。
成蹊の社会教育でレポート学習を重視するのには、二つの理由があります。一つは、自主的な探求態度を身につけてほしいと考えるからです。教室で与えられる内容をただ無難に消化する受身の学習から脱し、生徒一人ひとりが積極的に社会的事象に対する関心を深め、複雑な社会現象を論理的に理解する力を養ってほしいと思っています。もう一つは、将来社会に出たとき、主体的な態度決定とアンガジュ(社会参加)ができる力を育むことを期待するためです。いずれ社会に出て市民として生活するようになると、誰もがいやおうなしに社会的現実に迫られることになります。高校の最初の段階から自分の頭で考える訓練を行うことで、社会を合理的に認識する目が養われ、そうした社会的現実に対する主体的な姿勢を育てることができます。

生徒たちの声

社会科レポートで自分を表現するのに必要なものは、「自己発想力」だと思います。与えられた枠がある中で解答する定期テストとは違います。枠にとらわれずに自己発想力だけに頼ってユニークな発想を導き出し、そこからそれが他者にとっても興味深いものであるためにアイディアを展開し、形にする。そしてその過程を通じてまた新たな発想を導き出していく。社会科レポートはそうした"自発的な自己育成の練習場" のように感じています。(高校3年 女子)

その他の取り組み

成蹊中高では、中学1年生でノートのとり方を重点的に指導しています。単に黒板を書き写すだけではなく、教員の発言の中で重要な部分はメモをとるなど自分なりのまとめ方を確立することで、授業で得た知識を体系立てて整理し、自分の中に蓄積していくことを目的としています。
また授業時間外に自主的に学習をしたいという生徒のために、希望者には穴埋め問題や選択問題、論述問題などの宿題を用意しています。小論文の添削を希望したり、質問をしたりする生徒には個別に対応するなど、普段から受験に対する意識を持てるよう、学習環境を整えています。

日本史担当・下田 桃子先生からのメッセージ

自分をとりまく社会の問題を見つけて解決策を考え、行動する力を

どの時代のどの地域の、どのような社会も完璧なものではありません。けれども誰も、自分の生まれた時代や社会から、まったくの自由でいることはできません。だからこそ、自分が抱える問題、身近な誰かが抱える問題の原因を、個人の責任にしてしまうのではなく、社会のしくみの問題としてとらえて解決策を考えられること、その方法を知っていることは、生きていく上で必要な力であり、強さでもあると思います。
そういう力を身につけるには、自分の生きる社会の成り立ちやしくみ、その前提となる自然環境や、そこで生きる人々が積み重ねてきた、思考の道筋を知る必要があるでしょう。これは自分がどんなところに立って生きているのか、その足場を自覚する作業でもあります。さらにはそれを超えて、世界中の様々な社会や人々について知れば、自分をとりまく社会が、決して当たり前のものでも、不変のものでもないことが実感できるはずです。
こういった学びの経験を通じ、自分の物の見方や現代の社会を、当たり前のものと思わず、様々な角度から見ることのできる目を養ってほしい。そして自分だけではなく、皆がよりよく生きていけるよう、問題点を見つけ、その解決策を考える力をもって生きていってほしい。そのような願いを込めて、私たちは日々の授業を行っています。

社会科担当 下田桃子先生

学校説明会・学校見学を実施しています。

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